軍事史としてみた『日清戦争』

原田敬一著『日清戦争』<戦争の日本史19>(吉川弘文館)
原田敬一著『日清戦争』<戦争の日本史19>(吉川弘文館)

吉川弘文館の「戦争の日本史」シリーズの第19巻、原田敬一『日清戦争』です。

著者の問題意識は、1つは、「日清戦争で日本は国際法を守った」という「神話」を検証すること。もう1つは、日清戦争の過程を可能な限り詳細に追いかけることによって、実は、日清戦争が、「7月23日戦争」、狭義の「日清戦争」、「台湾征服戦争」の3つの戦争から構成されていたことを明らかにすること。

「7月23日戦争」というのは、聞き慣れない言葉ですが、これは1894年7月23日の朝鮮王宮占拠事件のこと。この事件自体は、従来から知られてきたものですが、著者は、それは日清戦争展開過程の「エピソード」ではなく、「外国に駐屯している軍隊が、その国の王宮を襲い、守備隊と砲火を交え、占領する、というのは、事実上の戦争」だと主張します。

「台湾征服」についても、日清戦争の過程のなかで、伊藤首相らが、講和交渉の中でなんとしても台湾割譲をかちとるための既成事実づくりとして、講和交渉が事実上始まるというときに、強行したことが明らかにされています。

作戦展開過程が詳細にあとづけられていて、ちょっと読みにくいところもありますが、しかし、この段階ですでに、出先の部隊が目先の功をあせって全体の作戦とは無関係な作戦を展開するとか、兵站を無視ないしは軽視したまま作戦を強行するとか、その後の日本軍の“体質”とでもいうべきものが現われていることがよく分かります。

帯には、日清戦争が「日本『国民』をどう変えたのか?」と大書きされていますが、残念ながら、そうした社会史的側面は、十分展開されてはいません。著者の『国民軍の神話』(吉川弘文館、2001年)、『日清・日露戦争』(岩波新書、2007年)などを合わせて読まれることをお薦めします。

【書誌情報】
著者:原田敬一(はらだ・けいいち)/書名:戦争の日本史19 日清戦争/出版社:吉川弘文館/発行年月:2008年8月/定価:本体2,500円+税/ISBN978-4-642-06329-6

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