兵庫県の近現代史をふり返ってみた

『兵庫県の百年』(山川出版社)

唐突だけれども、幕末から戦後までの兵庫県の歴史について、本を読んでみた。いろいろ知っていたこともあるけれども、まとまった形で勉強するのは初めて。

戦前でいえば、明治4年の播但一揆や賀川豊彦米騒動と川崎造船の大争議(1921年)あたりは知っていたが、自由民権の動きや東播地域を中心とした日本農民組合の活動などは初めて知った。金融恐慌の引き金になった鈴木商店の本拠地は神戸である。

神戸有馬鉄道(現在の神戸電鉄)有馬線の建設には、約1300人の朝鮮人労働者が動員された。彼らの賃金は、日当1円80銭だが、飯代75銭を飯場に引かれ、その他親方連中への物入りを差し引くと、手取りは1円を切り、1カ月(稼働日数22?23日)の収入は精々20円だったらしい。普通選挙の実施とともに、兵庫県でも無産政党から当選者が出るが、最初の総選挙のとき、神戸市内や尼崎で、日本共産党のビラが貼られたらしい。三・一五事件[1]につながる出来事である。

戦時中には、兵庫県からも「満州」へ開拓移民が出かけている。出石郡高橋村の開拓団は、479人が渡満・入植したが、1945年8月に345人が集団自決する。高橋村は、山間の寒村で、1戸あたりの平均耕地は田3反6畝弱、畑1反2畝弱しかなかった。引き上げてきた人たちも、すでに家もなく、耕地は人手に渡っており、苦難であったらしい。

阪神大水害(1938年)のことは、高校が住吉川の近くだったので、それなりに知っていた。

1936年の斎藤隆夫の粛軍演説は有名である。彼は、兵庫県出石郡出石町(現在は豊岡市)の出身だが、戦後も総選挙に当選し、進歩党・日本民主党・民主自由党に所属し、第1次吉田内閣、片山内閣で国務大臣となった。自由主義の立場をとるが、「労働運動には理解を示さず、国民大衆とは一歩距離をおく姿勢を固持」したらしい。

神戸や明石は、昭和20年にはいって、ひどい空襲を受けた。明石は、1月19日に川崎航空機明石工場が爆撃され、6月9日にも空襲を受けた。3月17日に、神戸西半分が丸焼けになり、5月11日には川西航空機甲南製作所などが攻撃の対象とされ、6月5日に東半分と須磨区とが大空襲を受ける。「火垂るの墓」は6月5日の大空襲の出来事である。8月5?6日には、尼崎、西宮、芦屋などが空襲を受ける(阪神大空襲)。

兵庫県出身の軍人・軍属の犠牲は約9万7000人。沖縄戦では3073人が倒れたが、これは北海道に次ぐ犠牲者であるそうだ。

戦後についても、いろいろ新しく学んだこともある。八鹿高校事件(1974年)についても、1項目起こして3ページ以上にわたって書かれている。それだけ、この事件が大きな事件だったということだが、内容的には“中立”的な叙述に終始している。60年代末からの公害問題も書かれているが、最後は、結局は坂井・貝原県政の方針をなぞっただけで終わっている。まあ、この手の本としては仕方のないところか。

大雑把ではあるが、馴染みのある地名のなかで歴史を読むと、自由民権にしても第1次世界大戦後の社会運動の高揚にしても、ずいぶんと身近でリアリティーあるもののように感じられる。日本史には、こういう勉強も大事だと思った次第である。

【書誌情報】
書名:兵庫県の百年 県民百年史28/著者:前嶋雅光、蓮池義治、中山正太郎/出版社:山川出版社/出版年:1989年7月(現在は絶版)/定価:本体1903円/ISBN4-634-27280-6

  1. 1928年3月15日に行われた共産党弾圧事件。この事件での警察による拷問の様子を、小林多喜二が小説『一九二八年三月一五日』に描いている。ちなみにこの事件は「さん、てん、いちご」ではなく「さん、いちご」と読む []

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  1. ということは、近々兵庫で学習会ということですかね?

  2. ワルモノ先生
    いえいえ、そのような予定はありません。
    まったく唐突に思いついただけのことです。このシリーズは47都道府県みんな出ているのですが、いままでもっといい加減な内容だろうと思っていたら、意外とまっとうだったので、それならと読んでみた次第です。

    もしワルモノ先生が、兵庫県史に興味をお持ちになったときは、ご参考までに。「兵庫の地理」よりは分かりやすいと思いますよ。(^_^;)

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