「ミサイルだ」と言ってはみても…

政府が北朝鮮の飛ばしたものは「ミサイル」であるとする立場を表明。

しかし、河村官房長官が記者会見して説明した理由は、次の2つ。

  1. 人工衛星が軌道を周回しているとは思わない。
  2. 国会決議が「ミサイル」だと言っている。

しかし、「人工衛星が軌道を周回しているとは思わない」というのは、それだけでは「人工衛星ではなくミサイルである」と断定する理由とするのにはちょいと欠ける。人工衛星の打ち上げに失敗したかも知れないからだ。そして、国会決議についていえば、前回指摘したとおり、国会決議そのものには「ミサイル」と断定できる根拠は何も示されていない。

ということで、結局、河村官房長官が説明した限りでは、「人工衛星ではなくミサイルである」と断定したことを裏づける根拠は、何も示されていない、ということになる。これでは、国際社会にたいして説得力を持たない。それで外交がうまくすすむのか、もう少し冷静に考える必要があるのではないだろうか。

北の飛翔体は「ミサイル」…政府が表現替える(読売新聞)

北の飛翔体は「ミサイル」…政府が表現替える

[2009年4月10日12時15分 読売新聞]

 政府は10日、北朝鮮が「人工衛星」と主張して発射した弾道ミサイルの呼称を、従来の「飛翔体」から「ミサイル」に改めた。河村官房長官は同日の閣議後の記者会見で「ミサイルと呼ぶことにした」と明言。河村氏が発表した対北朝鮮制裁の延長理由などを説明する文書「我が国の対北朝鮮措置について」でも、「(北朝鮮による)ミサイルの発射」との表現を用いた。
 「ミサイル」とした理由について、河村長官は「北朝鮮の人工衛星が軌道を周回しているという認識には立っていない。今回の発射の本質が(弾道ミサイル関連計画の停止を求めた)国連安全保障理事会決議に違反するのは明白だ。衆参(両院)の決議もいただいているので、政府として『北朝鮮のミサイル発射』という表現にした」と説明した。
 ただ、長官は「事実関係をさらに明らかにするには飛翔行動、時間、速度などの詳細な分析が必要だ」と述べ、最終的な確認には時間を要するとの立場を強調した。

ところで、こんな記事↓が流れているが、こちらの方が現実的な見方ではないか。

特集ワイド:北朝鮮「ミサイル発射」 もっとクールでもよかった?(毎日新聞)

◇声高「迎撃」ポーズ、外交上は逆効果

[毎日新聞 2009年4月10日夕刊 東京]

スタンフォード日本センター所長、アンドリュー・ホルバートさん

 日本政府の対応は、洗練されていたとは言えません。感情的に「迎撃、迎撃」とこぶしを振り上げ、たった一人で歌舞伎の決めポーズを取っているかのようでした。北朝鮮に圧力をかけているつもりだったのでしょうが、逆に国際社会で四面楚歌(そか)になる可能性さえあるのです。
 小泉純一郎首相(当時)が02年、平壌に行って金正日総書記と会いました。国交正常化交渉の機運が生まれたわけです。ところが拉致の問題に焦点が当たり、世論が憤りました。一部の政治家が反北朝鮮政策を声高に唱え始め、双方の関係は冷却化してしまいました。
 北朝鮮は悪で、日本は善の単純な構図ができた。ナショナリズムをあおるのに北朝鮮は「便利な敵」なわけですね。政治家は勇ましい姿を見せることが国民感情に応えることだという短絡的思考に陥りました。その延長の表れが、今回のミサイル騒動の「茶番劇」でしょう。
 しかし、敵視するだけの外交で、日本に成果はあったでしょうか。日本政府は圧力に固執していました。今回もミサイル発射を受け、日本は国連安保理で北朝鮮非難の決議を主張しています。けれども日本が突出すればするほど、金総書記は5カ国の歩調を乱してくれると喜ぶでしょう
 中国やロシアの声も聞きながら、6カ国協議に参加する5カ国が協調態勢を徹底し、北朝鮮を完全に包囲することです。北の指導部は、それを最も懸念しているはずです。
 国際社会では、核の脅威を取り除くという目的に、拉致という「国内事情」を優先させる日本の考え方は通じません。感情的な外交姿勢は短期的には国内での支持を広げられるでしょうが、今、政府に求められるのは北朝鮮をテーブルに着かせて5対1の構図を作ることです。これこそが、拉致の解決を含めた長期的な国益なのだというビジョンを国民に誠意を持って示すべきなのです。

日本「孤立」の指摘は、可能性ではすまなくなっている。

米、議長声明素案を提示=対北交渉に決着の流れ?決議要求の日本は孤立・安保理(時事通信)

米、議長声明素案を提示=対北交渉に決着の流れ?決議要求の日本は孤立・安保理

[時事通信 2009/04/10-13:59]

 【ニューヨーク9日時事】北朝鮮の弾道ミサイル発射をめぐる国連安保理での交渉で、米国などは9日、新たな対北決議ではなく、報道機関向け声明が適切とする中国の主張を取り込む形で、同声明と決議の中間に当たる議長声明の素案を提示した。米国は決議を求める日本と共同歩調を取ってきたが、交渉妥結のため土壇場で日本と距離を置く姿勢を鮮明にした。
 日米英仏と中ロの6カ国はこの日、3日ぶりに大使級会合を開催。ライス米国連大使はこれに先立ち、張業遂・中国大使と会談しており、中国側との綿密な協議を経た上で素案を提示したもようだ。英仏も提案国の一角で、交渉の流れは議長声明で決着の方向に大きく傾いた。日本は6カ国の中で孤立した。
 素案は、北朝鮮の発射を非難し、2006年に安保理が採択した対北非難・制裁決議を再確認する内容とみられる。付属文書の形で新決議に盛り込むことを目指していた対北禁輸の対象品目追加や資産凍結の対象団体拡大については、既存の安保理制裁委員会にリスト作成を要請するとしたもようだ。 
 日本はこれまで、新決議で発射はミサイル関連活動の停止を求めた06年の決議違反だと認定することを最重視。中国の賛同を得るため、北朝鮮非難の表現を和らげるなど試行錯誤を繰り返してきた。しかし、中国は議長声明であれば受け入れ可能だが、決議は認められないとの姿勢を崩さず、交渉は暗礁に乗り上げていた。
 このため米国は、事態打開に向け日本に議長声明容認を打診。日本が従来の立場を捨てなかったため、妥協策として議長声明の素案取りまとめを主導した。
 高須幸雄大使と張大使は9日の大使級会合終了後、個別会談を実施した。張大使は日本に米国案受け入れを迫ったとみられるが、高須大使は会談後記者団に「日本としての立場は依然として同じだ」と表明し、妥協を否定した。(了)

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