マクドナルド “店長は管理職にあらず”

マクドナルドの店長さんが、管理職としての実態がないとして日本マクドナルドを訴えていた裁判。東京地裁が、「店長には十分な権限や待遇がなく、管理職にはあたらない」として、残業代750万円を支払うとの判決を下しました。

管理職かどうかは実態がともなわなければならない。名目だけ管理職にして残業代の支払いをまぬかれようなどという、せこい考えは、このさいきっぱりやめることです。

“店長は管理職にあたらず”(NHKニュース)
管理職 名ばかり…過酷な1人店長(読売新聞)

“店長は管理職にあたらず”
[NHKニュース 1月28日 12時31分]

 ハンバーガーチェーン最大手、日本マクドナルドの店長は、管理職かどうかが争われた裁判で、東京地方裁判所は「店長には十分な権限や待遇はなく、管理職にはあたらない」として、原告の店長に残業代など750万円余りを支払うよう、会社側に命じる判決を言い渡しました。
 この裁判は、日本マクドナルドの現役の店長の高野廣志さん(46)が「マクドナルドの店長は管理職とは名ばかりだ」として、会社に対して2年分の残業代などの支払いを求めていたものです。これに対して、日本マクドナルドは、全国におよそ1700人いる店長は全員が管理職にあたると主張してきました。
 28日の判決で、東京地方裁判所の齋藤巌裁判官は「マクドナルドの店長は、マニュアルに基づいて店舗を運営する立場にとどまり、経営上の重要な権限があるとは言えない。また、法定労働時間を超える長時間労働を余儀なくされ、年収の待遇も十分とは言い難い」として、マクドナルドの店長は法律が定めた管理職にはあたらないと判断しました。そのうえで、日本マクドナルドに対して、原告の高野さんに2年分の未払いの残業代など750万円余りを支払うよう命じました。判決では「店長は店舗の運営に重要な責務を負っている」としたものの、「経営者と一体的な立場で企業全体の経営方針の決定に関与する立場でなければ管理職とはいえない」という判断を示しています。マクドナルドの店長は、全国でおよそ1700人います。外食産業では、ほかにも店長を管理職としているケースが多く、管理職制度の見直しを迫られる企業も出るなど、影響が広がることが予想されています。
 原告の高野廣志さんは、判決のあと、厚生労働省で会見を開き「残業代欲しさで裁判をやっていると言われたこともあったが、そうではない。同僚の店長の多くが、管理職だとして膨大なサービス残業を強いられている現状がある」と訴えました。さらに会社側に対して「外食産業のリーディングカンパニーとして判決をしんしに受け止め、店長の処遇をいい方向に考え直してほしい」と呼びかけました。また、弁護団の棗一郎弁護士は「判決は外食業界だけでなく、チェーン形式で店舗を展開するほかの業界に対しても大きな影響を与えるのではないか」と述べました。
 一方、日本マクドナルドは「主張が認められず残念です。当社の主張は正しいと認識しており、控訴する方向で考えます」とコメントしています。

管理職 名ばかり…過酷な1人店長
[2008年1月28日 読売新聞]

残業137時間 休日ゼロの月も

 「名ばかりの管理職にされ、過酷な仕事を強いられてきた。訴えが認められて、うれしい」。日本マクドナルドの直営店長、高野広志さん(46)が、未払い残業代の支払いを求めて起こした訴訟で、東京地裁は28日、高野さんの訴えを認めた。
 1700人に及ぶ直営店長の中で、たった1人で立ち上がった高野さん。勝訴判決にほっとした様子を見せる一方、「多くの店長仲間が同じようにつらい立場にある。会社は実態に見合った処遇を考えてほしい」と話した。
 判決文が読み上げられる間、高野さんは硬い表情で裁判官をみつめていたが、読み上げが終わって弁護士と握手を交わすと、笑顔を浮かべた。法廷の外に集まった支援者に「やっといい判決が出た。同じような境遇にいる人たちがまだ多いので、人間らしい生活ができるようみんなで声を上げてもらいたい」と声を詰まらせながら呼びかけた。
 高野さんは1999年に店長に昇格後、埼玉県内の直営店を転々と異動。特に多忙を極めたのは、東松山市内の高坂駅前店に移った後、正社員の部下がゼロの「1人店長」になった2004年7月からだった。頼りにしていたアルバイト店員の1人が他店に移った同年12月には、午前6時過ぎに店に入り、自らも調理・接客を担当。売上金管理などの店長業務もこなし、仮眠を取りながらも、午前0時ごろまで働いた。
 この月の残業時間は137時間に上り、休日はゼロ。05年2月、現在勤務する熊谷市内の店に異動したが、アルバイトが過労で入院するなど労働環境は厳しく、高野さん自身が人手不足を穴埋めせざるを得ない時間帯も多かったという。同社では、店長の上に店舗運営について指示する「コンサルタント」、さらにそれを統括する「マネジャー」がいて、人件費削減などを常に求められた。
 手にしびれが走るようになり、医師から脳こうそくの可能性を指摘された高野さんは命の危険も感じるようになった。しかし、当時同社には労働組合がなく、高野さんは05年5月、個人で入れる労働組合「東京管理職ユニオン」に加入し、同年12月、提訴に踏み切った。

「ただ働き」見直す時期

 この日の判決は、管理職という職名にとらわれず、職務の内容や権限、待遇などに照らして、実態として従業員を管理監督する者かどうかを判断した。どのような基準を満たせば管理職と言えるかという点について、法律上、明確な基準はないが、これまで積み重ねられてきた判例に沿った司法判断だといえる。
 そもそも労働基準法が、管理職に残業代を払わなくても良いとしているのは、管理職は労働時間のルールに縛られることなく、一定の権限と処遇のもとで成果を上げるために、柔軟に働くことが認められているからだ。しかし、実際には、仕事内容や権限が一般社員とほとんど変わらないのに、名目だけ管理職とされ、残業代を支給されないケースも多い。
 紳士服大手の「コナカ」では、元店長が労働審判を通じて未払い残業代の支払いを求め、会社側は元店長に解決金の支払いを決めた。現在は店長を管理職として扱うこともやめている。また、眼鏡チェーン大手の「メガネスーパー」では、管理職とされている店長たちが各地で労働組合を結成し、残業代支払いなど待遇改善の要求を始めている。
 各企業は、この判決を機に、改めて管理職の位置づけを再確認し、都合の良い「ただ働き」をさせていないかどうか見直すべきだろう。(木下敦子)

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