月1000円でなにを期待するのか?

日本経団連の御手洗会長が、大手企業の春闘が賃上げで妥結したことについて、「消費の拡大や内需振興につながることを期待する」とコメント。

しかし、月1000円程度の賃上げで、なにほどの消費拡大ができるというのだろうか? すでに消費者物価は、前年同月比で0.8%上昇している。月1000円の賃上げでは、物価上昇分にも足りません。

3年連続賃上げを評価=消費拡大、内需振興に期待?経団連会長(時事通信)
春闘:自動車・電機、賃上げ幅ほぼ07年並み 一斉回答(毎日新聞)
1月の全国消費者物価指数、4か月連続で上昇(読売新聞)

3年連続賃上げを評価=消費拡大、内需振興に期待?経団連会長
[時事通信 2008/03/12-19:03]

 日本経団連の御手洗冨士夫会長は12日、高知市で記者会見し、同日妥結した大手企業の2008年春闘について「原材料価格の高騰、円高、米経済の不振など収益環境が極めて厳しさを増す中、リード役の自動車、電機で3年連続の賃上げになったことを評価したい」との見解を表明した。また、今春闘の賃上げ結果に加え、新規採用増など企業の雇用拡大努力を指摘した上で「こうしたことが消費の拡大や内需振興につながることを心から期待する」と述べた。
 日本経団連は昨年末、今春闘の経営側指針で初めて「家計への配慮」に言及するなど、好調企業の賃上げ容認を鮮明にした。また、今月6日には福田康夫首相が御手洗会長に企業の賃上げ努力を直接要請するなど、春闘の妥結結果に注目が集まっていた。

春闘:自動車・電機、賃上げ幅ほぼ07年並み 一斉回答
[毎日新聞 2008年3月12日 12時22分 (最終更新時間 3月12日 14時04分)]

 自動車や電機産業の産別で構成する「金属労協」(IMF・JC、加藤裕治議長)に加盟する大手労組の春闘要求に対する経営側の回答が12日、一斉に示された。この日の回答は春闘の相場形成をリードする。内需拡大のきっかけにと政府・与党からも「賃上げを」との声が相次いだ異例の春闘だったが、回答額は1000円前後の上げ幅でほぼ昨年並みの水準にとどまった。
 3年連続のベースアップなど賃金改善を勝ち取り、産別平均ではやや昨年を上回った。日本経団連は当初、好業績企業の賃上げ容認の方針を示したが、今年に入り、米国経済の落ち込みや原油高、円高などの影響で景気の先行きへの不透明感が広がり、個別交渉では経営側は厳しい姿勢を崩さなかった。
 好業績企業の代表格として春闘相場に大きな影響を与えるトヨタ自動車は、昨年と同額の1500円の要求に対し、3年連続で1000円、一時金(ボーナス)は満額の253万円の回答となった。この他、自動車業界ではホンダが800円(要求1000円)で昨年を100円下回った。日産自動車は要求を受け入れ、定期昇給分も含む賃金改定原資額として満額の7000円を回答、昨年を300円上回った。一時金は日産自動車、ホンダなど他社もほぼ満額が並んだ。
 電機は統一要求で2000円の賃金改善を各単組が求めた。日立製作所は1000円(昨年比200円増)、東芝は昨年と同額の1000円となった。昨年は要求しなかった三洋電機は800円を回答。昨年同様、産別内でばらつきが出た。
 鉄鋼や非鉄、造船重機で作る基幹労連は隔年交渉で、2年前と同じく2年で3000円の賃金改善を要求している。三菱重工は2000円、新日本製鉄は1500円を回答した。
 金属機械の中小が中心の産別JAMは山武1500円、シチズン1200円など1000円を超える回答を次々と引き出した。
 今春闘を巡っては、労働側が「賃上げで内需主導の経済に転換が必要だ」と訴えた。福田康夫首相も今月、メールマガジンで「今こそ改革の果実が給与として国民、家計に還元されるとき」と書き、経団連の御手洗冨士夫会長に異例の賃上げ要請をした。
 電機連合の中村正武委員長は「中心的な組合の平均で昨年を約10%上回る結果が取れた。水準(ベア)で1000円取れており内需拡大にも一定の役割を果たす額だと思う」と話した。また、加藤議長は「トヨタが昨年と同額なのは残念と言えば残念だが、自動車の平均では昨年を上回った」と述べた。【東海林智、森有正】

1月の全国消費者物価指数、4か月連続で上昇
[2008年2月29日11時33分 読売新聞]

 総務省が29日発表した1月の全国消費者物価指数(2005年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合で100.5となり、前年の同じ月と比べて0.8%上昇した。
 前年同月比がプラスになったのは4か月連続だ。上昇率は07年12月と同じだった。
 原油高など、あらゆる特殊要因を除いた「中核指数」(内閣府試算)は0.2%の上昇にとどまった。同日、閣議後に記者会見した大田経済財政相は、「デフレ脱却に向けた歩みは続いているが、足踏みしている」と述べた。
 品目別に見ると、原油高の影響で灯油が24.9%、ガソリンが16.1%と大幅に上昇した。エネルギー全体では8.3%の上昇だった。昨年以降、全国的に値上げの動きが続いているタクシー料金は5.5%上昇した。
 政府が昨年10月、輸入小麦の売り渡し価格を約1割引き上げた影響が食料品価格に波及しており、小麦を主原料とする食パンが8.5%、スパゲティが10.2%、それぞれ上昇した。食料品全体(生鮮食品を除く)の上昇率は0.9%だった。
 一方、販売競争の激しい家庭用耐久財は価格の下落傾向が続いており、指数の上昇を抑えた。デジタルカメラは32.5%、ノート型パソコンは30.3%、薄型テレビは17.8%、それぞれ下落した。
 同時に発表された東京都区部の2月の消費者物価指数(速報値)は、前年同月比0.4%の上昇だった。

各紙の社説を眺めてみたが、「日経新聞」でさえ「景気を冷やす」と厳しい批判をしている。

景気を冷やす渋い賃上げ(日経新聞)
春闘集中回答 景気に弾みがつかない(中日新聞)
春闘集中回答/中小企業への影響が心配だ(河北新報)
春闘集中回答 底上げにつながるのか(北海道新聞)
千円札1枚では足りない 春闘集中回答(西日本新聞)
春闘一斉回答/賃上げの“追い風”どこへ(神戸新聞)

社説 景気を冷やす渋い賃上げ
[日経新聞 2008/3/13]

 大手製造業の賃上げ回答はおおむね昨年並みの低い水準にとどまった。今年も労使の賃上げ交渉は抑制的な基調で収まる見通しで、石油関連製品や食品などの値上がりが続く中、個人消費は冷え込みそうだ。
 春季交渉の先陣を切って金属労協(IMF・JC)に加盟する自動車、電機、鉄鋼などの主要労働組合への経営側からの一斉回答が12日あった。最高益更新を見込むトヨタ自動車では、1500円の引き上げを求める組合に経営側が昨年と同じ1000円を回答して決着した。
 2002年に業績好調にもかかわらずゼロ回答で「春闘」崩壊を決定的にしたトヨタの回答が今年も焦点だった。産業別組合組織の自動車総連の首脳は「1000円は超えるだろう」と予想したが、経営側は堅かった。代わりにボーナスを満額で答え、好業績は柔軟に調整できるボーナスで還元する方針を堅持した。
 電機大手は2000円の引き上げ要求に1000円の回答だった。昨年の500円プラス手当類500円と実質的に同額である。松下電器産業は全額を子育て支援にあてた昨年と同様、福利厚生関係の増額で答えた。隔年要求の鉄鋼、造船は、2年分でそれぞれ1500円、2000円と前回を上回ったものの、低い水準で決着した。
 今年は福田康夫首相が内需喚起の窮余の一策として賃上げを促し、先週には日本経団連の御手洗冨士夫会長に直接、要請したが、空振りに終わった格好だ。経団連も当初は賃上げを容認する姿勢だった。しかし海外で稼ぐ製造業大手の労使は、米国景気の陰りや株価の下落、円高、原材料価格の上昇などに危機感を強め、賃上げを自制したのだろう。
 経済の先行きに暗雲が広がるものの、上場企業は08年3月期に連結経常利益が5期連続して最高益の見込みである。これを引っ張るトヨタなどの好調企業が低水準で決着したため、後続の中小企業や内需に依存する流通、サービス産業などの賃上げは頭を抑えられるだろう。
 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、昨年の現金給与総額は景気が回復する中で3年ぶりに減った。今年も賃上げ抑制という個々の企業の選択が全体として個人消費を抑え、景気への悪影響が懸念される。

【社説】春闘集中回答 景気に弾みがつかない
[中日新聞 2008年3月13日]

 自動車や電機など金属労協(IMF・JC)加盟労組への賃上げ回答は、大半が前年並みだった。3年連続の賃金改善だが景気刺激には力不足だ。中小・パート労働者たちの賃上げに期待したい。
 福田康夫首相の鶴の一声も経営者の心を動かすことはなかった、ということだろう。労使交渉がピークを迎えた六日、福田首相は日本経団連の御手洗冨士夫会長を官邸に呼び賃上げへの協力を要請した。だが経営側は当然のことのように懐勘定を優先させた。
 深刻なのは春闘を指揮してきた連合だ。控えめな要求に対して一時金を除き、満額回答はほとんどなかった。高木剛会長は記者会見で「経営側にはもう少し大局的な判断をしてほしかった」と唇をかんだ。
 労働側は今年の春闘でも経営側の厚い壁を打ち破れなかった。
 春闘相場のリード役を担った自動車業界。とくにトヨタ自動車労組は今年、ベースアップに相当する賃金改善分として昨年妥結額の1000円を上回る1500円を要求した。だが回答は3年連続で同額の1000円だった。
 電機業界は高めの2000円を要求した。しかし回答は松下電器や東芝、三菱電機など大手がそろって前年同額の1000円。15年ぶりに重点要求に掲げた時間外労働の割増率(時割)引き上げは継続協議となった。
 そんな中で鉄鋼業界では休日出勤の割増率について現行35%から40%前後に引き上げる回答を得た。電機業界では東芝が賃金改善分を現場の熟練技能者などに重点配分することや、松下電器はワークライフバランス(仕事と家庭の調和)推進に配分するなどの工夫も行われた。
 今春闘は戦後最長の景気と五期連続で最高益確実な企業業績など追い風を受けて始まった。だが今年に入り、サブプライムローン問題に端を発した株価急落と円高、原材料価格の高騰などで逆風が強まった。
 厚生労働省によると昨年の主要企業の賃上げ率は1.87%で4年連続のアップだった。今年は2%程度の上昇が予想されたが現段階では横ばいか微増にとどまりそうだ。これでは可処分所得の増加→個人消費刺激→景気拡大のシナリオは難しい。
 最近は石油製品や食品を中心に物価上昇が目立つ。物価高が続けば賃上げ効果は減殺されてしまう。
 今後の焦点はこれからヤマ場を迎える中堅・中小企業、パート・派遣労働者たちの賃上げ交渉である。雇用者全体の3割を超えた非正規労働者たちの待遇改善が行われて、初めて景気の底上げが可能になる。各労組は粘り強く交渉してほしい。

社説:春闘集中回答/中小企業への影響が心配だ
[河北新報 2008年03月13日木曜日]

 働いている人は、今度こそ報われるかと心待ちにしていたことだろうが、基本給は依然として抑制基調が変わらなかったと言える。
 春闘の相場形成に影響力を持つ金属労協(IMF・JC)加盟の自動車、電機など主要4業種で、経営側はきのう、労働組合の賃上げ要求に対して一斉に回答し、ほぼ決着した。
 自動車では、トヨタが組合要求の1500円に対し前年と同じ1000円、ホンダは前年を100円下回る800円、日産は定昇を含む1人当たりの賃金改定原資7000円(前年比300円増)の満額回答で、それぞれ妥結。
 電機は、2000円統一要求の松下電器産業、東芝など大手の大半は前年と同じ1000円、7年ぶりに賃上げ要求した三洋電機は800円の賃上げで決着した。
 隔年で労使交渉している新日本製鉄やJFEスチールなど鉄鋼大手は、深夜労働の割り増し手当を現行の30%から33%(組合要求35%)への引き上げ、三菱重工、IHIなど造船重機は2年間分、2000円増で合意した。
 今春闘では、東証一部上場企業が2007年3月期決算まで4期連続で最高益を計上しながら労働分配率が減少し、個人消費につながらず、景気を冷やしかねないとして、福田首相が日本経団連に賃上げを働き掛けた経緯がある。
 だが、経営側は前年並みの賃上げにとどめ、企業業績の向上分は、トヨタ、日産、ホンダなどの年間一時金の満額獲得に見られるように、一時金で対処したようだ。
 賃上げに水を差したのは、繰り返し指摘されているように、米国の信用力の低い人向けの住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付きに端を発した世界経済の後退懸念だ。
 株安、円高、原油はじめ原材料の高騰という二重、三重の負の連鎖が絡まり、自動車、電機などの輸出産業や海外から輸入している鉄鉱石の大幅値上げで鉄鋼業などの先行きが見えなくなってしまった。
 景気を支える柱である個人消費が落ち込まないよう賃上げが必要な一方、米国など国際経済動向も見極めなければならないまだら模様の中に、春闘第一弾の自動車、電機などが置かれていたと言えよう。
 気に掛かるのは、中小、零細企業や派遣、パートなど非正社員の処遇改善への影響だ。
 親会社のコストダウンなどの要請に対し、身を切られるような思いで応じ、大企業の繁栄や景気拡大に寄与してきたのは、圧倒的多数を占める中小、零細企業であることは間違いない。
 また、3人に1人の割合になった非正社員は1000万人を超えており、正社員と比べ所定内賃金は男女とも6―7割、正社員とほとんど同じ仕事をしていても8割に満たない現実がある。
 団塊の世代が大量退職する中、わが国の将来を支える上でも、若年層らを賃金などで適正に処遇し、しっかりとした職に就いてもらわなければならない。
 大企業も中小、零細企業、非正社員の人ごととせず、支援することが必要だ。

社説:春闘集中回答 底上げにつながるのか
[北海道新聞 2008年3月13日]

 春闘の賃金交渉で自動車、電機など大手製造業の経営側が一斉に回答した。
 相場形成の主役となるトヨタ自動車が1500円の組合側要求に対し1000円を提示するなど、おおよそ前年並みの水準にとどまった。
 3年連続の賃上げは実現したが、大幅賃上げが期待されていただけに肩すかしを食ったように感じた労働者も多かったろう。
 自動車生産台数が世界一となったトヨタが3月期決算も過去最高益を見込むなど大手企業の業績は好調だ。日本経団連は「賃上げ容認」の交渉方針を盛り込んだ報告書もまとめていた。
 果たして企業業績に対する労働者の貢献が正当に評価されたと言えるだろうか。労使はもう一歩、踏み込むことはできなかったものか。
 経営側はサブプライムローン問題や原油高、円高を理由に景気の先行きに不透明感が増していると主張するが、不安を抱えるのは家計も同じだ。
 食品やガソリンなど生活関連用品の値上がりには歯止めがかからず、可処分所得は減っている。
 経団連は報告書で「企業と家計を両輪とした経済構造」が日本経済を強くすると指摘していた。この回答では消費を刺激し内需を拡大するだけの恩恵を家計に与えるとは思えない。
 一時金については満額回答や前年実績への上積みも目立った。短期的な好業績は一時金で還元するという経営側の基本方針を踏襲した結果だ。
 これが産業間や企業間の格差を一段と広げてしまわないか懸念される。
 交渉がこれから本格化する道内では、ボーナスのような一時金を支払う余裕のない中小企業も多いからだ。
 格差是正は今春闘の大きな争点だ。連合は全雇用者の3分の1を占めるパートやアルバイトなど非正規雇用者の待遇改善を重視し、例年以上に取り組みを強化してきた。
 だが、経営側はここでも「コスト増につながる」として慎重な姿勢を貫いている。賃金水準の底上げに対し企業の壁は厚いのが実情だ。
 福田康夫首相は今月初め、経団連の御手洗冨士夫会長と会い、賃上げに協力するよう直接要請した。
 内閣のメールマガジンでは「改革の果実が給与として国民と家計に還元されるべきとき」だと説明している。
 本当にそう考えるのなら民間任せにしてはなるまい。
 消費を増やすには減税も効果があるだろう。非正社員の正社員化促進策や、ワーキングプアを生み出している労働者派遣法の改正など政府が検討すべき政策は多い。北海道にとってはどれも重要な課題だ。
 首相にはスピード感を持って対応するよう求めたい。それが労使間の話し合いを後押しすることになるだろう。

千円札1枚では足りない 春闘集中回答
[2008/03/13付 西日本新聞朝刊]

 自動車、電機など大手製造業の春闘で、経営側が一斉に回答した。大半が3年連続の賃上げとなったが、その額は多くの企業で前年並みにとどまった。好調な業績を考えれば労使とも、もう一段の上積みを探るべきではなかったか。
 米国経済に景気減速感が強まり、輸出依存型のわが国経済の先行きは不透明感が増している。息の長い成長を続けるには労働者の所得を引き上げ、個人消費を回復させることで内需主導型に転換しなければならない。
 こうした総論では労使とも一致しているだろう。日本経団連も早々と「賃上げ容認」を打ち出してもいた。組合側には例年に増して追い風が吹いていたはずだった。ところが、個別交渉となると、今年も「国際競争力の維持・向上」という経営の論理が賃上げ額の天井を押し下げてしまった。
 それは、春闘の相場形成に大きな影響力を持つトヨタ自動車の交渉にも見ることができる。今年3月期連結決算で売上高、純利益ともに過去最高を見込むにもかかわらず、「原材料価格の高騰、円高など環境は厳しい。安易な賃上げはできなかった」として、3年連続で1000円の回答となった。その代わり過去最高水準の一時金要求には満額で答えている。
 固定費の増加を招く賃上げは抑制し、好業績の成果は一時金で報いようとする企業の姿勢は1990年代半ば以降、定着したように見える。
 バブル崩壊の後遺症に苦しんだ企業が経営体質強化の柱に据えたのが、賃金コスト切り下げだった。だが、いったん上げた正社員の月給を引き下げるのは難しく、賃上げゼロや正社員採用の抑制、パート採用増で対応してきた。
 多くの企業が業績が好転しても過去の苦い体験を引きずっているようだ。利益が増えた分を手当などの名目で還元する動きが広がったのも、賃上げ抑制の流れの中にあると言えるだろう。
 しかし、消費を押し上げるには毎月の給与を着実に上げることが必要だ。今年は良くても来年以降の一時金が見えなければ、安心してローンは組めない。千円札1枚の賃上げでどれだけ内需を拡大することができるだろうか。
 低調だった大手の回答が、これから交渉が本格化する中小企業の春闘に影響を与えるのは確実だ。中小企業は業績回復が遅れているだけに、大手との賃金格差がさらに拡大することが懸念される。
 組合側は攻め方を考え直す時期を迎えていないだろうか。経営側も内需拡大という命題を実現するために、パートを含めた従業員への利益配分のあり方を再検討すべきではないか。
 福田康夫首相は日本経団連の御手洗冨士夫会長に賃上げに努力するよう要請していた。だが、民間に任せきりでは賃上げは容易でないことを大手の回答は示している。政治も出番を考えるべきだ。

社説:春闘一斉回答/賃上げの“追い風”どこへ
[神戸新聞 2008/3/13 10:17]

 春闘相場の形成に影響力を持つ大手製造業の経営側が12日、労組の賃上げ要求に対する回答を一斉提示した。好調な企業業績を受け、自動車や電機は三年連続の賃上げとなったものの、その水準は前年並みにとどまった。
 今春闘は日本経団連の「賃上げ容認」方針で幕を開け、交渉最中の今月初めには福田首相が異例の賃上げ要請を行うなど労働側に“追い風”が吹いていた。多くの組合が前年水準以上をめざしていたが、期待外れに終わったといえる。
 経営側の回答が低調になったのは、景気の先行きへの警戒感が一段と高まってきたからだ。サブプライムローンの影響で米経済に暗雲が漂うほか、急激な円高や原材料高などの不安材料があり、経営側は賃上げに慎重にならざるを得なくなった。
 そんな姿勢を象徴するのが、国内きっての稼ぎ頭・トヨタ自動車が組合要求の1500円に届かない前年並みの回答(千円)を示したことだろう。同業のホンダも前年を100円下回る800円で決着、日産自動車は労組要求通りの7000円で妥結した。
 松下電器産業など電機大手は2000円の統一要求が出ていたが、大半が前年と同じ1000円を回答、労組が7年ぶりに賃上げを要求した三洋電機は800円で決着した。
 同時に回答された年間一時金をみると、自動車各社が満額のほか、電機でも高水準の回答が相次いだだけに、賃上げへの慎重姿勢が際立つ。業績向上分を特定の従業員層に重点配分したり、手当などの名目で還元する動きも広がっている。
 こうした大手での賃上げ伸び悩みが、今後本格化する中小企業などの交渉にも影響することは避けられない。労働側は気を引き締め、経営側が要求への理解を深めるよう、もっと強く働きかける必要がある。
 今春闘の課題は、7年目に入った戦後最長の景気拡大の果実を、生活実感に結び付けることができるかどうかだ。労働側は賃金アップで消費が活気づけば、景気がより長く持続できると訴えてきた。
 これは、こじつけでも何でもない。国内の景気はこれまで米国やアジア向けの好調な輸出に支えられてきた。しかし、米景気に陰りが出始めた今、いつまでも輸出頼みでいいかどうか。内需中心の成長こそが今後の日本経済の進むべき道である。
 経営側もそれは先刻承知だ。ただ、総論では賛成でも、個別の経営事情からすれば別だという各論の壁がある。それを乗り越えるのは決して容易なことではないが、労働側は挑戦し続けるしかない。

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