後期高齢者医療 負担の重くなる世帯は31%だけか?

厚生労働省は、世帯モデルにもとづく試算から、後期高齢者医療制度の保険料負担が69%の世帯で軽くなったと発表。それだけ聞くと、「なんだ、野党は、負担が増えた、増えたと言っていたが、減った方が多いではないか」と思うかも知れないが、この数字は、意図的に小さく見せかけられたものだ。

高齢者の保険料 70%が安く(NHKニュース)
後期高齢者医療…高所得層の8割 負担減(読売新聞)
後期高齢者医療制度:保険料軽減、低所得世帯ほど少なく 厚労省が初調査(毎日新聞)
新高齢者医療 低所得者の負担増、高所得者は負担減(朝日新聞)

「しんぶん赤旗」↓が、厚生労働省の「実態調査」について、実は負担増の%を小さく見せるためのゴマカシをやっていることを暴露している。

後期高齢者医療制度の厚労省調査/負担増隠す2つの手法(しんぶん赤旗)

メディアは、厚生労働省の発表数字を唯々諾々と報じるだけでなく、それが本当に実態を反映しているかどうか、きちんと検証してもらいたい。

厚生労働省のゴマカシ。

まず1つめ。厚生労働省の試算では、これまで子どもの扶養家族になっていて保険料を払っていなかった人(1300万人中の約200万人)を、何%という計算から、完全に除外している。この人たちは、これまで保険料ゼロだった訳で、それを含めれば、負担の増えた割合はもっと大きくなる。

2つめ。厚生労働省の試算は、12のモデル世帯を設定して、<1>市町村ごとに保険料が増えたか減ったかを調べ、それをもとに<2>所得分布を使って負担の軽くなった世帯が何%になるかを推計しただけ。世帯ごとの負担の増減については、本当の意味での実態調査はおこなわれていない。

<1>の結果には、国民健康保険料の市町村ごとの計算方法の違いは反映されているといえるだろう。しかし、各市町村が実施している独自の減免制度(たとえば障害者や寝たきりの場合の軽減措置)などが組み込まれているかどうは不明である。したがって、<2>については、市町村ごとの減免が認められなくなったために負担増となる部分が参入されておらず、その分、負担増世帯数が小さくなった可能性がある。

実際には、こうした市町村独自の減免制度が認められなくなったことによって、保険料が何倍にもなったというケースが少なくない。しかも、そうした減免を受けていた人は、認知症だの寝たきりだの、障害者だの、いわゆる社会的弱者の人たちだ。そういう人たちのところに、保険料負担増が集中しているから、事態はますます深刻なのである。

社会的弱者に負担増のしわ寄せがおこなわれ、高額所得者は負担減になる――まったく逆立ちした医療保険制度だといわなくてはならない。

3つめ。「しんぶん赤旗」によれば、厚生労働省のモデル試算では、すべての高齢者世帯が資産をもち、国民健康保険料の資産割1万9000円ほどを負担していたという前提で、負担が重くなったか軽くなったかが推計されているそうだ。しかし、実際には4割ほどの世帯は資産ゼロであり、こうした世帯は、実際には1万円負担増になったとしても、資産割1万9,000円を払わなくて済むようになったとして、負担減と計算されることになる。

ほかにも、負担増になる世帯が多いと見られる世帯モデルが除外されいている、という問題もあるらしい。

まったくもって国民を馬鹿にした調査だ。

高齢者の保険料 70%が安く
[NHKニュース 6月4日 19時27分]

 厚生労働省は、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度の導入に伴って、高齢者の保険料の負担がどうなったかを調べた実態調査を公表し、70%近くの世帯がこれまでより保険料が安くなっているとみられることがわかりました。一方、所得が低い世帯のほうが、高い世帯よりも負担が増えた割合が高かったことが明らかになりました。
 この調査は、4月に導入された後期高齢者医療制度に批判が出たことから、その改善策を探るため、福田総理大臣の指示で行われたもので、これまで多くの高齢者が加入していた国民健康保険と比べて、保険料が増えたのか減ったのかを調べました。
 調査は、単身者、夫婦ともに75歳以上、夫婦のどちらかが75歳以上、それに75歳以上の人が子ども夫婦と同居している4つのモデルケースごとに、▽年間およそ80万円の基礎年金だけの受給者、▽年間200万円余りの平均的な厚生年金の受給者、それに▽年間400万円の厚生年金を受給している高所得者について、全国の自治体を通じて調べました。その結果、▽基礎年金と平均的な厚生年金を受給している単身者では96%の自治体で保険料が安くなったほか、▽基礎年金と平均的な厚生年金を受給している夫婦、それに高所得の単身者では70%から80%余りの市町村で保険料の負担が軽くなっていました。一方、▽子ども夫婦と同居している高齢者は、所得の区分にかかわらず保険料が高くなる自治体が51%から55%と、負担が減る自治体よりも多くなっています。
 そして、この結果をもとに、都道府県ごとに高齢者の所得分布にあわせて推計したところ、75歳以上の高齢者1300万人のうち、子どもや配偶者の扶養家族になっていて、保険料の支払いが現在は免除されている人などを除く、1000万人余りの世帯の69%で、これまでより保険料の負担が軽くなっているとみられることがわかりました。
 これを年間の年金所得で見てみますと、▽177万円未満では61%、▽177万円以上、292万円未満では75%、▽292万円以上では78%の世帯が、それぞれ、これまでより保険料が安くなったとみられ、所得が低い世帯のほうが、高い世帯よりも負担が増えた割合が高かったことが明らかになりました。
 都道府県別に見てみますと、▽栃木県と群馬県、それに徳島県で87%、▽岩手県と山梨県、それに鳥取県で82%の世帯が、これまでより保険料の負担が軽くなった一方、▽沖縄県では保険料が高くなった世帯が64%に上り、▽東京都でも56%、▽香川県と高知県では48%の世帯が、これまでより保険料の負担が増えたものとみられています。
 これについて、舛添厚生労働大臣は「およそ7割の世帯で保険料の負担が軽くなっていることであり、専門家の意見も入れて推計しているので、大きなトレンドではまちがっていないと考えている。実態の調査としては、一定の評価をしていいと思う」と述べました。また舛添大臣は、負担が軽減される割合が、所得が低い人のほうが高い人より少ないという結果が出たことについて、「東京都のような大都会では、そういうことが言えると思うが、一般的な傾向として7割近くの世帯が安くなっており、1つのデータとして受け止めたい」と述べました。

後期高齢者医療…高所得層の8割 負担減
[2008年6月5日 読売新聞]

 厚生労働省は4日、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の対象となる75歳以上の保険料について、旧制度で国民健康保険(国保)に加入していた場合、7割の世帯で負担減になるとの調査結果を発表した。
 4種類の家族構成に、3種類の収入額を組み合わせた12のモデルケースについて、保険料額の増減を全市町村で調査。さらに、所得分布などをもとに、保険料の増減世帯数を推計した。
 それによると、全体では69%の世帯で保険料が減少した。所得ごとでは、高所得者(年金収入292万円以上)で負担が減った世帯の割合は78%で、低所得者(同177万円未満)の61%を上回った。政府は当初、低所得者ほど保険料が下がると説明していたが、「国保料が安く抑えられていた大都市部で、低所得世帯の減少割合が約2割と低かったため」(厚労省)としている。
 厚労省は、与党の作業チームがまとめた、低所得者への負担軽減策を導入した場合の試算も公表。全体での減少割合が75%と6ポイント上昇するほか、県議選を8日に控えた沖縄は、全国最低の36%から61%にアップすると推計している。

後期高齢者医療制度:保険料軽減、低所得世帯ほど少なく 厚労省が初調査
[毎日新聞 2008年6月5日 東京朝刊]

 厚生労働省は4日、国民健康保険から後期高齢者医療制度に移行した際に保険料がどのように増減したかの調査結果(速報値)を公表した。69%の世帯で負担が減少したものの、低所得世帯ほど負担減の割合は少なかった。同省はこれまで「一般的には低所得者は負担が軽減され、高所得者ほど負担が増える」と説明してきたが、逆の結果となった。
 調査は、今年4月に新制度に移った1300万人のうち、国民健康保険から移行した1000万人強が対象。1830市町村の回答を集計し、(1)75歳以上の単身(2)夫婦共に75歳以上(3)夫75歳以上、妻75歳未満(4)75歳以上の親が子供夫婦と同居??の四つの世帯類型と、3種類の収入区分を組み合わせた12のモデル世帯について保険料額の変化を調べた。
 軽減割合を所得別にみると、年間の年金収入が177万円未満の「低所得」では61%▽177万円以上292万円未満の「中所得」75%▽292万円以上の「高所得」78%??となっており、低所得世帯ほど保険料が減った割合が低いことが分かった。
 都道府県別に比較すると、減少する世帯割合が高いのが栃木、群馬、徳島県の87%だった。逆に全国平均より低いのは沖縄県36%、東京都44%、香川、高知県52%??だった。
 同省は、与党が3日に正式合意した、保険料の負担軽減策を実施した場合の推計値も公表した。全国平均では6ポイント上昇して75%の世帯で保険料が減る見込みとなった。8日に県議選投開票が行われる沖縄県では25ポイント上昇して61%となる。【佐藤丈一】

◇国民健康保険料の算定方式
 市町村ごとに三つの方式に分かれる。収入に応じた「所得割り」▽一律に同額を払う「均等割り」▽土地などに課す「資産割り」▽世帯にかかる「平等割り」??の四つを合計する「4方式」が最多で80・4%の市町村が採用(加入者ベースで46・4%)。「資産割り」以外の「3方式」が次ぎ、17・1%の市町村(同38・9%)で採用。均等割りと所得割りの「2方式」は2・4%の市町村(同14・6%)。

新高齢者医療 低所得者の負担増、高所得者は負担減
[asahi.com 2008年06月04日23時02分]

 後期高齢者医療制度で、国民健康保険から移った人のうち、年金収入177万円未満の低所得世帯ほど保険料負担が増えた割合が高く、特に大都市部では低所得者の約8割が負担増だったことが、厚生労働省が4日発表した調査結果で分かった。年金収入292万円以上の高所得世帯の約8割は負担が減っていた。
 厚労省は、「低所得者は負担が軽減され、高所得者は負担が増える」と説明してきたが、それと相反する結果が出た。同省は「制度を実施する前に調査するべきだった。(保険料の軽減で)もう少しきめ細かい対策ができたはず」としている。
 調査は、所得や世帯構成が異なる12種類のモデル世帯について、保険料の変化を全国1830の市区町村ごとに試算。それをもとに推計したところ、全体的には約7割が保険料負担が減った。
 所得階層別にみると、収入が高いほど負担増の世帯割合が減る。負担増となった世帯の割合は全体では31%。東京23区や名古屋市などが採用する保険料の算定方式では、低所得者の78%が負担増となる一方で、高所得者の負担増は15%だ。
 都道府県ごとの差も大きく、栃木・群馬は負担増となる人は12%だが、沖縄県は64%、東京都は55%と半数を超す。厚労省は、「国保は自治体独自に軽減措置や保険料値上げを抑えていたところがある。そうした地域では、後期高齢者医療制度では、独自策が取れず、保険料が上がる」などと説明している。
 一方、与党が3日決めた低・中所得者向けの負担軽減策を実施した場合、負担増となる世帯の割合は25%に減り、沖縄県、東京都の負担増もそれぞれ41%、31%に減るとしている。

厚生労働省の「実態調査」なるもののゴマカシについては、「しんぶん赤旗」のこの記事が詳しい。

後期高齢者医療制度の厚労省調査/負担増隠す2つの手法
[しんぶん赤旗 2008年5月27日]

 今回の厚労省の調査は、4月に行われた山口県の衆院補欠選挙での与党敗北後、福田康夫首相が舛添要一厚労相に制度の問題点の再検討を指示したことをうけて実施されたものです。本来、このような調査は制度発足前に実施しておくべきであり、遅きに失したものです。重大なのは、その調査方法の中に、負担増の実態を覆い隠す2つの手法が仕組まれていることです。

「実態調査」に値しない調査方法

 そもそも、「実態調査」というのであれば、無作為抽出の方法によって均等に一定数のデータを集め、これを集計すべきです。ところが、今回の「調査」は、4種類の世帯構成(単身世帯、75歳以上の夫婦世帯、夫のみ75歳以上の夫婦世帯、75歳以上1人と子ども夫婦の同居世帯)、3種類の年金年収(79万円、201万円、400万円)の組み合わせによる12通りのモデルについて、各市町村の保険料率をあてはめて試算するだけにすぎません。
 これならば各市町村の保険料率をパソコンに入力するだけで計算可能で、わざわざ調査するまでもありません。より重大なことは、モデルの設定方法によって負担増が低く計算されてしまうということです。

<1>資産を持たない高齢者も「資産割」を前提に計算
 今回の「調査」では、国保料に「資産割」を採用している市町村では、「資産割額」を1世帯当たり年間1万8,973円として計算することとされています。
 実際には、土地や家屋などの資産を保有しない世帯も多く、「資産割」を採用している市町村でも、「資産割」を納めている世帯は6割程度にすぎません。それなのに、厚労省の「調査」は、すべての「後期高齢者」が「資産割」を納めていたという非現実的な仮定をもとにしているのです。
 後期高齢者医療制度の保険料には「所得割」と「均等割」しかなく、「資産割」がありません。資産を持たない人が実際には1万円の負担増だったとしても、実際には払ってもいない国保の「資産割」が1万8,973円も負担減になったとして計算されるために、合計では「負担減」ということになってしまいます。

<2>負担増となる率の高い世帯構成を除外
 今回の「調査」の4類型の世帯構成だけでは、全部あわせても後期高齢者全体の3分の2程度しかカバーできません。このほかに、(1)後期高齢者1人と子ども1人の2人世帯(2)後期高齢者夫婦と子ども夫婦の4人世帯が、それぞれ1割前後をしめており、(3)後期高齢者夫婦と子ども1人の3人世帯も6%程度をしめています。
 問題は、今回の「調査」の四類型に比べて、(2)や(3)の世帯の方が、はるかに負担増となる率が高いことです。これは、同居する子どもが世帯主の場合に子どもの年収が算入されるため、「均等割」の軽減措置が受けられなくなるなどの理由によるものです。厚労省の「調査」は、負担増になる世帯構成を除外して集計することで、負担増の実態を隠すことになっています。

実際には多くの人が負担増に

 厚労省が示した条件通りにパソコンに入力して計算すると、負担増になるのは「後期高齢者の3割程度」という結果が出てきました。
 しかし、「全員が資産を持っている」という非現実的な仮定をやめて、資産を持つ人と持たない人に分けて計算すると、負担増になる割合が4割近くに増えます。
 世帯構成を4類型ではなく、より現実に近い設定にして計算すれば、さらに負担増になる割合が1割前後上昇します。
 このように、現実にはこれまで国保加入だった後期高齢者の多くが負担増になると計算できます。
 さらに、これまで健康保険の扶養家族だった200万人は全員が負担増になるということを考えあわせれば、後期高齢者の相当の部分が負担増になると思われます。(日本共産党政策委員会 垣内亮)

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