足利事件・菅谷さん釈放で思ったこと

足利事件で菅家利和さんが釈放された。再鑑定でDNAの不一致が明らかになったからだが、あらためて捜査や裁判のあり方について考えさせられた。

世間では、今回の再鑑定・釈放で、DNA鑑定の「精度」が問題だったかのように受け止められているが、問題はもっと根深いような気がする。

突然「釈放」の知らせ、菅家さんの弁護士も驚く(読売新聞) – Yahooニュース

実は、菅谷氏は、1991年12月に足利事件(90年)で逮捕されたあと、79年と84年に起きた2件の幼児殺害事件の容疑者として再逮捕(91年12月)・送検(92年2月)されている(「読売新聞」2009年6月5日付朝刊14版、39面)。いずれも、菅谷さんが足利事件の一審で否認に転じたあとに不起訴処分となったが、警察が、菅谷さんに未解決だった幼児殺害事件をすべておっかぶせようとしていた可能性がある。

DNA鑑定を唯一の物証としてまず“犯人ありき”で、あとはそれにあわせて、それを裏づける捜査が進められたのではないか。自白への誘導や暴行などがあったかなかったかも重大な問題だが、「地道な捜査の積み重ね」といいつつ、結果的には、まったく見当違いの方向に捜査をミスリードした当時の捜査の進め方、捜査手法そのものが再検証されなければならない。

また、裁判所の判断についても検証が必要だ。とくに2000年の最高裁での判断が適切なものだったかどうか。「DNA鑑定は科学的だ」「DNAが一致したのだから犯人にちがいない」という思い込みが裁判官になかったかどうか。かりにDNAの解析が科学的だとしても、DNA判定の結果を解釈する裁判官は、ずぶの素人だ。最高裁は、直接には証拠調べをしないから、やむをえなかったというのは怠慢だろう。

DNA鑑定の精度について、当時は1000人に1人程度だったが現在は4兆人に1人だと言われるが、これは統計的な推計であって、当たり前のことだが、実際に4兆人のDNAを調べたわけではない。また、今回の釈放にあたっては、弁護人と検察と双方がそれぞれDNAを再鑑定したのだが、検察側は、弁護人側のDNA鑑定には疑義ありとしている。しかし、そのことが示しているのは、DNA鑑定結果は鑑定のやり方によって結果が左右されるものだ、という事実。DNAの解析結果そのものは4兆分の1の確度で正確だったとしても、作業手続きに瑕疵があれば鑑定結果の確度は変わってしまう。それを評価せずに、DNA鑑定結果だけが独り歩きをしたとすれば、かえって恐ろしいことになりかねない。

メディアも、当時の自分たちの報道に誤りはなかったか、DNA鑑定がほぼ一致したという警察発表から菅谷さんが犯人であることを前提にした報道に傾かなかったか、ぜひ検証してほしい。

それにしても、菅谷さんの無罪を信じて支援してきた佐藤弁護士。この裁判のために、1000万円の費用を自己負担したという。93年の面会で無実を確信して支援してきたそうだが、こうした熱血弁護士がいなければDNA再鑑定も実現しなかったかも知れない。

突然「釈放」の知らせ、菅家さんの弁護士も驚く

[6月4日23時44分配信 読売新聞]

 「足利事件」で無期懲役が確定した菅家(菅谷)利和受刑者(62)が釈放された4日、控訴審から弁護人を務めてきた佐藤弁護士が菅家さんの釈放を知ったのは、この日午前10時。東京高検からの電話だった。 「今まで求めてきたことが現実になったが、あまりに突然で驚いている」。佐藤弁護士はそう語った後、「再審開始の後に釈放があると思っていた。検察官の勇気、英断に感謝したい」と声を弾ませた。
 1993年秋に弁護人を引き受けてから、これまで100回近く接見を重ねた。女児の遺体が見つかった栃木県足利市内の河川敷にも何度も足を運んだ。自己負担した裁判の費用は約1000万円に上る。会見中、話の途中で感極まり、「こんなにうれしいことはない」と、目に涙を浮かべて言葉に詰まる場面もあった。

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  1. ■「一卵性双生児以外は分かる」 足利事件で有名になったDNA鑑定のすごい中身―過信すれば同じことの繰り返しに?
    こんにちは。足利事件は、考えさせられることが多くあったと思います。特に科学技術への妄信は、とんでもないことになるという格好の事例となったと思います。人間が行うことには、どんなことでも誤りがあるものですが、日本では、未だに誤りがあってはならないという考えでいろいろなシステムが組まれているいるような気がします。特に、年金の事務処理や、情報の取り扱いなどにそういった面が見受けられます。今後こういった考え方は改めていくべきと思います。詳細は、是非私のブログをご覧になってください。

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