OECD調査 大騒ぎをする前に

OECDの調査で、日本の学力低下が明らかに…と報道され、文科省は、ばたばたと授業時間の増加を前倒し実施すると言っています。しかし、だから授業時間を増やす、などと大騒ぎを始める前に、どういう問題が出され、回答するときに子どもたちには何がネックになっているのか、冷静な分析が必要ではないでしょうか。

日本の高1、理数も不振 OECD調査(中日新聞)
日本、数学応用力が10位 読解力は15位に(読売新聞)
日本、全分野で順位が後退 OECD学習到達度調査 低い科学への関心(MSN産経ニュース)
「子供が考える時間を」「授業方法の改善を」 OECDテストで求められる対策(MSN産経ニュース)

たとえば、「ゆとり教育が学力低下につながった」という議論。勉強すべき内容を恣意的に削るのはダメだけれども、詰め込めば成績が上がるのかどうかは別問題。数学的応用力や科学的応用力が低くなったという問題を、「理数離れ」と結びつける論評も多いけれど、本当にそうなのかどうか。ひょっとしたら、問題が何を尋ねているのか分からなかったのかも知れません。そうなると、国語力の問題です。

「ゆとり教育」の見直しというけれど、問題は授業時間が多いか少ないかではなく、「ゆとり」と称して、本来系統だって教わるべき理科の内容をデタラメに切り刻んでしまったことにあります。もう一度、教科で教えるべき内容は何なのか、真に教育的な議論を望みます。

日本の高1、理数も不振 OECD調査
[中日新聞 2007年12月5日 朝刊]

◆数学的応用6→10位、科学的応用2→6位

 経済協力開発機構(OECD)は4日、世界の57カ国・地域の15歳(日本では高校1年生に相当)約40万人を対象に昨年実施した学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。数学的応用力は6位から10位に、科学的応用力は2位から6位に転落。前回の調査では読解力の低下が課題とされたが、今回は科学的、数学的の応用力も「1位グループ」から離脱した。
 調査は2000年から3年ごとに実施され、今回が3回目。OECD平均を500点とすると、数学的応用力は523点。前回に比べ11点下がり、参加国では2番目に大きい下げ幅となっている。1位の台湾とは26点の開きがある。科学的応用力は前回より17点低い531点で、フィンランドを32点下回る。いずれも回を追うごとに平均得点が下がっている。
 数学的応用力では、高得点の生徒の割合が低下し、得点上位5%に位置する生徒の得点が前回に比べ23点下がるなど、得点上位層が落ち込んだ。OECDが「生産的活動に従事していける」とする習熟度に満たない生徒の割合は依然10%を超えており、フィンランドの倍となっている。
 前回下落が際だった読解力では、平均得点は498点で前回と同じだが、参加国増加で順位は14位から15位に。
 科学的応用力では、意識調査も合わせて実施されたが、30歳時に科学に関連した職に就いていることを期待すると答えた生徒の割合は8%にとどまり、OECD平均の25%を大きく下回った。

日本、数学応用力が10位 読解力は15位に
[2007年12月5日 読売新聞]

 経済協力開発機構(OECD)は4日、加盟国を中心とする57の国・地域の15歳男女計約40万人を対象にした2006年国際学習到達度調査(略称PISA)の結果を世界同時発表した。

「ゆとり世代」の学力 理数系トップ級転落

 3回目の今回、日本は、すでに2位から6位に転落したことが明らかになっている「科学的応用力」に加え、「数学的応用力」が6位から10位へ、「読解力」も14位から15位へと全分野で順位を下げた。今回の対象は、詰め込み教育からの脱却を狙った「ゆとり教育」で育った世代で、日本が最も得意としてきた理数系で世界のトップレベルから転落したことは、今年度末に改定予定の次期学習指導要領に影響を与えそうだ。
 学習到達度調査は、教科を横断した学力をみるため「国語」「数学」「理科」といった従来の枠組みではなく、「読解力」「数学的応用力」「科学的応用力」の三つに分かれているのが特徴。00年から3年ごとに実施され、今回は「科学的応用力」に重点を置いた調査となった。
 日本での調査は昨年6?7月に行われ、小学6年から現在の学習指導要領(02年度実施)で学んでいる「ゆとり世代」の高校1年生約6000人(全国185校)が臨んだ。
 今回の結果で深刻なのは、前回までトップグループだった「数学的応用力」と「科学的応用力」が大きく落ち込んだ点。
 「数学的応用力」は、前回と共通出題の48問中40問で正答率が下回り、得点も前回の534点から523点に下がった。台湾が1位、香港が3位、韓国が4位とアジアの国や地域がトップグループをほぼ独占する中、日本は、1位だった前々回と比べて34点も下げた。
 先月29日に順位が公表された「科学的応用力」も前回、前々回ともに2位だったことと合わせ、日本が得意としてきた理数系の低迷が浮き彫りになった。
 同時に今回初めて実施された科学に関する意識調査でも、「科学について学ぶことに興味がある」との質問に、「そう思う」と答えた日本の生徒は50%で57の国・地域中52位、「理科の勉強は役立つ」との回答も42%、56位で、科学への関心や意欲の低さが、順位低下につながった可能性が高い。
 一方、「読解力」でも加盟国平均を500点に換算すると、日本は498点。1位の韓国とは58点差となるなど、韓国、フィンランドなどのトップグループに大きく引き離された。
 文部科学省は前回調査で、「読解力」が8位から14位になったことを受け、「我が国の学力は世界トップレベルではない」との認識を示し、「ゆとり教育」からの転換を目指す次期学習指導要領で、思考力・表現力など言語力の育成や、理数の授業時間増を盛り込む予定にしている。今回の結果について、文科省教育水準向上プロジェクトチームでは「まだ取り組み半ばだ」としている。

日本、全分野で順位が後退 OECD学習到達度調査 低い科学への関心
[MSN産経ニュース 2007.12.4 18:23]

 経済協力開発機構(OECD)が昨年、57カ国・地域の15歳を対象に実施した「生徒の学習到達度調査」(PISA)で、日本の高校1年生は前回2003年調査(41カ国・地域)に比べ、読解力が14位から15位、数学的リテラシー(活用力)が6位から10位と後退したことが、4日分かった。科学的活用力も2位から6位になったことが既に判明しており、実施3分野すべてで順位が低下し、トップレベルの分野はなくなった。前回に続く高校生の学力低下傾向に、渡海紀三朗文部科学相は学習内容・時間を大幅に削減した現行の学習指導要領の影響を認めた。
 科学への興味、関心がOECD平均に比べて低いことも判明し、「理数離れ」の傾向も鮮明になった。
 日本からは全国で抽出した約6000人が参加。PISAの学力テストはOECD加盟国平均が原則的に500点になるように調整している。
 数学は523点で平均よりは高いものの、11点落ち込み、トップとの差は16点から26点に拡大した。読解力は前回と同じ498点で平均レベル。下げ止まったものの、1位との差は45点から58点に広がった。
 科学は531点で上位グループだが、前回より17点低下。首位フィンランドとの差は1点未満から32点に広がった。
 数学は、生徒の得点を7段階に分けてみた場合、最上位層の「レベル6」の割合は8.2%から4.8%に急減した。成績下位層の得点を前回と比べると、全体では若干上昇し、底上げ傾向がみられたが、数学は上位層の得点が約22点下がった。
 学習内容・時間を大幅に削減した「ゆとり教育」が“落ちこぼれ救済”に寄与した半面、「上位層を伸ばしていない」(文科省)結果が浮き彫りになった形だ。
 無解答率が高いのも日本の特色で、読解力は平均13.5%(OECD平均9.9%)、数学11.9%(同11.5%)、科学7.8%(同7.0%)。最も高い、数学の人口ピラミッドに関する問題は49.4%(同39.3%)など特に記述問題に無解答が多かった。
 国・地域の首位は、数学的活用力が初参加の台湾(549点)、読解力が韓国(556点)、科学的活用力がフィンランド(563点)。
 科学への興味、関心のアンケート調査では、日本はほとんどが最低レベルだった。「科学に関するテレビを見る」8%(同21%)、「科学に関する雑誌や新聞の記事を読む」8%(同20%)、「科学を話題にしているインターネットを見る」5%(同13%)で、いずれも最下位となるなど、日本の高校生の社会への無関心ぶりが表れた。

 ■OECD生徒の学習到達度調査 義務教育段階の学習内容を日常生活に活用する力を「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」に分けて3年ごとに調査。00年に始まった。今回は加盟30カ国と非加盟27カ国・地域の15歳生徒約15万人が対象。日本では昨年6?7月、無作為抽出された高1生約6000人が約2時間のペーパーテストを受けた。重点分野は毎回変わり、00年は読解力、03年は数学、今回は科学。13種類の問題から1種類を受け、正答した設問の難易度から他の問題の正答率を予測、合計点を算出する。

「子供が考える時間を」「授業方法の改善を」 OECDテストで求められる対策
[MSN産経ニュース 2007.12.4 21:45]

 経済協力開発機構(OECD)が4日に結果を公表した生徒の国際学習到達度調査(PISA)で、日本は再び順位を下げた。渡海紀三朗文部科学相も「ゆとり教育」の失敗を挙げた。学習への意欲、関心とも最低レベルで現行学習指導要領で重視されている「生きる力」も育っていないことが浮き彫りに。調査を実施したOECDのアンヘル・グリア事務総長は、日本は応用や活用に必要な能力を育てるよう示唆する。いずれにしても早急な対策が求められている。

■授業時間回復を

 なぜ、日本の学力は下げ止まらないのか。
 渡海文科相は授業時間、学習内容削減を進めた現行の学習指導要領に課題があったと言及しているが、東京理科大の沢田利夫教授(日本数学教育学会名誉会長)も「調査のたびに落ちていくのは、ゆとり教育で授業時間が減った影響であることが明らかだ。期間が長引くほどさらに低下するだろう」と、指摘する。
 現行の指導要領の年間授業時間は小学校6年生で945時間、中学3年生で980時間。最も多かった時期は小6(昭和36?54年度)で1085時間、中3(47?55年度)は1155時間あった。算数は当時週6時間だったが、現在は約4時間、数学も4時間から3時間に減っている。
 日本より授業時間が少ないフィンランドが前回に続き、最高位を獲得しているとはいえ、現状では授業時間の回復しか打つ手がないのが現状だ。

■方法、内容も大切

 理科教育に詳しい東大の兵藤俊夫教授は「授業時間不足で応用も学んでいなかった。活用力を上げるには、教員が社会や生活上の疑問を提示するなど授業方法を改善しないといけない」とみる。
 また、前々回調査(00年)の高1は、小1から理科を学んでいたが、前回の高1から小学1、2年は生活科になったことを指摘。「科学的な思考を習得するには理科を小1から学ぶべきだ」としている。
 平成23年度から施行される指導要領では、中学の選択科目が事実上廃止されるほか、数学で2次方程式の解の公式が復活する。小学校では台形の面積の公式が5年に復活、確率の一部が中学から6年へ移るなど、学習内容が増える。
 早稲田大の中島博名誉教授は、「大切なのは子供がじっくり答えを導き出す時間的な余裕をつくってあげることだ」として、内容の増加を疑問視する。

■生きる力伸びず

 同時に行われたアンケートで、生徒の科学への意欲や関心、興味は参加国中最低レベルで、前回および現行指導要領で大きなテーマだった「生きる力」の具体的指標が高まっていないことが明らかになった。
 今回の調査で、日本は記述や論述の問題で白紙回答が他国と比較しても多く、答えを導き出した過程を自らの言葉で説明できない生徒が多かった。
 これまでの「丸暗記」型では「生きる力」は得られず、4日に都内で記者会見したグリア事務総長も「単に知識の記憶だけなら、多くの国の労働市場から消えつつある種類の仕事にしか適さない人材育成となっている」と苦言を呈した。

たとえば、科学への関心。学校の先生自身が、科学にどれだけ関心を持っているのか調べてみたらいいと思います。先生が、本気で勉強してないと、生徒は絶対に勉強好きにはなりませんからね。

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