温暖化防止でも軍事を聖域化

昨日の東京新聞夕刊の記事。総務省からCO2の排出量削減を求められた気象庁が、海洋のCO2濃度などを観測する海洋気象観測船の航路を一部廃止していたことが明らかに。

海がどれぐらいCO2を吸収しているか、また水温の変化によってそれがどれぐらい変化するか、というのは、地球温暖化の行く末を予測する上で重要なデータ。それを調査・観測している観測船の観測航路を廃止して、CO2削減の目標にあわせる、というのは、ほんとうに本末転倒です。

しかも東京新聞のナイスなのは、総務省がそうやって地球温暖化防止に必要な観測を切り縮めさせながら、その一方で、自衛隊をCO2の削減対象から除外していると鋭く批判しているところ。この記事に“◎あっぱれ!!”を上げましょう。(^_^;)

環境観測船に『活動削減』 CO2削減 本末転倒(東京新聞)
【解説】温暖化防止、軍事を聖域化 観測船燃料削減 説得力欠ける総務省(東京新聞)

環境観測船に『活動削減』 CO2削減 本末転倒
[東京新聞 2008年1月7日 夕刊]

 温暖化の研究に貢献している海洋気象観測船の運航に関して、二酸化炭素(CO2)排出削減の対象とするよう総務省から求められ、船を保有する気象庁が観測航路を一部廃止して燃料使用を減らす計画を立てていたことが分かった。地球環境監視という本来業務に支障が出てくる懸念があり、疑問の声が出ている。
 気象庁などによると、発端は、総務省北海道管区行政評価局が昨年3月までに道内の国の出先機関を対象に実施した温暖化対策の調査。函館海洋気象台のCO2削減計画に観測船「高風丸」の燃料(重油)が入っていない点が問題視された。
 調査に対し、同気象台は「観測中のエンジン停止など削減努力は既にしている」と説明。観測の重要性も訴え理解を求めたが、同行政評価局は昨年4月、観測船の燃料も削減対象とするよう求める「所見」を気象台に文書で通知し、改善措置について回答を求めた。
 これを受け、気象庁側は「(高風丸や凌風丸など)計5隻の運航を本庁で一元管理しており、各船単位の削減計画策定は困難。本庁で5隻一括して取り組む」と回答した。5隻のCO2排出量を2001年度の約9500トンから、2010?12年度の約9200トンへ3.1%減らす計画を昨年10月に決定。海上の観測定線(決まった経度や緯度に沿って観測を繰り返す航路)を一部廃止し、船の速度も若干落とした。
 同庁全体のCO2排出量は、2001年度で約3万7000トン。観測船5隻は、このうち約4分の1に当たる。計画では、庁舎の省エネも合わせ、全体で10?12年度に01年度比7.3%の削減を目指すとしている。
 函館海洋気象台は「(観測船で)重要な仕事をしていると十分説明した上で、こういう判断をされた。真摯(しんし)に受け止めて、従わざるを得ない」としている。
 観測船を統括する気象庁地球環境業務課は「CO2削減が言われる昨今の情勢で、観測船の燃料だけ聖域にすることは難しいと判断した。廃止する観測定線は、中層フロート(自動浮沈式の水温・塩分観測装置)で補いたい」としている。

気象庁なぜ応じる

 <吉野正敏・筑波大名誉教授(気象学)の話> 地球環境監視のために海上観測は不可欠。気象庁は「削減対象にできない」と頑張るべきだった。総務省の地方の出先に一隻のことを言われて、先回りして「5隻で減らします」と、自分で自分の首を絞めている。観測船の燃料でCO2排出を300トン減らしても、国家全体で見ればごくわずかで、何が大切かの価値判断の問題だ。“貧者の一灯”という精神的な効果はあろうが、パーセント(削減率)だけを考えて(削減の)総量を考えないところに非科学性がある。

強制的指導でない

 <総務省北海道管区行政評価局の話> 所見に強制力はなく、指導する権限もない。対等の関係の中でやっている。必ず削減対象にしなさいということでなく、余地があれば対象にしたらどうですかと言ったら、気象庁側が「やります」と答えた。(温暖化監視など観測船の)業務の特色はあるかもしれないが、共通項として(CO2削減に)取り組むことが大事だ。

 <海洋気象観測船> 気象庁が凌風丸(本庁)、高風丸(函館)、啓風丸(神戸)、清風丸(舞鶴)、長風丸(長崎)の5隻を保有。気候に大きな影響を与える海洋の長期変動や汚染を監視するため、北西太平洋と日本近海の水温や塩分、CO2やメタンなどの温室効果ガス、オゾン層を破壊するフロン、重金属、油分、海流などを測る。海中と大気中のCO2濃度観測によって、海と大気の間の大規模なCO2吸収・放出のメカニズムを解明し、温暖化の予測に役立つと期待されている。

【解説】温暖化防止、軍事を聖域化 観測船燃料削減 説得力欠ける総務省
[東京新聞 2008年1月7日 夕刊]

 温暖化を監視する気象庁の海洋気象観測船が、二酸化炭素(CO2)排出削減のために燃料使用を削られることになるというのは、本末転倒のような話であり、削減を求めた総務省と従った気象庁の姿勢が問われる。
 総務省北海道管区行政評価局の温暖化対策調査は、道内にある国の出先24機関を対象とし、札幌防衛施設局(当時)は含まれていたが、自衛隊の基地や駐屯地などは一切除外されていた。
 多数の軍用機や艦船、車両、火器によるCO2排出は、5隻の気象観測船の比ではない。総務省側は「自衛隊は行政機関ではない」と除外の理由を説明するが、温暖化の監視さえ聖域と認めない一方で軍事を聖域とするのは、説得力に欠ける。
 第1管区海上保安本部に対しては、CO2削減計画自体がなかったため計画作成を求めたが、所属船艇・航空機の燃料には言及しなかった。これも気象庁への注文とバランスが取れていない。
 拘束力のない総務省側の「所見」を受け、気象庁が削減に応じたことも疑問だ。もともと観測船は経済速度で運航しており、自衛隊や海上保安庁の船より燃費が良いといわれる。さらに燃料使用を削るには、観測を切り詰める羽目になる。
 今回廃止する観測定線は、東経149度線沿いの南北約3300キロ。自動浮沈式の装置で代替するというが、観測精度が船より悪い上、CO2濃度も測れなくなる。次期削減計画を作る時、さらに別の観測定線が削られる懸念もある。
 官民挙げてのCO2削減は急務だ。しかし、そのために地球環境監視まで犠牲にしてよいのか、冷静な判断が必要だ。(宇佐見昭彦)

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