「読売」社説、「大連立」を8回も取り上げていた!

自民・民主「大連立」の仕掛け人が、読売新聞・渡辺恒雄氏であったことは、ほぼ明らかになったけれども、そう思ってひるがえって「読売新聞」をくってみると、参院選以後、社説で、「大連立」を実現せよと8回も取り上げていたことが明らかに。

  • 大連立 民主党も「政権責任」を分担せよ(8月16日)
  • 安倍改造内閣 必要な政策の遂行に邁進せよ(8月28日)
  • 臨時国会 民主党の「政権能力」が試される(9月9日)
  • 安倍首相退陣 安定した政治体制を構築せよ 大連立も視野に入れては(9月13日)
  • 党首会談 政策実現へ「大連立」に踏み出せ(11月3日)
  • 小沢代表辞意 それでも大連立を目指すべきだ(11月5日)
  • 小沢氏辞意撤回 民主党の未熟な体質が露呈した(11月8日)
  • 国会会期延長 新テロ法案の確実な成立を期せ(11月10日)

社説は、まず参院選敗北を受けて安倍改造内閣が発足する前後の8月に2回、臨時国会が始まった時期に2回(1回は臨時国会直前、1回は安倍辞意表明直後)、そして11月の福田・小沢会談を受けて、なんと4回も。

「大連立」は、テロ特措法問題のためというのはよく知られていますが、社説を読むと、問題はそれだけでなく、消費税増税も大きなテーマとして取り上げられている。とくに、ドイツのメルケル政権(キリスト教民主同盟・社会同盟と社民党との「大連立」)が消費税(付加価値税)率を16%から19%に引き上げて、法人税の引き下げや年金受給開始年齢の引き上げをやったことを評価している。

[社説]大連立 民主党も「政権責任」を分担せよ
[読売新聞 2007年8月16日]

 お盆明けの政局が、内閣改造・自民党役員人事へ向けて動き出している。安倍首相は、これによって党内の求心力回復を図りたいということだろう。
 だが、首相が求心力の回復に成功しても、参院の与野党逆転状況に変わりはない。法案はすべて民主党の賛成を取り付けるか、参院での否決後、あるいは参院送付の60日後に、衆院で再可決するしかない。その再可決の手法も、そう簡単に使えるものではあるまい。
 予算案は衆院が優先するといっても、予算関連法案が成立しなくては、予算が執行できない。国民生活にも重大な影響が及ぶことになる。
 仮に、与党が次の解散・総選挙以降も衆院での多数を維持し続けられるとしても、3年後の参院選でも過半数を回復するのはきわめて難しい。6年後も難しいだろう。
 となれば、国政は長期にわたり混迷が続くことになりかねない。
 こうしたいわば国政の危機的状況を回避するには、参院の主導権を握る野党第1党の民主党にも「政権責任」を分担してもらうしかないのではないか。つまり「大連立」政権である。
 自民党は、党利を超えて、民主党に政権参加を呼びかけてみてはどうか。
 衆参ねじれ状況は、民主党にとっても、苦しい対応を迫ることになる。
 対決姿勢、政府・与党への揺さぶり戦術だけでは、政権担当能力を疑われることになる。国民生活や国益に配慮して、現実的な妥協をせざるを得ない場合も少なくないだろう。でなければ、国政混乱の責任だけを負わされることにもなりかねない。
 しかも、いま直ちに解散というならともかく、いつまでも現在のような追い風が続くとは考えにくい。1年後、2年後の総選挙に勝てるという保証はない。
 民主党にとっても、政策理念を現実の施策として生かす上で、大連立は検討に値するのではないか。
 現在の日本は、緊急に取り組まなくてはならない重要な課題を、いくつも抱えている。
 例えば年金、医療、介護といった社会保障制度の立て直しだ。少子高齢化の加速に伴い、社会保障費の年々の自然増に対応するだけでも大きな財源が要る。
 他方で、財政再建も喫緊の課題だ。国・地方合わせた長期債務は770兆円にのぼり、今後も増え続ける見通しだ。歳出削減だけで解決できるような状況ではない。消費税率の引き上げが避けられないことは、自民、民主両党とも、実は、よくわかっているはずだ
 外交・安全保障でも、北朝鮮の核の脅威にどう対応するかという国家的な難題に直面している。日米同盟の緊密化、中国との連携強化が不可欠だ。
 これらの課題を巡る自民、民主両党の主張には、いろいろな差異がある。大連立に際しては、そうした差異を解消する方向性を示す大枠での政策協定を結べばいいのではないか。
 他の政党も、その政策協定に賛同できれば、政権に参加すればよい。
 当面するテロ特措法の期限延長問題も、国会駆け引きを超えた政権内部の協議となれば、互いの主張の調整・妥協もしやすくなるのではないか。
 ミサイル防衛(MD)や米軍再編に伴う諸問題も同様だろう。外交・安保については、自民党と民主党の主流の基本的な考え方に、それほど大きな違いがあるようには見えない。
 年金をはじめとする社会保障政策についても、政権内部での率直な意見交換により、従来の意見を超えた新たな政策システムを構築できるかもしれない。
 自民党はこの秋から、税制の抜本改革論議を始めるという。その論議に民主党も加わる形になれば、核心のテーマとなるはずの消費税率引き上げにしても、国民の理解を得やすくなるだろう。
 ドイツには、かつて、社会民主党(SPD)が、長らく政権を担当してきたキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との大連立を経て、社民政権を樹立したという歴史がある。
 大連立により第2党の存在感が薄れることになるか、政権担当能力への信頼感が厚くなるかは、その政党の努力次第だということである。
 05年11月に成立した現在のメルケル政権も、第1党CDU・CSUと、第2党SPDとの大連立政権だ。
 メルケル政権は、日本の消費税に当たる付加価値税の16%から19%への引き上げを実現し、増収分の3分の2を財政再建に、3分の1を雇用保険料の引き下げに充てた。また、所得税の最高税率を42%から45%へと引き上げたが、これはSPDの主張を受け入れたものである。
 これにより、財政再建に一定のメドがつき、08年から法人税率の引き下げを実施することになっている
 大連立内部では、時に両党間の議論が過熱することもあるが、全体としては、国政運営は効率的で安定している。
 秋の臨時国会が自民、民主両党の建前論がぶつかり合うだけの状況になる前に、両党は早急に大連立の可能性を探ってみてはどうか。

[社説]安倍改造内閣 必要な政策の遂行に邁進せよ
[読売新聞 2007年8月28日]

 新体制の下での、安倍政権の再出発である。安倍首相にすれば、視界不良の荒波の中を、改めて航海に出る思いだろう。前途は、多難だ。
 安倍改造内閣の狙いは、明白だ。次期衆院選に向けて、先の参院選での歴史的大敗で大きく揺らいだ政権を立て直し、求心力を回復する。与党が過半数割れした参院で第1党となった民主党との政策の主導権争いに対処する……。その態勢の構築だ。
 自民党の要である幹事長に就任した麻生前外相は、安倍首相と政治理念や基本政策が共通し、参院選大敗後、いち早く首相続投を支持した。自民党内になお安倍首相への不満がくすぶる中、信頼する麻生前外相の幹事長起用は、政府・党一体の態勢を作る狙いだろう。
 今後、民主党との政策調整の責任者となる石原伸晃政調会長は、1998年秋の臨時国会で民主党とも協調して金融危機に対処し、「政策新人類」と言われた。二階俊博総務会長は、かつて小沢民主党代表と長く政治行動を共にし、民主党内にも太いパイプを持つ。
 衆参ねじれという新たな政治構図の下で政策を推進するには、出来る限り、民主党の協力を得る必要がある。自民党執行部の主要人事は、民主党との調整も重視した布陣と言える。
 政権を担当する以上、政治状況がどうあれ、必要な政策は着実に遂行しなければならない。

◆重要な民主党との調整

 改造内閣では、「お友達内閣」「論功行賞内閣」などと揶揄(やゆ)された陣容は、大きく変貌(へんぼう)した。挙党体制作りにも一定の配慮をしつつ、派閥領袖(りょうしゅう)を含め、実績、能力のある人材を起用したことに、政策に取り組む「仕事師内閣」として邁進(まいしん)することを目指す意図は見える。
 内閣の要の官房長官に起用された与謝野馨・元経済財政相は、党内有数の政策通だ。内閣のスポークスマンとしてだけでなく、政府内や政府・与党間の政策調整に中心的な役割を果たすことへの期待がうかがえる。
 外交・安全保障では、北朝鮮の核をはじめ日本の安全保障環境の悪化に対処するために、日米同盟を強化しなければならない。
 国際社会の責任ある一員として、国際平和協力活動に積極的な役割を果たす上で、11月1日で期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長は、秋の臨時国会の焦点ともなる、当面の最重要課題だ。
 いずれも派閥領袖である町村信孝・元外相を外相に、高村正彦・元外相を防衛相に、それぞれ起用したのも、そうした課題の重要性を踏まえたものだろう。

◆強化すべき危機管理

 安倍首相は、「改革や新経済成長戦略は引き続き進めていかねばならない」と言う。甘利明経済産業相や大田弘子経済財政相の留任は、政策継続の意思を示すものだ。経済力が日本の国力の基盤である以上、当然である。
 自民党内には、地域格差や雇用格差など、小泉前首相の構造改革の負の側面が参院選大敗の一因だったとし、その修正を求める声がある。今後、来年度予算編成に向け、地方への予算配分増など、自民党内の圧力が強まる可能性がある。
 格差是正も担当する総務相に増田寛也・前岩手県知事を起用したことに、地方分権などと併せ、地方対策を強化する狙いもうかがえる。次期衆院選に向けた対策という側面もあるのだろう。
 だが、行き過ぎた構造改革の一定の「修正」は必要だとしても、それが「迎合」になってはなるまい。改革の停滞や後退、ましてバラマキになるようなことがあってはならない。
 先の自民党の参院選総括では、前内閣で相次いだ閣僚の事務所費問題や失言に対する安倍首相の対応の甘さを指摘し、今後の内閣に、危機管理能力の強化を求めている。
 安倍改造内閣として、当然、留意すべきことだ。だが、今後の危機管理は、単に個別の閣僚の「管理」にとどまるものではあるまい。厳しい政権運営、政策対応を余儀なくされる状況の下では、政権運営イコール危機管理という意識で臨むことが必要になる。

◆混乱すれば大連立も

 今後、改造内閣が順調に動き出し、安倍首相の自民党内での求心力が回復しても、さらに次期衆院選で与党が過半数を確保して政権を継続しても、展望が開けるわけではない。参院での与党過半数割れ、民主党第1党という構図には、何の変化もないからだ。
 しかも、こうした状況は、6年後の次々期参院選以降、10年近くもの間、続く可能性がある
 この間、自民、民主両党の競合、対立によって、国政の停滞と混乱が続くようなことになれば、日本の国益が大きく損なわれかねない。国民生活にも重大な影響を与える。
 外交・安全保障は無論、国内政策では、財政再建、年金をはじめとする社会保障制度の再構築、財源としての消費税率引き上げを中心とする税制改革など、緊急に取り組むべき課題が山積している。
 自民党内には、こうした課題に対処するために大連立も必要ではないか、とする声もある。国政運営が混乱したりすれば、そうした声が一層、強まることもありうるのではないか。

[社説]臨時国会 民主党の「政権能力」が試される
[読売新聞 2007年9月9日]

 衆参ねじれという新たな政治構図の下で、「歴史的な国会」になるのではないか。
 第168臨時国会が10日、召集される。
 民主党の小沢代表は、臨時国会が「大きな政治的転換点になる可能性がある」と言う。何よりも、民主党の対応が、臨時国会の行方を左右する
 参院は、与党が過半数割れし、民主党が第1党だ。政府提出法案を衆院で可決しても、参院で野党が反対すれば否決される。衆院で3分の2以上の多数で再可決すれば成立するが、容易ではない。
 重要法案の円滑な成立には、与野党協議が不可欠だ。野党が応じなければ、与党は厳しい状況に陥るが、民主党の対応の是非も問われることになるだろう
 野党は参院に法案を提出して可決し、衆院に送ることができる。衆院で与党が否決するとしても、過去の国会にはない状況が生まれる。
 野党主導で、参院で国政調査権を行使することもできる。これまで、自民党が消極的で、国政調査権が有効に使われてきたとは言いがたい。国会の重要な機能が具体的に発揮されれば、国会を活性化させることにもなる。
 法案処理をはじめ、国会運営の主導権は、実質的に民主党が握り、与党が衆参とも多数を確保していた従来の国会とは様変わりの光景になるだろう。
 だからこそ、民主党の責任は重い
 小沢代表は「足して2で割る話し合いはしない」と言明し、対決姿勢を鮮明にしている。臨時国会の最大の焦点であるテロ対策特別措置法の延長は無論、政府が検討している、テロ特措法に代わる新法制定にも反対の姿勢だ。
 国連決議の直接の裏付けがないことを反対理由に挙げているが、説得力を欠く。民主党は、国際平和協力活動への対案を示し、同盟に基づく日米関係のあり方や安全保障政策をどう考えるのかについても、明確に説明すべきだ。
 政局判断を優先して、いたずらに「反対」を唱え、国の存立や国民生活の安定に必要な政策の実現まで阻むのでは、政権担当能力が疑われる。
 政治とカネや年金記録漏れなどの問題の追及も必要だが、それ以上に、新しい政治状況の下で、重要政策の推進に、民主党が責任ある役割を果たすべきだ。
 そのために、与党との政策協議も避けるべきではない。むしろ、与野党協議を含め、安定した新たな政策決定の仕組みを作るくらいの建設的な姿勢で、臨時国会に臨んでもらいたい
 その先には、大連立も視野に入ってくるかもしれない

[社説]安倍首相退陣 安定した政治体制を構築せよ 大連立も視野に入れては
[読売新聞 2007年9月13日]

 極めて異例、異常な突然の安倍首相の退陣表明だ。
 所信表明演説を終え、各党代表質問が始まる直前のことだった。「無責任」と言われても仕方ないタイミングである。
 後継の首相を選出し、改めて所信表明演説をしなければならない。それまでの間、政治空白が生じる。
 こんなことなら、参院選直後に、惨敗の責任を取って辞任すべきだったのではないか、という声が、与党内からでさえ出るのも無理はない。

◆不可解な突然の辞任

 自民党は直ちに14日告示の日程で総裁選実施の準備に入った。政治空白を最小限にとどめるために、早急に新政権を発足させなければならない。
 安倍政権発足後、1年にもならない。基本的には、参院で与野党が逆転し、参院第1党の民主党が主導権を握るという、衆参ねじれの新たな政治構造が生まれたからこその退陣劇だろう。
 安倍首相は、教育基本法改正や国民投票法成立、防衛庁の省昇格などの実績を上げたが、参院選惨敗で、憲法改正など「戦後レジームからの脱却」という安倍路線の後退を余儀なくされた。
 再スタートを期した改造内閣でも農相が辞任し、政治とカネの問題もくすぶるなど、混乱の火種を抱えていた。内閣支持率も低迷し、政権の求心力の回復もままならない。
 これでは、厳しい国会を乗り切り、政策を遂行していくのは、極めて困難だ。そうした判断が、政権の“投げ出し”にも等しい、唐突な退陣表明の背景にあったのだろう。
 それでも、辞任を決意した直接の理由は何だったのか。健康問題もあったというが、何とも分かりにくい。
 安倍首相自身は記者会見で、辞任の理由として、インド洋での海上自衛隊の他国艦船に対する給油活動の継続について、民主党の小沢代表が党首会談に応じなかったことを挙げた。
 「自分が首相でいることが障害となって党首会談が実現しない」以上、「新しい首相の下で局面転換を図るために、辞任を決意した」というのである。
 だが、給油活動の継続をめぐる本格論戦が始まろうとする入り口の段階で、党首会談が実現しないからといって、辞任するというのは説得力に欠ける。

◆果たすべき「国際公約」

 確かに、安倍首相は、先のブッシュ米大統領との会談後、記者会見で、「国際公約」と位置づけた海自の給油活動継続に「職を賭(と)して」取り組み、それが出来なければ「職にしがみつくことはない」と言明していた。
 しかし、小沢代表は、「自民党内の政権交代劇で、我々の意見が変わることはない」と明言している。安倍首相が退陣しても、給油活動継続に対する民主党の反対姿勢が、そう簡単に変わるものではあるまい。
 ただ、小沢代表は、今後、「新首相が話し合いたいと言うなら、いつでも応じる」としている。
 「テロとの戦い」である海自の給油活動継続は、与野党を超えた幅広い合意で決めることが望ましい。小沢代表も、「反対」に固執するのではなく、民主党の立場から、「局面の転換」を図る努力をしてもらいたい。
 仮に、そうした方向に進めば、安倍首相の辞任にも一定の意味があったと言えるかもしれない。
 民主党が給油活動継続にあくまで反対するのなら、テロ対策特別措置法に代わる新法で対処するしかあるまい。
 政局の動向に左右されることなく、政府・与党は、衆院での3分の2以上の賛成による再可決も視野に、新法案の準備を粛々と進めるべきだ。
 だれが新首相になるにせよ、後継政権にとっても、海自の給油活動継続の実現は、最大の課題だ。安倍首相が退陣したからといって「国際公約」でなくなるわけではない。
 首相が交代しても、政府・与党にとって、衆参ねじれという厳しい政治の現実には何の変化もない。

◆衆参ねじれの克服を

 次期衆院選に向け、小沢代表は、先の参院選で民主党の公約に掲げた政策の実現に全力を挙げると言う。それには、法案化し、与党が圧倒的多数を占める衆院でも可決しなければ成立しない。
 安倍後継政権としては、給油活動継続は無論、年金などの社会保障制度の改革、財政再建、消費税率引き上げ問題を含む税制改革など、国の存立や国民生活の基本にかかわる重要政策に取り組まなければならない。
 そのためには、政策の内容には当面、違いがあるとしても、与野党の利害を超えて衆参ねじれの状況を克服し、必要な政策の実現のために、大連立も視野に入れるべきではないか

[社説]党首会談 政策実現へ「大連立」に踏み出せ
[読売新聞 2007年11月3日]

 衆参ねじれの下で、行き詰まった政治状況の打開へ、積極的に推進すべきである。
 自民党総裁である福田首相が民主党の小沢代表との党首会談で、連立政権協議を提起した。いわゆる大連立である。実現すれば、日本政治に画期的な局面を開く。
 だが、小沢代表は、民主党役員会での拒否の決定を福田首相に電話で伝えた。役員会の大勢が、「先の参院選の民意に反し、国民の理解を得られない」としたからだという。
 これは疑問だ。
 会期末を目前にしながら、法案は一本も成立していない。国益や国民生活の安定のための重要政策の推進という、政治の責任がまったく果たされていない現状こそが、国民の利益に反することをしっかりと認識すべきである。
 衆院解散・総選挙で、与党が勝利し、政権を維持しても、参院で野党が過半数を占める状況は変わらない。しかも、長ければ10年近く続くと見られる。
 国際社会も日本の経済・社会も大きな転換期にあって、国内の不安定な政治情勢のために、それに対応した政策の推進ができないとなれば、日本の将来は極めて危うい。
 こうした事態を避けるためには、重要な政策を推進するための安定したシステムを構築しなければならない。そうした判断に立って、福田首相が「大連立」を提起したのは、極めて適切な対応だ。
 小沢代表も、政治の現状への強い危機感があるからこそ、党首会談に応じたはずだ。連立協議の拒否で通るのか、ぜひ、再考してもらいたい。
 民主党内には、参院選の余勢を駆って、政府・与党を追い込み、衆院解散で政権交代を目指すという主張が根強い。だが、いたずらに“対立”に走った結果、今日の政治の不毛を生んでいるということを直視すべきだ。
 大連立を選択肢から排除することは、責任政党の取る姿勢ではない
 各小選挙区で自民党と民主党が競合していることを理由に、大連立を困難視する声もある。だが、これはおかしい。大連立にあっては、大政党同士が、国益や国民生活の問題の解決にどう具体的に貢献し、成果を上げるかを競うことが大事だ。その結果を総選挙で問えばよい。
 国益の観点から、当面、最重視すべきは、インド洋で海上阻止行動に当たる多国籍軍艦船に対する海上自衛隊艦船による給油活動の早期再開だ。
 それに関連して、自衛隊の国際平和活動のための恒久法の制定問題が、大連立への重要なかぎとなる。

[社説]小沢代表辞意 それでも大連立を目指すべきだ
[読売新聞 2007年11月5日]

 行き詰まった現在の政治状況を冷静に見つめれば、大連立はやはり、なお実現を目指すべき重要な課題である
 民主党の小沢代表が、辞任の意向を表明した。福田首相との党首会談で、福田首相が求めたとされる大連立の問題をめぐる政治的混乱にけじめをつけるため、という。
 小沢代表自身がけじめをつけても、衆参ねじれ国会の下で、国益や国民生活にかかわる重要政策が何一つ前進も実現もしない、という状況には変わりない。

◆一致すべき安保政策

 福田首相は、衆参ねじれ下で、重要政策を実現するため「新たな政治体制を作りたい」として会談に臨んだ。具体的には「大連立」である。
 小沢代表も、同様の問題意識に立って党首会談に臨んだことは、辞意を表明した記者会見からも明らかだ。
 小沢代表は、党首会談での核心が、インド洋での海上自衛隊艦船による多国籍軍艦船への給油活動継続問題をはじめ、安全保障政策だったとしている。
 国の存立と国民の生命、財産を守るための安全保障政策は、政府・与党と野党第1党が共通の基盤に立って、推進されるべきものだ。福田首相と小沢代表が、連立に向けて、「テロとの戦い」への国際社会の共同行動での日本の役割と責任を最重要テーマとしたのは、当然のことである。
 小沢代表によれば、国際平和活動に関する自衛隊の派遣について、福田首相は、「国連安全保障理事会もしくは国連総会の決議によって設立、あるいは認められた国連活動への参加に限る」とする見解を示したという。
 小沢代表は、海自の給油活動は、国連決議の明確な裏付けがなく、憲法違反として、反対してきた。福田首相の見解に対し、「国際平和協力の原則」を確立する根本的な“政策転換”と受け止め、これだけでも「政策協議開始に値する」と判断した、としている。
 小沢代表の考え方は、従来の政府の憲法解釈とは相いれない。一方で、政府の憲法解釈は、今日の国際平和活動の実態にそぐわなくなっている。国際平和活動のあり方で、与党と民主党が一致すれば、大連立の重要な基盤となる。大いに論議すべき問題である

◆民主党の政権戦略とは

 小沢代表は、衆参ねじれの現状に何の手も打たなければ、次期衆院選で勝利し、政権交代を実現するという民主党の戦略も危うくなる恐れがあったと言う。
 何よりも、民主党には、先の参院選で大勝したとはいえ、なお政権担当能力に疑問符がつく。寄せ集めゆえの基本政策での党内一致の難しさや、党運営などでの不協和音である。
 政権担当能力を示すには、参院選で公約した基礎部分の全額を税でまかなうとした年金制度をはじめとする社会保障制度改革などの政策の実現が必要だ。だが、ねじれ下では、衆院で多数を占める与党の協力なしには、実現しない。
 「民主党が政権の一翼を担い、参院選で約束した政策を実行し、政権運営の実績を示すことが、民主党政権実現への近道」という小沢代表の考えは、こうした認識に基づいた政権戦略であろう。
 小沢代表が辞任の意思を固めたのは、こうした考えが、党首会談後の党役員会で認められず、「不信任に等しい」と判断したからだ、と言う。
 不毛な政治状況が続き、海自の給油活動の早期再開もできないとなれば、国際社会の信頼を失い、日米同盟を含め、日本の安全保障に重大な影響が生じる恐れがある。年金・社会保障制度改革も進まなければ、国民生活が不安定になり将来不安を増大させる。
 国民経済や安全保障への悪影響があれば、その責任は民主党にあるということになる
 小沢代表を除き、民主党執行部は「参院での民意に反する」「福田政権を助けるだけだ」などとする大連立反対論が大勢だ。次期衆院選の戦術上、政府・与党を追い込むため、“対決”を貫くべきだということなのだろう。
 国や国民の利益のために必要な政策の実現を図るという、最も重要な政治の責任を忘れた姿勢だ。
 大連立には、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)が2005年11月に発足したドイツのメルケル政権の例がある。

◆見るべきドイツの成果

 消費税に当たる付加価値税率の16%から19%への引き上げや、所得税の最高税率の42%から45%への引き上げを断行した。付加価値税率引き上げ分は財政再建や雇用保険料引き下げに充てた。年金受給開始年齢は、10年以降、65歳から67歳に引き上げられる
 ドイツは、02年以降、欧州連合(EU)条約が課す財政赤字の「対国内総生産(GDP)比3%以下」を4年連続守れなかった。だが、06年度には、財政赤字は、対GDP比2・1%にまで下がった。安定的な経済成長や失業率の低下など、経済状況も改善された。
 衆参ねじれの下で2大政党が対立している状況を打開し、税財政、外交安全保障、社会保障制度などの重要課題を解決するには、やはり大連立が望ましい。
 民主党執行部は、小沢代表の辞職願を受理できないとしているが、そうならば、大連立を真剣に考慮すべきである。

[社説]小沢氏辞意撤回 民主党の未熟な体質が露呈した
[読売新聞 2007年11月8日]

 民主党の小沢代表が辞意を表明して、わずか3日後に一転して撤回、続投である。
 何とも分かりにくいドタバタ劇を通じて浮かび上がったのは、小沢代表の政治指導者としての言動に対する疑念と民主党の未熟な体質だろう。
 小沢代表は4日夕、辞意を表明した記者会見で、与党との大連立を目指した政策協議が党役員会で認められなかったことを「不信任に等しい」とし、「けじめをつける必要がある」と言明した。
 進退にかかわる発言は重い。指導者ならなおさらだ。それがいとも簡単に覆された。どこが「けじめ」だったのか。民主党の支持者の多くも、疑問に思ったのではないか。
 より問題なのは、7日の続投表明の記者会見で「連立の問題は考えず、総選挙を頑張る」とし、次期衆院選での政権獲得へ、与党と厳しく対峙(たいじ)する従来の姿勢に、あっさり戻ってしまったことだ。
 小沢代表は、辞意表明会見で、民主党が政権の一翼を担って党の政策を実行し、政権運営の実績を示すことが、民主党政権実現の近道だ、としていた。
 基本的な政権戦略がくるくる変わり、十分な説明もない。これで、党のトップとして、信頼を得られるだろうか。
 民主党にとって深刻なのは、党の脆弱(ぜいじゃく)な体質が露呈したことだ。
 小沢代表は「力量不足」とか、「国民から、『本当に政権担当能力があるのか』と疑問を提起されている」などと、民主党の現状を酷評していた。そこまで言われながら、党の「総意」という演出までして、懸命に「慰留」に走った。
 小沢代表にすがりついているようでは、小沢代表以外に、党を率いる有能で力のある人材がいないことをわざわざ喧伝(けんでん)しているようなものだ。
 背景には、「壊し屋」とも評されてきた小沢代表が手勢を引き連れて離党するのではないか、という不安があった。党分裂を避けるために、小沢代表を続投させる必要があるという判断である。
 民主党は、いくつものグループの寄り合い所帯だ。小沢代表辞任で後継選出の代表選となれば、グループ間の対立や合従連衡で、党内に亀裂が走る恐れもあった。これも、小沢代表慰留の伏線となったようだ。
 今回の問題で、民主党は大きくイメージダウンした。党内には、代表の党批判などへの反発もくすぶり、小沢代表の求心力の低下は避けられそうにない。
 民主党は、「雨降って地固まる」どころか、さらに難題を背負い込んでしまったと映る。

[社説]国会会期延長 新テロ法案の確実な成立を期せ
[読売新聞 2007年11月10日]

 国会の現状は、「立法の府」の本来の姿にはほど遠い。
 当初の会期内で成立した法律は、事実上の最終日になるはずだった9日に、衆参両院で可決した改正被災者生活再建支援法のわずか1本に過ぎない。
 臨時国会の会期が、12月15日まで35日間延長された。
 7月の参院選の結果、衆参両院のねじれが生じ、国会の構図が一変した。加えて、国会の開会直後には、安倍首相が突然辞任し、後継選出の自民党総裁選に時日を費やした。民主党の小沢代表の辞任騒動もあった。
 そうした事情があったにせよ、これほどまでの国会の停滞は、許されるものではない。延長国会では、与野党ともに、国益や国民生活の安定に欠かせない法案の成立に全力を注ぐべきだ。
 先の福田首相(自民党総裁)と民主党の小沢代表との党首会談を機に、政策遂行のために両党の一定の歩み寄りが必要、との認識が生まれ、生活関連法案では与野党協議も進み始めた。この機運を生かしていくことが大事だ。
 最大の課題は、新テロ対策特別措置法案の早期成立だ
 インド洋で国際テロの海上阻止活動にあたる多国籍軍艦船に対する、海上自衛隊艦船の給油活動は、11月1日、テロ対策特別措置法の失効で中断された。
 「テロとの戦い」からの離脱が長期化することは、国際社会における日本の信頼を損ない、外交力をそぐことになる。給油活動の早期再開のため、法案は会期内に確実に成立させることが必要だ。
 法案は来週前半、衆院で可決され、参院に送付される見込みだ。参院で法案の生殺与奪の権を握るのは参院第1党の民主党だ。民主党の責任は極めて重い
 小沢代表は、福田首相との党首会談で「大連立」を目ざしながら、一転、「連立は考えない」と対決路線に回帰した。新テロ法案も「足して二で割る手法は通じない」として反対を貫くという。
 民主党は、給油活動継続に代わる支援活動の「考え方」をまとめているが、とても対案と言えるものではない。早急に現実的かつ国際的評価にも堪えうる対案をまとめ、法案化するべきだ。
 参院で法案審議が尽くされれば、いたずらに審議を引き延ばすことなく、粛々と採決するのは当然だ。
 参院で否決された法案は、衆院で3分の2以上の賛成多数によって再可決すれば、法律になる。衆参で異なる意思が示された時、これを決するために憲法が定めているルールに従えばよい。政府・与党がためらう理由は何もない。

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