親水公園は住民運動の成果でもあった…

突然の増水で子どもたちが流された都賀川の親水公園は、実は、川を守る住民運動の成果でもあった。テレビのニュースには、この運動をすすめてきた男性が映っていたが、「30年やってきたことはなんだったのか」と呆然とされていた。

インターネットを探ってみると、今年4月の読売新聞の記事が出てきた。そこでは、「『死の川』再生絶好の教材」として紹介されている。

「死の川」再生絶好の教材<1>灘区・都賀川住民行政一体取り組み(読売新聞)

他方で、こんなブログの記事に行き当たった。

ナダタマ – [020810-132]都賀川がキレた日 – 2002 > 2002年8月 – naddistアーカイブス

2002年8月の記事だが、1時間17mmの雨で、突然増水したという。記事の文面だけからは、どれぐらいの増水だったかは不明だが、今回の事故と同じような突然の増水が過去にも起きていたことが分かる。

こうした情報がしっかりと共有されていれば、今回も雨が降り出した段階で河川敷から避難することができたかも知れないと思うと、残念でならない。

こちらが今年4月の読売新聞の記事。別に、読売新聞を非難するつもりはない。住民運動と行政が一体となって「死の川」を再生させた事例として評価されていたという事実が確認できればよいのだ。

「死の川」再生絶好の教材<1> 灘区・都賀川住民行政一体取り組み
[2008年4月30日 読売新聞]

 やわらかな春の日差しの下、澄んだ水がゆっくりと流れる。子どもたちがひざまでつかりながら、石を積んで造られた幅約2メートルの魚道をのぞき込む。「ちっこい魚おるな」「何ていう名前やろか」。そばの遊歩道から、散歩中の中年男性が「気いつけや」と声をかけた。
 川遊びに訪れた親子。父親が2人の男の子に「みんなが大切にしているから、水がこんなにきれいなんだよ」と教えた。子どもたちは川底にあった空き缶などのごみを拾い上げた。
 六甲山系を源流に神戸市灘区の街並みを縫って、大阪湾に注ぐ都賀(とが)川(総延長約2キロ)。「子どもたちが遊べる川に再生したい」。住民グループ「都賀川を守ろう会」事務局長の木村典正さん(64)の思いの原点は、幼い日々の記憶にある。
 戦前は、アユやウナギが遡上(そじょう)し、灘の酒造りを支える清流だった。しかし、高度経済成長期には、人々の生活が豊かになっていくことと引き換えに、生活排水でヘドロがたまり、悪臭を放つ〈死の川〉となった。「ウナギを捕まえたり、川岸の柳の木の下でお年寄りらが夕涼みをしたり、住民の憩いの場だった」。子どものころの思い出が頭に浮かび、「何とかしたい」と住民約30人と1976年、会をつくった。川のごみを拾い、生活排水を流さないよう住民に訴えて回った。
 それから5年。川は息を吹き返した。さらに県や市も動いた。83年から、自然石を使ってアユなどの魚がすめるよう魚道や親水公園を整備。川岸には、きれいな遊歩道が敷かれた。95年の阪神大震災では、川の水が食器洗いや洗濯にも利用された。
 「震災をきっかけに、『自分たちの川』『命の水』という思いが強まった」と言う木村さん。会員は2000人を超え、会が毎年開催する、稚アユの放流やウナギのつかみ取り大会などのイベントには、小学生ら3000人以上が集まるようになった。

 灘区内の4小学校は総合学習のテーマに都賀川を選ぶ。環境、郷土史など幅広い分野を学べるからだ。
 市立稗田小で昨年12月に開かれた「都賀川こどもフォーラム」。4小学校の約250人が「川の生態系」や「酒造りとのかかわり」、「改修の歴史」など30に及ぶ研究成果を発表した。
 「アユは上流の石に付着したコケを食べて成長する」「流れの緩やかな下流で産卵する」。子どもたちはお互いの報告を興味深そうに聞き入り、約100人の保護者らも真剣な表情に目を見張った。
 木村さんもフォーラムで、「水の汚れがひどく、アユの大群が上流に向かわず、河口にあふれ、新聞に載った」「工場排水の染料でアサリが赤や青に染まった」など、かつての川の歴史や会の活動を振り返った。
 「美しさを取り戻した都賀川は、地域で失われつつある生命の尊さや、自然の大切さなどを教えてくれる最高の教材」。無垢(むく)な子どもたちの瞳を見るたびに、そう思う。(池尻太一)

 自然保護や資源の再利用の動きが広がっている。その活動を地域でどのように伝えていくか。各地の教育現場での取り組みを追った。

こちらが、2002年8月のブログの記事。誤解のないようにあえて言っておけば、これについても、なぜもっと情報をアピールしなかったのだ、などと非難するつもりはまったくない。詳しい調査をしてみれば、同様の経験をしたという人はもっといるかも知れない。

[020810-132]都賀川がキレた日
投稿者: Nada 掲載日: 2002-8-10 (189 回閲覧)

(前略)

だいぶ日も暮れた頃、にわかに空が曇ってきました。
「お、降ってきたなあ…」
そして雷鳴。みるみる雨足が強くなり、我々はヤマカンの橋の下に
逃げ込みむことにしました。
雨はますます強くなり、川の流れはみるみる早くなっていきます。
この時の神戸は1時間に17mmの強い雨が降っていました。

その時…。
上流の方から「ゴォ――ッ」という音が聞こえたました。
その音がピンクフロイドのように近づいてきたかと思うと、

「シャワシャワシャワジャッバーン!!」

一瞬にして我々の足下に濁流が流れ込んできました。
川床に水があふれ、船越で買った鯨、レバ、葱間、いも、れんこん、
玉葱、ししとうは緑色の包み紙とともに一気に下流へと流れていき
ました。さすが船越の串カツや、船のように見事に流れていくなあ
…なんて悠長なことは考えている暇もありません。

「やばい!避難や!」
「上流に進むのは無理!下流の区民ホールの所まで行きましょう!」

すっかり暗くなった川床。三面張にこだましスーパーウーハーで腹
に響く水の轟音。かすかに響く上流の六甲川からの「ドーンドーン」
という恐ろしい波音。足元には濁流。そして容赦なく降り続く雨。
神戸の川は山から河口までの距離が短く、急なので一気に水が流れ
ます。深い河川の断面設計はそのためです。

「次の波が襲ってきたら…かなりヤバイ…」

すぐそこに見える灘署にも我々の叫びも届きません。
数年前の台風の朝、護国神社横からゴムボートによる都賀川下りを
決行し、灘署に網で救助され、お灸をすえられた無謀なクミンのこ
とを思い出しました。

水かさは次第に増え、場所によっては膝上あたりまで来つつありま
した。段差のあるところはナイアガラの滝のようになっています。

「もうちょっとで上がれるで!がんばれ!!」
必死で脱出を試みる我々に、区民ホールの川岸にいるおじさんの声
が掛かります。

なんとか区民ホール下の階段にたどりついた我々は上から下まで
ずぶ濡れ。
「・・・・・・・・・怖・・」
雨はいつの間に小降りになり、川の水も引きつつありました。
我々はおたがいの無事を確かめあい、帰途につきました。

(攻略)

公園の設置主体である神戸市に、こうした情報がしっかり集められていれば、もっと対策のとりようもあっただろう。

今回の事故で、兵庫県は警報システムを整備することにしたそうだが、河川が非常に短いことを考えれば、センサーで警報を出しても間に合わないことも十分あり得るだろう。突発的な事態ではなく、実は、よくあることだったかも知れないのだから、まずもってよく実態を調査してみることが必要ではないだろうか。

【追記】

さらに調べると、こんなページも出てきた。これは神戸市の市民の水辺連絡会のホームページに載せられたもので、同連絡会の会報「みずべ」第18号(1998年3月)からとされている。

そのなかの、「都賀川を守ろう会」の活動紹介の記事のなかに、次のように書かれている。

 昨年一年間を振り返り,特に印象に残っているのは「うなぎ・金魚・コイのつかみ取り大会」です。この行事は夏の恒例行事として毎年開いており,子どもたちに大変人気があります。行事は二日予定していたうち初日が雨で中止となったこともあり,二日目は曇り空にもかかわらず,たくさんの子どもたちが川に集まりました。川をせき止めて作った水遊び場に魚を放すと,子どもたちが夢中になって魚を追い求め,川中に子どもたちの歓声が溢れました。しかし暫くすると雨が降ってきました。楽しそうに川で遊ぶ子どもたちの姿を見ると,もう少し川の中で遊ばせてあげたいと思いましたが,過去の経験から子どもたちを早く川から上げないと危険と判断し,急いで子どもたちを川から上げました。なんとか全員無事に川から上がり終えたとき,上流からもの凄い勢いで水がごうごうと流れてきました。少しでも判断が遅ければ,大事故につながっていたのではと,改めて川の怖さを認識させられました。

これによると、1997年夏、「都賀川を守ろう会」が主催する「うなぎ・金魚・コイのつかみ取り大会」のときに、雨が降り出した後、しばらくするとやぱり「上流からものすごい勢いで水がごうごうと流れてきた」というのです。

今回の事故のあと、新聞では、「こんな増水は初めて」という話と、「地元では暴れ川だと知られていた」という話と、よく考えてみれば矛盾する情報が流れています。あらためて、本当にこれまでなかったような急激な増水だったのかどうか、しっかりとした調査をおこなってほしいと思います。また、「誰でも知っている」と思うような情報の方がかえって、実は、徹底されていない、というのはよくあること。あらためて、「雨が降り始めたら、急に増水する危険があるから、すぐに川から上がる」ということを徹底してほしいと思います。

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