日経が基礎年金全額消費税を提唱

本日の日経新聞の1面に「基礎年金、全額消費税で 本社研究会報告」の見出し。日経は、いよいよ社として消費税増税論に踏み込んでゆくようだ。

もちろん、メディア各社がそれぞれ社論をかかげること自体は頭から否定されるものではない。しかし、それによって反対論を取り上げなかったりすることになれば、ジャーナリズム失格になることは間違いない。

前にも指摘したことだ、税金だけでなく、税金+年金保険料の総額で負担の問題を考えるべきだというのは、実は、昨年から財界が打ち出していたもの。今回の日経案がそれにそったものであることは言うまでもない。

基礎年金、全額消費税で・日経研究会報告(NIKKEI NET)

日経案の核心は、基礎年金部分の財源を全額消費税に置き換え、保険料を廃止することにある。給付水準は現状維持だが、消費税は5%程度引き上げることになる。つまり、国民年金保険料をゼロにするかわりに、消費税を5%から10%にあげる、ということだ。ただし、5%という数字は、現在の基礎年金のうち保険料負担分12兆円を消費税1%2.5兆円で単純に割っただけで、将来にわたって5%引き上げですむという話ではない。「高齢化と長寿化による受給者増で将来は5%から、さらに上げざるを得ないとみられる」。

消費税5%増を認めたとしても、40年間加入し続けてようやく基礎年金として月6万6000円もらえるだけ。現在20歳未満の人は、60歳まで40年間日本に居住し続ければ、満額もらえることになるが、海外生活が長いと、もらえる額は減っていく。現在すでに年金を受け取っている人は、まったく何も変わらないし、移行期間中は現行制度と新制度と、それぞれの加入期間に応じて両制度から支給を受けることになっていて、現在、年金加入期間が足りずにわずかな年金しかもらえない人が救済される訳ではない。

自営業者の人などは、現在毎月支払っている国民年金保険料(月1万4100円)はゼロになるが、消費税が5%上がるのだから、大雑把に言えば、月の支出が28万2000円(1万4100円÷5%)を超える人は差し引き負担増になる。これは支出額なので、所得や収入との比較は難しいが、2004年の全国消費実態調査(2人以上全世帯)では第IV分位(下から30%?40%)のなかのどこかに相当する。

サラリーマンの場合は、基礎年金部分の保険料の半額を企業が負担しているので、単純計算すれば、月の支出が14万1000円以上の人は負担増になる。ほとんどすべてのサラリーマンが負担増になるといってよい。

日経自身が認めているように、基礎年金部分の保険料を廃止して全額消費税に置き換えることになると、これまで半分は企業が支払っていた厚生年金の基礎年金部分の保険料を企業は支払わなくてよいことになる。企業は、消費税を負担しない(消費税は、理論上は、最終消費者にすべて転嫁される)ので、企業負担がまるまる減ることになる。これが約3.7兆円ある。日経も、「このままでは『消費税を増税する一方で企業を優遇している』という批判が避けられない」としている。ではどうするか。この3.7兆円が賃上げに回されれば、ある意味では、消費税増税による負担増を相殺することになるが、日経も「すべての経営者が〔賃上げなどの形で〕還元に応じるかどうかは疑問が残る」というほどで、実際には企業がちゃっかり懐に収めてしまう可能性は大きい。

そこで日経は、パート労働者の厚生年金加入要件を拡大するなどして、この企業の負担減分を非正規労働者の待遇改善に回すことを提案している。しかし、それが実現される保証はどこにもない。

しかし、このような問題では終わらない。日経案の最大の問題は、現在の財政構造、税金の使い方をそのまま所与の前提にして、大企業や一部の超高額所得者への優遇税制、特権的減税にメスを入れようとしないことだ。そこに手をつけずに、年金保険料と消費税とのあいだだけで計算を合わせようとすれば、日経案のように、自営業者の一部を除いて、大部分が負担増になるような案しか出てこないのは、ある意味当たり前である。

しかも、いったん全額消費税方式に切り替えてしまうと、「想定以上に少子化が進んだり経済成長が低迷したりすれば、税率をさらに上げて給付を維持するか、給付を抑えて負担増を避けるかの選択」しかなくなる。ある意味、究極の選択である。また、消費税率の引き上げによる逆進性を緩和するために、食料品などの非課税を導入したとすれば、その分、基本税率は5%からさらに高くなるだけで、最悪、「貧乏人のために、なぜ俺たちが高い消費税を払わないといけないか!」などという国民分断、対立におちいるだけであろう。

また、年金について全額消費税方式に切り替えると、今度は、医療保険や介護保険についても、同じように消費税への切り替え論議が起こってくることは必至。そうなれば、各種いろいろ取り混ぜ、消費税率はどこまで高くなればすむのか、見当もつかなくなる。

全額税方式にすれば未納問題がなくなるのは当然だが、そのために消費税という前に、もっと現在の税金の取り方、使われ方を問題にすべきではないだろうか。

基礎年金、全額消費税で・日経研究会報告
[NIKKEI NET 2008/01/07]

 日本経済新聞社は、年金制度改革に関する報告をまとめた。少子高齢化の加速や保険料未納問題の深刻化で制度維持が難しくなりつつある状態を立て直すために、基礎年金の財政運営を社会保険方式から税方式に移行させるよう求めている。給付総額19兆4000億円(2009年度)の財源すべてを消費税で賄うことにし、保険料を充てている12兆円分を消費税に置き換える。このため税率を5%前後引き上げる。保険料は廃止するので全体の負担は変わらない。制度の持続性を確実にするとともに無年金者をなくすのが狙いだ。

 現行の公的年金は制度への国民各層の不信感の高まりに、社会保険庁による加入記録のずさんな管理が重なって保険料の未納問題が深刻化し、制度維持が危ぶまれている。福田康夫首相は年金改革を中心に社会保障制度を議論する国民会議を近く新設する。

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