NHK記者らがインサイダー取引

NHK記者ら3人が、放送前のニュース原稿を読んで、そのニュースが報道される前に株を買い、高値で売り抜けるインサイダー取引をしていたことが明らかに。

インサイダー取引:NHK記者ら3人を聴取 1人は否認(毎日新聞)
インサイダー取引:対策が不十分…氷山の一角の可能性(毎日新聞)
NHK職員3人インサイダー取引か…放送前に情報取得(読売新聞)

インサイダー取引の対象となるのは、会社関係者だけでなく、会社関係者から情報を直接つたえられた者(第1次情報受領者)も含まれる。したがって、取材した記者が、取材した情報に基づいて株取引をすれば、明確にインサイダー取引になる。しかし、今回の場合、株取引をしたのは直接取材した記者ではなく、NHK社内のサーバーから報道前のニュース原稿を読んだ記者たち。だから、第1次情報受領者ではないからインサイダー取引にはならない、とする論者もいる。

しかし、それが認められれば、新聞記者のみなさんはインサイダー取引し放題になる。インサイダー取引にかんしては、わざわざ、内部情報とは「一般紙、通信社、放送局など2以上のマスコミに対して情報を公開後12時間以上経過」する前の情報であるとされている。それだけマスコミによる報道を厳密に扱っているのに、それを取材したり編集したりする人間が、公表前に取り引きしてもインサイダー取引にならないとしたら、この12時間ルールは無意味である。その意味でも、今回のケースはインサイダー取引として厳正に処分されなければならない。

もちろん、服部氏が指摘するように、それ以前にメディアへの信頼を裏切る行為であることは明らか。インサイダー取引に該当するしないにかかわらず、NHKは厳正な処分をおこなうことが求められる。

インサイダー取引:NHK記者ら3人を聴取 1人は否認
[毎日新聞 2008年1月17日 20時34分(最終更新時間 1月17日 22時55分)]

 NHKの報道局記者ら3人が、放送前のニュース原稿を読み、その内容を元に株を買い付け、高値で売り抜けていたとして、証券取引等監視委員会は証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で事情聴取するなど調査に乗り出した。NHKは17日に記者会見し、2人が認め、1人が否定していることを明らかにした。3人の勤務地は異なり、連絡を取った形跡もなく、証券監視委は他に同様の不正行為がなかったか調べを進めるとみられる。
 報道機関の記者がインサイダー取引容疑をかけられるのは初めて。3人は▽報道局テレビニュース部制作記者(33)▽岐阜放送局放送部記者(30)▽水戸放送局放送部ディレクター(40)のいずれも男性。
 不正利用されたニュースは、牛丼チェーン「すき家」を展開する外食大手「ゼンショー」が大手回転ずしチェーン「カッパ・クリエイト」の株式を取得し傘下に収めるとの内容。別の記者が取材し、昨年3月8日午後3時にテレビで特ダネとして放送された。
 NHKによると、ニュース原稿は同日午後2時38分、完成原稿として登録された。3人のうち事実を認めている2人は、放送までの22分の間に専用端末で原稿を読み、カッパ社株約1000?3000株を百数十万?約500万円で購入した疑いを持たれている。8日に1720円だった株価は翌9日に1774円に上昇。3人は9日に売却し10万?40万円の利益を得たという。
 完成原稿は約1万1000人の職員のうち、記者や編集担当者ら約5000人が閲覧を認められ、割り当てられた職員番号とパスワードを端末に打ち込んで閲覧できる。
 証券監視委は別のインサイダー取引を調査する過程で今回の不自然な取引を把握したとみられる。NHKの橋本元一会長は「報道目的の情報を自己の利益に悪用したことは許されない。視聴者に深くおわびしたい」と陳謝した。【堀文彦】

 ▽インサイダー取引 投資判断に影響を及ぼすような未公開の重要事実を知ったうえで株式売買する行為。市場の公正性・健全性が損なわれるため規制されている。罰則は従来、懲役3年以下または罰金300万円以下だったが、06年7月、各5年以下、500万円以下に厳罰化された。今回は昨年3月の行為のため、起訴されれば厳罰化された証券取引法の条文が適用される。昨年9月、同法などを一本化した金融商品取引法が施行された。

 ▽服部孝章・立教大教授(メディア法)の話 一般市民や投資家より早く情報を知りうる特権を悪用したもので、視聴者に対する裏切りであり、報道にかかわる者として倫理観が欠如している。ただ、テレビ局や新聞社にとって、どの部署の記者でもいち早く経済情報を知ることができる編集システムは、番組や記事作成のうえで外せないだろう。組織として再発防止の決め手はないと思われ、最終的には個人の倫理観にゆだねるしかない。

 ▽放送倫理・番組向上機構の放送倫理検証委員会委員で作家の吉岡忍さんの話 不祥事が続き、新体制が発足しようとしてNHKが注目を集めている時期に、疑いをかけられるとは何をか言わんやだ。報道畑にいる人間なのだから、そのことを感じていないはずがない。再生途上にあるNHKの局員には一生懸命やっている人の方が多く、当事者だけの問題ではなく全体の士気にかかわる。報道やメディアの仕事に携わろうとした初心を思い出してほしい。

インサイダー取引:対策が不十分…氷山の一角の可能性
[毎日新聞 2008年1月17日 20時55分(最終更新時間 1月17日 23時19分)]

 高い倫理観が求められる報道機関のシステムが、悪用されていた。17日発覚したNHK報道局記者ら3人によるインサイダー取引疑惑。記者会見した橋本元一会長らNHK幹部は、対策が不十分だったとしたうえで、“氷山の一角”である可能性を認めざるを得なかった。【丸山進】 
 東京・渋谷の放送センターで午後3時から始まった会見には、橋本会長、畠山博治理事(コンプライアンス担当)、石村英二郎理事(報道担当)が出席。橋本会長が「おわびしなければならないことがあります」と切り出し、深々と頭を下げた。「報道目的で得た情報を、自己の利益のため悪用した許されざる行為」。身内の不祥事を断罪する声はかすれがちで、顔が苦渋にゆがんだ。
 NHKの説明では、放送センターなどに証券取引等監視委員会の調査が入ったのは16日午前。それまで、インサイダー疑惑に気付かなかったという。同日夜になって、内部調査委員会を設置、関係者の事情聴取に乗り出した。
 対応が後手に回ったのは、インサイダー取引を文書で規制するなどの対策をとっていなかったことも影響した。職員の倫理規定である「放送ガイドライン」には、「取材で得た情報を、個人の利益のために利用することは許されない」とあるだけだという。石村理事は「経済部では4、5年前から、本人や家族が株取引をしないように徹底していた」と釈明したが、畠山理事は「コンプライアンス担当として、対応がとれていなかった」と神妙な表情。
 インサイダー情報入手に使われた報道端末にアクセスできるのは約5000人。今回の問題にかかわった3人の職場が地方放送局などに分かれているため、報道陣から「他にも手を染めていた職員がいるのでは?」と質問が飛んだ。畠山理事は一瞬言葉を詰まらせた後、「そういう疑念が持たれるのは自然」と、絞り出すように答えるのがやっと。石村理事は「こういうこと(インサイダー取引)は、必死で取材している記者たちのモチベーションを下げてしまう」と怒気まじりに語った。
 NHKによると、今回の問題に対する視聴者からの抗議や批判の電話が、17日午後5時から同9時すぎの間に約150件寄せられたという。

NHK職員3人インサイダー取引か…放送前に情報取得
(2008年1月17日23時40分 読売新聞)

 NHKの男性職員3人が、放送前に入手した外食産業の資本・業務提携のニュースの内容をもとに株を売買していた疑いが強まり、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反(インサイダー取引)の疑いで調査していることが17日、わかった。
 3人は別々に株を購入しており、監視委はほかにも不正取引にかかわった職員がいないかどうか調べを進めている。NHKは理事・弁護士らによる調査委員会を設置した。
 監視委とNHKによると、不正取引の疑いが持たれているのは、報道局テレビニュース部制作記者(33)と岐阜放送局放送部記者(30)、水戸放送局放送部ディレクター(40)の3人。監視委は16日に3人から任意で事情を聞いた。
 NHKは2007年3月8日午後3時からのニュースで、牛丼チェーン「すき家」などを展開する「ゼンショー」(東京都港区、東証1部上場)が、回転ずしチェーン「カッパ・クリエイト」(さいたま市、同)をグループ会社化するといち早く報道した。
 ニュースは経済部の出稿で、3人は取材などにかかわっていなかったが、放送までのわずか22分間に局内の端末などで原稿の内容を把握。
 2人は自宅に戻り、残る1人は携帯電話を使って、それぞれインターネットでカッパ・クリエイト株1000株?3000株程度の買い注文を出していた。購入価格は百数十万円?数百万円で、株価が上昇した翌日に売り抜けて10万円?40万円程度の利益を得た疑いが持たれている。
 3人はインターネット取引を利用しており、2人は自宅に戻って、残る1人は携帯電話で株を購入していた。3人には1?5年の株取引の経験があった。
 監視委の調べやNHKの内部調査に、2人は不正を認めているが、1人は放送内容を知って株を売買したことを否定している。
 NHKでは、パスワードを与えられた5000人程度が放送前のニュースを閲覧できる。インサイダー取引や株取引そのものを規制する内部規定を設けていなかった。
 NHKは17日、記者会見を開き、橋本元一会長が「高い倫理観が求められる報道に携わる者が、報道目的の情報を自己の利益のために悪用したことは許されない行為」と謝罪。関係した職員の懲戒処分と職員の株取引の規制を検討していることを明らかにした。
 報道機関のインサイダー取引では、日本経済新聞社の元広告局社員が株式分割などの法定公告掲載を事前に知り、株売買をしたとして、2007年1月に旧証券取引法違反で有罪が確定している。
 NHKは放送法に基づく特殊法人。NHK経営委員会(12人)が経営方針など重要事項を決定し、会長も任命する。職員数は現在、約1万1000人。
 昨年12月には次期会長人事をめぐり、経営委員会が紛糾した末、外部のアサヒビールの福地茂雄相談役(73)が今月25日付で新会長に就任することが決定した。6000億円を超える収入の大部分は受信料でまかなわれており、今回の問題で首脳陣の管理責任が問われるのは必至だ。

読売新聞の報道によれば、2人は自宅に帰って、1人は携帯電話で株取引をしたという。それは、社内のパソコンで株取引をすれば、インサイダー取引の証拠となるアクセス記録が残ることを分かっていたからであることは明白。ニュースの報道が午後3時からなのだから、真っ昼間にわざわざ自宅に帰るのはまったく不自然。

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  1. 不条理日記 - trackback on 2008/01/19 at 15:05:42

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