使用価値か、効用価値か(続き)

すでに書いたように、『哲学の貧困』での「使用価値」の使用例をもって、「使用価値」の初出とすることができるかどうかについては、もう少し検討が必要なようです。

以下、大月全集版『哲学の貧困』で「使用価値」となっているところを、第1章第1節の範囲で、フランス語と対照してみました(フランス語は旧メガ第6巻収録の『哲学の貧困』で確認)。

結論として分かったことは、邦訳では「使用価値」となっていても、フランス語では、何種類かの表現があること。
大きく言って、次のような用例がありました。

  • valeur d’utilité(「有用価値」「効用価値」)
  • valeur usuelle(「日用価値」「日常価値」)
  • valeur utile(「有益な価値」)
  • valeur en usage(「使用上の価値」)

以下、調べた結果です。

全集62ページ上段、見出し la valeur d’utilité
同ページ上段、プルードンからの引用 valeur d’utilité
同ページ下段、引用のあとのマルクスの文章 la valeur d’utilité
64ページ上段、5行目 la valeur usuelle
65ページ下段、11行目 la valeur d’utilité
同ページ下段、17行目(プルードンの引用) la valeur utile
66ページ上段、2行目(プルードンの引用) la valeur utile
同ページ上段、後ろから4行目(シスモンディからの引用) la valeur usuelle
同ページ下段、1行目 la valeur utile
同ページ下段、8行目(ローダデールの引用のあと) la valeur usuelle
同ページ下段、後ろから3行目(リカードウの引用) valeur utile
68ページ上段、2行目(プルードンの引用) la valeur utile
同ページ上段、11行目 la valerur utile
同ページ下段、8行目 la valerur utile
69ページ上段、後ろから6行目 la valerur utile
同、後ろから3行目 la valerur utile
69ページ下段、4行目 l’utilite (la valeur en usage, l’offre)※直訳すれば「効用(使用上の価値、供給)」
70ページ上段、2行目(プルードンの引用) la valerur utile
同、後ろから5行目 la valeur en usage
同ページ下段、8行目 valerur utile
71ページ下段、13行目(プルードンの引用) la valerur utile
72ページ下段、後ろから4行目(プルードンの引用) la valeur d’utilité
73ページ上段、後ろから8行目、同最終行 la valeur utile

ということで、プルードン自身が la valeur d’utilité と la valeur utile とを混ぜて使っており、シスモンディの用例なども含めて、マルクスはそれぞれの用例に従っているように見えます。その意味では、マルクス自身が自分の概念として特別な意味を込めて「使用価値」を使っているというようには見えません。

なおドイツ語版では、これらは区別なくGebrauchswertと訳されているようです(厳密に全部チェックしたわけではない)が、これは、マルクス没後の1885年になってエンゲルス監修でカウツキーが翻訳したのだから、すでに『資本論』で確立したカテゴリーに合わせたのは当然だと考えられます。

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