電子投票 新たな利権となる前に

毎日新聞が、電子投票制度について特集。

やっぱり一番の問題は、不正があったかなかったか、誰にも分かるようなやり方で確認する方法がないこと。10自治体が導入したにもかかわらず、すでに4自治体が撤退したという事実は非常に重い。

クローズアップ2008:どうなる電子投票 法改正案、継続審議に(毎日新聞)

クローズアップ2008:どうなる電子投票 法改正案、継続審議に
[毎日新聞 2008年1月15日 東京朝刊]

◇安全面に不安根強く

 国政選挙にも電子投票を導入できる議員立法の公選法特例法改正案は今国会での成立が見送られ、継続審議となった。セキュリティー面の不安が指摘されているためだ。欧米やインドで導入され、利便性の向上といったメリットが強調されてきたが、トラブルが相次いでいるほか、集計結果を操作できると分析する専門家もおり、「民主主義の根幹を揺さぶりかねない」との懸念も根強い。【日下部聡】

◇不正証拠残らず/長所はスピード

 「そんな答弁でどうやって(法案に)賛成したらいいんですか」。先月12日の参院政治倫理・選挙特別委員会で民主党の中村哲治議員は提案者の一人、原田義昭衆院議員(自民)の答弁に声を荒らげた。電子投票推進を基本政策に掲げる民主党は与党と法案成立に合意しており、すんなり審議が進むと思われていたが、この日を境に流れが変わった。
 電子投票には▽開票時間の大幅短縮▽疑問票や無効票が出ない▽人件費削減▽自書が難しい障害者も代筆なしに投票可能??などのメリットがある。しかし、中村議員は(1)集計の操作など不正が行われた時の検証手段がない(2)国政選挙では機器のトラブルで記録が消えた時の影響が全国に及ぶ(3)特殊な機器を使うため、限られた業者に利権が生じる可能性がある??の3点を指摘した。
 これに対し、与党側は「しっかりと管理する」などと抽象的な答えに終始した。民主党はその後、投票記録が紙に印字される電子投票機導入を義務付けることを求めたが、与党側は「技術的問題が新たに生じる」などと反論し合意の見通しが立たなくなった。根底には投票用紙という物的証拠が残らないことへの不安がある。
 日本への電子投票導入のきっかけを作ったのは、電子投票機を製造・販売する中小企業の連合体「電子投票普及協業組合」(EVS、東京都)の宮川隆義理事長だ。進まない国会審議に「議員は技術を分かっていない。数字の改ざんなど不可能」と話す。
 宮川氏は選挙コンサルティングなどを手がける会社「政治広報センター」を経営し、政界に幅広い人脈を持つ。93年に発足した超党派の電子投票推進議員連盟「電子式投開票システム研究会」の結成に奔走し、IT(情報技術)化推進を掲げた森喜朗首相にも導入を働きかけた。その後、01年に自治体の首長・議員選に限った電子投票法が成立した。
 国政選挙への導入は各自治体での集計トラブルなどで与党内に慎重論もあり先送りされてきた。しかし、電子投票推進議連幹部の中川秀直氏が自民党幹事長に就任したことなどから機運が高まり、与党が、昨年6月に改正案を国会に提出した。

◇4自治体が撤退――10自治体導入、誤操作や機器不良

 日本では電子投票を10自治体が導入したが、トラブルなどが相次ぎ、4自治体が撤退した。03年の岐阜県可児市議選では機器のシステムが一時停止し、業者の誤操作で投票総数が投票者数を上回るなど大混乱した。有権者の訴訟で最高裁が選挙無効を認め、再選挙(非電子投票)に追い込まれた。同年の神奈川県海老名市長・市議選でも一時止まり、投票総数が投票者数を上回った。いずれも機器の過熱や接触不良が原因だった。また、財政負担などを理由に福井県鯖江市などは電子投票条例を廃止した。
 一方、総務省は電子投票機器について、技術基準を定め完成後に民間機関に検査を委託し、安全性の確保に努めているが、信頼性を疑問視する研究もある。旧防衛庁や米国企業で情報セキュリティー研究に携わった米カーネギーメロン大日本校の武田圭史教授らが昨年10月に発表した。
 武田教授は日本で使われた3メーカーと今後採用される可能性のある米国の1メーカーの機種を作動させ、運用状況を各選挙管理委員会に聞き取るなどして安全性を総合的に分析した。その結果、投票機本体のセキュリティーレベルは比較的高かったが、集計プログラムの対策が甘く、選挙管理関係者が開票結果を操作しようと思えば容易にできることが分かったという。
 武田教授は「『性善説』に基づくシステムでリスクが十分理解されていない。現段階での電子投票の全面導入は民主主義の重要な過程をブラックボックスに委ねることになる。慎重に議論すべきだ」と話す。一方、EVSの宮川理事長は「電子投票だったベネズエラの国民投票で(強権的な)チャベス大統領派が負けたことが公平性を証明している」と反論する。

◇米で揺れた「信頼」――印字装置義務付けた州も

 「タッチパネル式投票機の長所は、その不透明性に打ち消されてしまっている」。米国のカーター元大統領とベーカー元国務長官が共同議長を務めた超党派の「連邦選挙改革委員会」は、05年の報告書で結論づけた。
 タッチパネル式投票機の普及率が4割近い米国では近年、電子投票の信頼性が大きく揺らいでいる。
 04年の大統領選では住民の8割以上が民主党員の地域で共和党のブッシュ大統領が勝ったり、投票者数が638人だったのにブッシュ氏が4258票を獲得した例などがあった。大手投票機メーカー2社と共和党の関係が深く、投票機が同党に有利に設計されたのではないかとの疑惑も報道された。
 今月8日の大統領選のニューハンプシャー州での予備選では電子投票集計がヒラリー・クリントン上院議員に有利に行われているのではないかとして、同じ民主党候補の一人、クシニッチ下院議員が再集計を申請した。
 連邦選挙改革委員会は、投票者が自分の投票を確認でき、再集計も手作業でできるよう、投票ごとにレシートのような記録紙が打ち出されるタッチパネル式投票機の導入などを提言。連邦議会には同内容の法案が数本提出されている。すでに印字装置を義務付けた州もある。

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■ことば◇電子投票

 日本では画面上で候補者名を選ぶタッチパネル式やボタン式が電子投票法で認められている。02年の岡山県新見市長・市議選で初めて実施された。投票機は1台約40万円。国政選挙への導入は今回の法案では、電子投票条例を持つ自治体に限られる。

投票を別途印字して確認するというふうにしてみたところで、電子的な開票結果と印字されたものの開票結果が合わなかったときに、どっちが間違っているのか確かめようがない以上、何の気休めにもなりません。

投票者数が638人だったのにブッシュ氏が4258票を獲得した例があったというのも、致命的ですね。こんなアホな装置に、選挙を委ねるなんていうことは絶対にあり得ません。

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