横浜方面うろうろ中に読んだ本(2)

小林英夫『〈満洲〉の歴史』(講談社現代新書)

横浜方面をうろうろしている間に読んだ本の2冊目は、「満鉄」研究でも次々と成果を上げている早稲田大学の小林英夫氏の新著。

小林氏は、多くの日本人が「満洲」について「大いなる錯覚」を抱いていたとして、次のような5つの時期区分にしたがって、「日本人の視点を意識した中国東北史」を描いています。

  1. 17世紀?19世紀末の日清戦争まで。清朝封禁の地であった時期の「満洲」の変化。
  2. 20世紀初頭の日露戦争?第1次世界大戦まで。辛亥革命、日本の21カ条要求、ロシア革命の影響などが含まれる。
  3. 第1次世界大戦終了?満洲事変まで。張作霖・張学良の東北支配と満鉄を中心とした日本側の係わり合い。
  4. 満洲事変?第2次世界大戦の終焉・日本帝国の解体まで。
  5. 戦後の東北復興と日本人の満洲記憶の問題

第4の時期が、章立てとしては第4章?第6章の3つの章に、第5の時期が第7章、第8章の2つの章になっており、本書の中心をなしているといえます。

第4章「『満州国』の時代」で、満洲事変からソ連の対日参戦、日本の敗戦までをあつかった後、第5章「『満州国』は何を目指したか」では、「満洲産業開発5カ年計画」と「満洲農業移民計画」が取り上げられ、第6章「満洲に生きた人たちの生活と文化」で、当時満洲に暮らしていた人たちの実相に触れています。

「満洲事変」もコミンテルンの陰謀だったなどという某幕僚長の妄言とは違って、「満洲事変」が日本軍の謀略によって起こされ、それをきっかけにして日本軍が満洲全域を占領したこと、「満洲国」の実態が日本軍の傀儡であったことなどが具体的に明らかにされています。「満洲」開拓移民についても、あらためて悲惨な実態が伝わってきます。

第7章、第8章はそれぞれ短い章ですが、「満洲」にたいする日本人の独特な「思い入れ」を考える上で、大事な章だと思います。とくに、引き上げ援護団体の問題や在外財産の保障問題(いずれも第7章)は、戦後日本の戦争認識にもかかわる問題だと思いました。また、引き揚げ者の手記・回想録の変化を取り上げた第8章も興味深いテーマです。

「満洲」というと、「満洲事変」、とりわけ柳条湖事件だけが取り上げられたり、あるいは、ソ連参戦や引き上げ問題だけがとりあげられたり、いずれにしても一面だけが取り上げられがちなだけに、満洲事変以前から敗戦後までを通して中国東北史をえがいた本書は、あらためて日本の中国侵略を考えるうえで大事な一冊になるのではないでしょうか。

【書誌情報】
著者:小林英夫/書名:〈満洲〉の歴史/出版社:講談社(現代新書1966)/出版:2008年11月/定価:本体760円+税/ISBN978-4-06-287966-8

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