労働組合の宣伝活動など条例で規制か?

東京都が議会に提出している「安全・安心まちづくり条例」改正案に、「大衆に多大な迷惑」になる行為にたいする規制を盛り込んでいる。

しかし、「大衆に多大な迷惑」とはいったい何? 労働組合が「派遣切り」に反対したり、正規雇用を求めて宣伝をやったりするのも「大衆に多大な迷惑」だと言えば禁止できるようになってしまう。そもそもこんな条例が必要なのか? (現在でも、公道上で周囲の迷惑になるかたちで、たちどまったり、座ったりするのは、軽犯罪法で取り締まり可能なのだ)

都条例案で波紋(朝日新聞)

この問題について、自由法曹団東京支部が発表した意見書「繁華街から自由が消える 安全・安心まちづくり条例『改正』案に反対する」はこちら↓。

自由法曹団 速報

都条例案で波紋

[asahi.com 2009年03月13日]

◆「繁華街で迷惑パフォーマンス慎め」都条例案で波紋

 都が今議会に提出している安全・安心まちづくり条例の改正案に、法曹界や労働団体から「表現の自由が侵害されかねない」との懸念の声が上がっている。条例に基づく指針と併せ、繁華街を訪れる人に「多大な迷惑となるパフォーマンス」などを慎むよう求めているからだ。都は「規制を課すものではない」としているが、関係者は影響を心配する。
(大塚晶)

 都は、昨年6月に秋葉原で、同7月に八王子で無差別殺傷事件が起きたことなどを理由に、同9月に「都安全・安心まちづくり有識者会議」(座長・小出治東京大教授)を設置して繁華街での安全対策を検討してきた。
 会議の報告書が先月出たのを受け、都としての「繁華街等における安全・安心の確保に関する考え方」をまとめた。「求められる取組」として、事業者は防犯カメラの設置や従業員への防犯教育など、地域住民は自主防犯パトロールへの積極参加などが挙げられた。このほか、来訪者が努める対策として「街頭や歩行者天国において大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為を慎む」などが挙がった。
 都はこの後、安全・安心まちづくり条例の改正案を提出。事業者や地域住民、来訪者らに対し、知事と公安委員会が定める指針に基づき、「繁華街等の安全・安心を確保するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする」と定めた。4月中につくる指針に「大衆に多大な迷惑となる……」の部分がほぼ同様の形で盛り込まれる予定だ。
 これに対し、都内を中心に団体交渉や街頭活動をしている労働組合・首都圏青年ユニオンの河添誠書記長は「『大衆に多大な迷惑』というのは極めて主観的」と反発する。繁華街での宣伝行動では、頭にかぶり物をして練り歩くこともある。商店街からは迷惑だからやめろと言われることも多い。「表現の自由が封じられかねない。多くの人に知らせるためにこそ繁華街でいろんなパフォーマンスをするのに、少数派が声を上げられなくなる」と話す。
 自由法曹団東京支部も今月3日に発表した反対の意見書で、「街の秩序を乱す行為を慎むとなっているが、誰が判断するのか。基準は全く不明確。努力義務といっても法的義務に変わりない」などと指摘。同支部の事務局長、大崎潤一弁護士は「条例に基づいた指針となれば、罰則がないといっても萎縮(いしゅく)効果は大きい。秋葉原の事件とはまったく関係ないのに」と言う。
 都安全・安心まちづくり課は「『努めてください』と言っているだけで、権利の制限ではない。指針は都民に参考にお示ししているもの。この条例をたてに警察が直接規制するようなことはない。昨春、秋葉原の歩行者天国で女性が下着を見せるパフォーマンスがあった。こういう人もいるため来訪者も考えてほしいという趣旨」と説明する。
 条例改正案は可決されれば4月1日に施行される。

条例案では、「繁華街」の「事業者等」(この中には、土地の所有者や商店主、地域住民だけでなく「ボランティア」や「来訪者」も含まれるという)は「指針」に基づいて「繁華街等の安全・安心を確保するために必要な措置を講ずる」としている。

で、その「指針」は、「知事及び公安委員会」が決めることになっている(第18条の3)。

その「指針」の方向を示す「繁華街等における安全・安心の確保に関する考え方」(2009年2月9日発表)では、「活動計画」の内容を次のように示している。

(2)活動計画には、繁華街等の地域特性に応じて、次のような事項を規定するものとする。

  1. 自主防犯パトロールの実施及び必要な資器材の整備に関すること。
  2. 安全・安心な繁華街等の形成に資する研修会その他のイベントの企画及び開催に関すること。
  3. 犯罪の防止に配慮した環境整備に関すること。
  4. ゴミ・タバコのポイ捨て、歩行喫煙の禁止等ルールやマナーの遵守に係わる啓発活動に関すること。
  5. 放置自転車・自動二輪車や違法看板の撤去、路上清掃、落書き消去等の環境美化活動に関すること。
  6. 街頭や歩行者天国において大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為の防止に係わる啓発活動に関すること。
  7. 外国人の不法就労防止に係わる啓発活動に関すること。
  8. 人に不安感や嫌悪感を抱かせるような客引き行為や客待ち行為等の自粛に係わる啓発活動に関すること。
  9. みかじめ料の不払い運動、暴力団追放キャンペーン等環境浄化に係わる啓発活動に関すること。
  10. 事件・事故発生時における対応マニュアルの作成及び訓練並びに必要な装置、器具に関すること。

問題は、この「カ」。街頭や歩行者天国での「大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為の防止」だ。都は、たとえば秋葉原で下着を露出するなどのパフォーマンスを防止するだけだといっているが、それはあくまで1つの例示にすぎない。基本は「大衆に多大な迷惑」となって「街の秩序を乱す行為」なら、何でも防止の対象になる、ということだ。

で、この「指針」や「条例」にもとづいて、○○商店街の「協議会」で「署名行動やビラまき、ハンドマイクを使った宣伝などは『迷惑』になるので行なわないようにしよう」と申し合わせたとしよう。そこに、そんなことまったく知らない労働組合がやってきて宣伝をしたとする。すると、「協議会」の「ボランティア」の人がやってきて、「ここは、宣伝行動はやらないことになっている」と通告する。それでも、宣伝を続けていると、警察がやってきて、「安全・安心条例に違反している」と言って、中止を求め、それに抗議すると「公務執行妨害」だということにならないともかぎらない。

問題は、地元の関係者と警察などだけで、勝手に「ここは繁華街」「ここでは、○○は禁止しよう」と決めてしまえば、それがそのまままかり通るようになることだ。いままで、商店街などが「自粛」を申し合わせても、それは商店街の構成者にしか効力をもたなかったが、この「条例案」が通ると、そうした「申し合わせ」に「条例」としての裏づけが与えられ、強制力を持つようになってしまう。

憲法第21条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めている。「条例案」は直接これを否定するものではないが、しかし、警察や行政、公安委員会と一部の住民だけで、こっそりとその制限を行なえるようにするもので、あっちの繁華街でも、こっちの商店街でも、宣伝行動が禁止されていけば、結果的に、表現の自由が制限されてしまうことになる。労働組合の場合には、さらに第28条で「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と、その権利を保障されているが、宣伝活動の自由、世論に訴える自由が規制されてしまえば、企業の中だけで交渉せざるを得なくなり、そうすれば圧倒的に資本、企業の側が優位に立つことになることは明白だろう。

「条例」によって、憲法上の権利に制限を加えるということ自体は、考え方として逆立ちしている。

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