最近読んだもの

山本紀夫『ジャガイモのきた道』(岩波新書)伊藤章治『ジャガイモの世界史』(中公新書)大庭健『いま、働くということ』(ちくま新書)

長島誠一『独占資本主義の景気循環』(新評論)

左上から、山本紀夫『ジャガイモのきた道』(岩波新書)、伊藤章治『ジャガイモの世界史』(中公新書)、大庭健『いま、働くということ』(ちくま新書)、長島誠一『独占資本主義の景気循環』(新評論、古本)。

まずジャガイモ本が2冊。伊藤氏の『世界史』は今年1月の出版で、山本氏の『きた道』はこの5月に出たばかり。内容的にも、ジャガイモの原産地であるアンデスでのジャガイモづくりから始まって、それがヨーロッパから世界と日本へどう広がったという同じテーマを扱っている。こんなことになったのは、今年が国際ポテト年だからか。

読んでみると、伊藤氏の『世界史』の方には、先行研究・参考文献として山本紀夫氏の『ジャガイモとインカ帝国』(東京大学出版会、2004年)が上がっていた。さらに、山本氏の『きた道』も、第1章、第2章の初出が『ジャガイモとインカ帝国』初出とされている。本としては、伊藤氏のものの方が先に出版されたが、内容は山本氏のものに似てしまった事情は、そういうところにありそうだ。

もちろん、農学博士で、民俗学・民族植物学を専攻した山本氏の叙述の方が、ジャガイモについての植物学的な記述という点でも、アンデス、ヒマラヤでの現地調査にもとづくジャガイモづくりの民俗学的な記述という点でも充実している。ただ、本の題名が「ジャガイモのきた道」となっているほどには、ジャガイモの伝播が歴史的に追跡されている訳ではない。その点では、ジャガイモがかかわる世界の歴史を丁寧に拾って回った伊藤氏の本がおもしろいかもしれない。

面白かったのは、現在栽培されているジャガイモは、みんな4倍体だということ。その分、イモもでかくなった訳だが、野生のジャガイモを栽培し、そのなかから食糧として優れた品種を選び出していったアンデスの人々の長い努力のたまものだ。水分の多いイモは、穀物に比べると保存に適さないし、運ぶのも面倒。アンデスの人々は、イモを凍らせて乾燥させて、「チューニョ」という、ある種の“凍みイモ”を発明することで、それを解決した。

トマトも原産地はアンデス。われわれは、アンデスの人たちにいろいろと感謝しなければならないようだ。

3冊目は、現代思想の大庭健氏(専修大教授)の最新著。日雇い派遣などという、現在の甚だしく劣化させられた「働く」現場の実態から出発して、そもそも人間は何のために働くのか、働くことにどういう意味があるのか、等々、考察を進めている。そのさい、人間と自然との永遠の物質代謝という「労働」のそもそも論的な解明や、人間はモノを作るだけでなく、同時に人と人との関係も作っているというマルクスの解明が、太いベースになっている。

4冊目は、先日読み終えた長島誠一『現代マルクス経済学』の続きとして読んだもの。自由競争段階では、恐慌になると、資本は値下げ競争を繰り広げ、その結果、弱い資本は破産してゆかざるをえない。それにたいして、独占段階になると、独占的資本は、操業率を下げることで市場に出す商品量を減らし、値下げ競争を回避する。その結果、恐慌を通じた既存資本価値の破壊は、倒産という形をとらず、過剰設備という形で現われることになる。また、利潤率の低下も、価格の低下→利潤の減少という形よりも、固定費の増加→利潤の減少、という形をとる。

ということで、恐慌論を深めるためには、景気循環の諸局面で企業がどんなふうに意志決定していくか、という角度から迫るのが非常に重要だ。引き続き、この方面を勉強していこう。

【書誌情報】
著者:山本紀夫/書名:ジャガイモのきた道――文明・飢餓・戦争/出版社:岩波書店(岩波新書 新赤版1134)/刊行:2008年5月/定価:本体740円+税/ISBN978-4-00-431134-8
著者:伊藤章治/書名:ジャガイモの世界史――歴史を動かした「貧者のパン」/出版社:中央公論新社(中公新書1930)/刊行:2008年1月/定価:本体840円+税/ISBN978-4-12-101930-1
著者:大庭健/書名:いま、働くということ/出版社:筑摩書房(ちくま新書720)/刊行:2008年5月/定価:本体780円+税/ISBN978-4-480-06423-3
著者:長島誠一/書名:独占資本主義の景気循環(現代経済学叢書24)/出版社:新評論/刊行:1974年/定価:2200円/古本

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