『蟹工船』は神戸でも売れているらしい

「神戸新聞」でも『蟹工船』ブームが取り上げられました。僕もいったことのある三宮のジュンク堂書店でも『蟹工船』は売れているそうです。

その記事のなかで、新潮社から、2チャンネルに書き込まれたIT業界の悲惨な実態が出版される、という話が紹介されています。いったいどんな本になるんでしょうねぇ。

ブーム再来で、若者を中心によく売れている小林多喜二の「蟹工船」=7日午前、神戸市中央区、ジュンク堂書店三宮店(撮影・大森 武)=神戸新聞6/7付
ブーム再来で、若者を中心によく売れている小林多喜二の「蟹工船」=7日午前、神戸市中央区、ジュンク堂書店三宮店(撮影・大森 武)=神戸新聞6/7付

「蟹工船」が若者に人気 広がる格差、名作に脚光(神戸新聞)
ブームの主役「プレカリアート」の悲惨な現実(ゲンダイネット)
天地人(東奥日報)

「蟹工船」が若者に人気 広がる格差、名作に脚光
[神戸新聞 2008/6/7 14:24]

 闘争に立ち上がる労働者を描いたプロレタリア文学の代表作「蟹(かに)工船」が、ブームとなっている。若者の熱い支持が特徴で「格差や貧困の広がりが、フリーターらの共感を得ているのでは」と識者。インターネットでも、過酷な低賃金職場の会社員の書き込みが注目され、今月、出版される。

 若者の街、東京・渋谷の書店。店頭の売れ筋棚に「蟹工船」が並ぶ。手に取った都内の大学生、岡本拓さん(19)は「昔、教科書で見た作品が売れていると聞き、読んでみようかなと」。
 都内で労組の街頭活動に参加していた勝間田翔さん(26)は、昨年読んだという。バイト先を解雇され、失業保険と貯金で食いつなぐ一方、解雇撤回を求めて労働審判中だ。「自分も、やられっぱなしで黙っているのは嫌だという気持ちはある」と話した。
 作品が再び脚光を浴びだしたのは今年2月ごろ。作者小林多喜二(1903-33)の没後75年の記事を見た都内の書店が、「ワーキング・プア(働く貧困層)?」の広告で売り出したのがきっかけだった。

■増刷30万部

 文庫版を出す新潮社によると、増刷は例年、年に5,000部程度だったが、今年はすでに30万部以上。購買層は20代が全体の約3割を占めるという。「地方にも広がり、書店からの発注は衰える気配がない」と同社。
 生活困窮の相談を受ける「自立生活サポートセンター・もやい」の湯浅誠事務局長は「企業の横暴がまかり通る現在の状況を重ね合わせ、『おれの働かされ方と一緒だ』と思って読んでいる人が多いのでは」とみる。

■ネットで吐露

 一方、ネットの世界では、4年前に掲示板から恋愛物語「電車男」が出版され話題になったが、最近は世相を反映し、若者たちが仕事の悩みを切実につづっている。
 今月下旬に刊行される「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」(新潮社)。「2ちゃんねる」上の書き込みに、「電車男」と同じ編集者が目を付け、出版にこぎつけた。
 主人公はニート生活を経て小さなIT企業に就職した26歳の男性プログラマー「マ男」。徹夜も当たり前のきつい勤務、横暴な上司への怒りや無理な納期を断れない下請けの悲哀を感じながらも、「頑張れよ」「おつかれ」などの書き込みに励まされ、奮闘する。
 「自ら変わり、成長していく様子は、リアルな『現代の蟹工船』。悩んでいる若い人に読んでほしい」と担当編集者。
 女子美術大の島村輝教授(プロレタリア文学)は「生活への不安が広がる中、今まで見えにくかった『貧困』を正面から語る言葉を、読み手も求めだしたということではないか」と話す。

 「蟹工船」 北洋でカニ漁と缶詰め作業に従事する乗員たちが、監督からの非人間的な扱いに怒り、闘争に立ち上がる物語。1929年に発表され、現在は新潮社や岩波書店などが文庫版を刊行、漫画版もある。作者の小林多喜二は33年、特高警察の拷問により殺された。

↓こっちは日刊ゲンダイの記事。実際にネットカフェに行って「フリーターらしき若者」に取材したあたりが、日刊ゲンダイらしい? (^_^;)

【話題の焦点】

ブームの主役「プレカリアート」の悲惨な現実 「蟹工船」バカ売れでわかった
[ゲンダイネット 2008年6月4日 掲載]

 時ならぬブーム。プロレタリア文学の代表作として知られる小林多喜二の「蟹工船」がバカ売れしている。約80年も前に書かれたこの作品がなぜ今、注目を集めているのか。ブームの主役は「プレカリアート」と呼ばれる若年労働者だ。
 「年に5000冊売れればいいほうだったのが、今年に入って都内を中心に売り上げが急増。4月、5月だけで18万7000部を増刷しました」(新潮文庫担当者)
 ブームのきっかけは、今年1月に毎日新聞に掲載された作家の高橋源一郎氏と雨宮処凛氏の対談だ。若者の貧困問題に取り組む雨宮氏が「『蟹工船』は今のフリーターと状況が似ている」と指摘。高橋氏も「ゼミの教え子に読ませたら共感していた」と意見が一致した。
 この対談を読んだ東京・上野の書店員が手書きのポップ(店頭広告)を作ってフリーターにアピールしたら飛ぶように売れ、他の書店にも波及していったという。

●バイトを休んだら生きていけない

 それにしても、活字離れが顕著な若者が本当に読んでいるのか。池袋と新宿のネットカフェ周辺で、フリーターらしき若者に「蟹工船」を読んだか聞いてみた。30人近くに声をかけた結果、「読んだ」と答えたのは2人。
 「話題になっているから読んでみた。共感したのは“末端の労働者の1人や2人が死んでも丸ビルの重役には関係がない”ってとこ。丸ビルって今でもあるからスゲーッて思った」(20代男性)
 うーん。それは作品に対する共感とはちょっと違うような……。
 マンガで読んだという30代男性はこう話す。
 「僕らが安い賃金で働いた分だけ、グッドウィルの折口とか上の人たちが大もうけする構図は蟹工船の時代と変わらない。40代、50代になってもこんな生活が続くかと思うと絶望的になってくる。正社員になりたい気持ちはある。でもバイトを休んだら生きていけないから採用面接を受ける時間がない」
 日雇いバイトで1日働いて5000?8000円。月収は13万円に届くかどうか。3日も仕事にあぶれると、ネットカフェの宿泊代にも困ってしまう。
 彼らのような日雇い労働者は「プレカリアート」と呼ばれる。「precario(不安定な)」と「プロレタリアート」を合わせた造語だ。内閣府の調査では今やフリーターの数は400万人以上。派遣や請負を含めた非正規雇用者は労働者全体の約3分の1にのぼる。
 もっとも、正社員といえどウカウカしていられない。経団連はこの期に及んで「ホワイトカラーエグゼンプション」を復活させようと画策しているし、「蟹工船」を読んで身につまされるサラリーマンは少なくないはず。プレカリアートの惨状は決して他人事ではないのだ。

《「蟹工船」のあらすじ》
 カムチャツカ沖で蟹をとり、船上で缶詰に加工する蟹工船「博光丸」。そこでは出稼ぎ労働者たちが「糞壷」と呼ばれる劣悪な環境におかれ、安い賃金で酷使されていた。監督は労働者を人間扱いせず、非道のかぎりを尽くす。
 過酷な労働と栄養失調で亡くなる者も。労働者たちは団結し、監督に立ち向かっていく。

コラム:天地人
[東奥日報 2008年6月8日]

 「おい地獄さ行(え)ぐんだで!」で、物語は始まる。カムチャツカ沖で操業していた蟹工船(かにこうせん)では、非人間的な労働を強いられていた。暴力によって、出稼ぎ労働者を支配する現場監督。暴力や過労で追い詰められた労働者がついに立ち上がる。
 小林多喜二の「蟹工船」の粗筋。1929(昭和4)年の作品で、多喜二はその4年後の33年に特高警察の拷問を受けて、獄死する。プロレタリア文学を代表する作品と言われるが、何せ戦前の、80年も前の作品である。それがなぜか今になって売れている。
 今年は多喜二の没後75年に当たり、各地で催しが行われた。マスコミにも取り上げられ、書店で文庫本を平積みにしたところ、火が付いた。毎年5,000部ほどだったのが、今年はすでに約24万部を増刷。漫画版の「蟹工船」の売れ行きも好調だ。
 働く人の3分の1が、派遣やパート、アルバイトなどの非正規雇用だ。年収200万円以下のワーキングプアと呼ばれる層は2割を超えている。働いても働いても生活が苦しい層が、戦前の過酷な労働条件を描いた作品に親近感を覚え、共感しているのだろうか。
 一方で戦前の状況と、何でもそろっている現代とは、比較できないとの指摘もある。「蟹工船」を買って読んでいるのは、20代から30代が多いようだ。「蟹工船」のラストは「そして、彼等は、立ち上がった。もう一度!」で終わっている。若い世代が本を読んで、何を考え、次にどんな行動に出るのか。見守っていきたい。

さらに、「日経新聞」夕刊1面のコラム「波音」でも、『蟹工船』にふれている。こちらは、三十数年前にベーリング海のスケソウダラ漁の船に乗り込んで取材したことのある記者さんの話。三十数年前でも、相当厳しい職場であったことは間違いない。

◇蟹工船
[日本経済新聞 2008年6月9日付夕刊]

 三十数年前、ベーリング海のスケソウダラ漁を取材した。何カ月も海の上で、楽しみは家族からの便り。北の海の厳しい労働に、ふと昭和初期の『蟹工船』を思った。
 すり身に加工する母船で働く人たちは、北海道や東北からの出稼ぎ農民だった。半年後、都心の工事現場で声をかけられた。「今度は陸の仕事だよ」。寂しそうな笑顔に疲れがたまっていた。
 ワーキングプアの若い人たちが最近、『蟹工船』を読んでいるという。プロレタリア、搾取などはとっくに死語、♪聞け万国の労働者も懐メロだが、働く者の現実はどれほど変わったのだろう。(修)

ちなみに「♪聞け万国の労働者」というのは、1922年につくられたメーデー歌のこと(メロディは一高寮歌)。

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