当直士官は漁船団を把握していた

イージス艦衝突事故。事故当時、操船の責任者であった当直士官が漁船団に気づいていたことが判明。いよいよ、衝突回避のために何もしなかった自衛艦に事故の責任があることが明瞭に。

また、防衛省の調査で12分前に漁船の赤色灯を確認したとされる乗組員が、海上保安庁の事情聴取にたいして「はっきり覚えていない」と証言していたことも判明。それなら、12分前にという証言は何だったのか? 「はっきり覚えていない」という証言を、防衛省が特定の筋書きに合わせて歪めたのか。それとも、当初の証言を海保庁にたいしては翻そうとしているのか、なかなか深刻な問題かも知れない。

イージス艦 当直責任者も船団把握、回避指示せず(朝日新聞)
見張り役 はっきり覚えてない(NHKニュース)
漁船団突入は常識外 海自内部からも「あたご」批判(中日新聞)

この記事で、当直士官にたいしては事情聴取が行われていることが判明したが、海上保安庁が艦長の取り調べをしているのかどうか、いまだにはっきりしない。

イージス艦 当直責任者も船団把握、回避指示せず
[asahi.com 2008年02月25日03時00分]

 海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」と漁船清徳丸の衝突事故で、あたごの艦橋にいた当直士官らは当直態勢が切り替わる以前から付近を航行する漁船団の存在を把握していたことが、第3管区海上保安本部の調べでわかった。当直士官らは見張り員やレーダー員の報告で漁船団に気づいたという。
 当直時に艦長に代わって責任を負う当直士官が、衝突の危険性に気づく機会がありながら、衝突1分前まで回避措置を指示しなかったことになり、指揮官の過失責任が問えるかが今後の捜査の焦点になる。

当時の「あたご」の指揮系統(朝日新聞2008年2月25日付)

 3管の調べでは、あたご艦内では衝突12分前の19日午前3時55分ごろ、艦橋や戦闘指揮所(CIC)などの当直が交代した。当直態勢時の艦橋には、当直士官、操舵(そうだ)員、レーダー員を含む8人が、艦橋左右には見張り員各1人がいた。
 当直にあたった乗組員を3管が順次聴取したところ、交代前後の当直士官が見張り員やレーダー員からの情報や引き継ぎで、付近にいる船団の存在を認識していたことが分かった。
 しかし、交代後の見張り員は「あたごの後ろを通り過ぎると思った」「緊急性を感じなかった」という趣旨の説明をしており、当直士官も操舵員に回避を指示することなく、衝突1分前まで自動操舵により10ノット(時速約18キロ)で航行を続けていた。
 自衛艦乗員服務規則(通達)は、当直士官は艦長の命を受けて当直員を指揮。緊急の事態に即応できるよう備えなければならない、と定めている。
 3管は、あたごには衝突を回避する機会が何度かあったにもかかわらず、多くの船が行き交う海域で自動操舵で航行するなど衝突の危険性を考慮しなかった判断にミスがあったとの見方を強めている。

    ◇

 清徳丸に乗り組んでいて行方不明になっている千葉県勝浦市の吉清(きちせい)治夫さん(58)、長男哲大(てつひろ)さん(23)の、3管や海自などによる捜索活動は24日も行われた。また、強風で一時中断していた海洋調査船「かいよう」による海底の捜索も再開した。

見張り役 はっきり覚えてない
[NHKニュース 2月25日 4時55分]

 海上自衛隊のイージス艦と漁船が衝突し漁船の親子2人が行方不明になっている事故で、イージス艦の見張り役の隊員は、海上保安本部に対し「漁船の動きははっきり覚えていない」と話していることがわかりました。海上保安本部では、見張り役の記憶はあいまいで不確かな点が多いとみて、確認作業を進めています。
 この事故で、千葉県勝浦市の漁船「清徳丸」に乗っていた吉清治夫さん(58)と哲大さん(23)親子の行方は依然としてわかっていません。防衛省の調査では、イージス艦「あたご」の見張り役の隊員は、衝突の12分前に「清徳丸」とみられる赤色のライトを確認したあと、事故の1分前にはぼんやりと見えていた緑色の明かりが動きだし、最後に赤色のライトが見えて「清徳丸」と衝突したとされてきました。ところが、この見張り役の隊員は、第3管区海上保安本部の調べに対して「複数いた船のうちどの船が清徳丸なのかや、清徳丸がどういう動きをしたのか、はっきり覚えていない」と話していることが新たにわかりました。
 海上保安本部は、防衛省が明らかにした見張り役の記憶はあいまいで不確かな点が多いとみて、さらに詳しく事情を聴くとともに、近くにいた仲間の漁船のGPSに記録された航跡などを分析して、どの船がどのような動きをしたのか確認作業を進めています。

漁船団突入は常識外 海自内部からも「あたご」批判
2008年2月25日 朝刊

 「漁船団を発見したら大きく迂回(うかい)するのが通常だ」。海上自衛隊のイージス艦「あたご」がマグロはえ縄漁船「清徳丸」に衝突した事故で、あたごが自動操舵(そうだ)を続けて漁船団に突入したことに対し、海自内部からも「初歩的ミス」との批判が上がっている。レーダーが漁船団を捕捉し、見張りが漁船の赤灯に気付くなど、危険を回避するチャンスは複数あった。第3管区海上保安本部(横浜市)は、あたごがなぜ衝突の1分前まで自動操舵を続けたのか、艦内の情報伝達や見張りの状況を詳しく調べている。
 「船団の中に入って周囲で漁船が動いていたら、危なくてとても動けない。今回の場合、船団の中に入らないで大きく迂回し、船団の外側に進路を取って避けるか、両舷停止でやり過ごすのがとるべき方法だったと思う」
 海自の現役幹部は、本紙の取材に対し、自動操舵を続けたあたごの判断が“常識外”だったと指摘した。両舷停止とは艦船の両方のスクリューを止め、完全に停止してしまうことだ。
 海上衝突予防法では、2隻が互いの航路を横切る際、相手を右に見る船が回避行動をとる義務がある。しかし、船舶衝突回避システム専門の今津隼馬・東京海洋大教授は「それはあくまでも1隻同士の話。大型船が漁船団に入ってしまえば小型船によけてもらうほか手だてはない」と説明し、「大型船舶は事前に危険を察知し、漁船団に入らないように航行するしかない」と指摘する。
 あたごが自動操舵から手動に切り替えたのは、衝突のわずか1分前。見張り員が清徳丸の僚船のものとみられる緑灯を発見した後だ。
 衝突の30分以上前には、当直交代前のレーダー員が漁船団の存在に気付いていた可能性があり、さらに、衝突12分前には見張り員が漁船の赤灯を確認するなど、回避行動をとるタイミングは何回もあった。前出の海自幹部は「あたごは船団の存在を十分に認識しないまま、その中を通過しようとしたように見える」と話す。
 3管本部は、業務上過失往来危険の疑いで、艦長に代わり操船の責任があった当直士官らから事情聴取を続けている。

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