たたかいで働くルールをつくる

『前衛』2009年7月号

共産党の発行する『前衛』7月号の特集「たたかいで働くルールをつくる」はよくまとまっていて、なかなか読み応えがありました。

とくに、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)の生熊茂実・委員長へのインタビューと、おおさか派遣・請負センター所長をされている村田浩治・弁護士の論文は、最前線の現場でたたかっている人だけに、とても迫力があって、一気に読んでしまいました。

これは僕の不勉強ですが、生熊氏のインタビューを読んで、JMIUというのが「個人加盟の産業別単一労働組合」だということを初めて知りました。だからこそ、早くから非正規労働者の組織化に取り組んできたんですね。

個人加盟の労働組合というのは、いろいろありますが、JMIUはホンモノの産業別労働組合に成長しようと、個々の企業との交渉も「産別団交」として位置づけ、この産業分野で働く労働者の最低の労働条件を示して、それにもとづいて個々の企業との関係でも労働条件を定めるようにしている。だから、派遣労働者など非正規労働者の要求も含めて取り上げることができる――そこに、JMIUのエネルギーがあると感じました。

また、このインタビューの中で生熊氏は、JMIUのなかでも、正社員の中に「非正規労働者の賃金が上がったら、自分たちのボーナスが減るのではないか」など、非正規労働者を自分たちの「安全弁」とみるような意識があったと、率直に認めています。しかし、労働組合として「結果を恐れず精いっぱいたたかおう」と、非正規労働者の権利が弱い中で、どんな成果が得られるか分からないけれども、ともかくがんばろうという方針をかかげて、取り組んできたというのです。

こういう中で、滋賀のメタルアートという会社では、JMIUの要求にたいし、企業が派遣会社にたいして「これは派遣労働者の賃上げをするためのもの」という条件をつけて派遣契約の引き上げをおこなう、という成果もかちとっています。こういう実際のたたかいを通じて、正規・非正規の連帯がかちとられてゆくんですね。

村田氏は、松下プラズマディスプレイ(現、パナソニックプラズマディスプレイ)の偽装請負労働者のたたかいから始まって、そういうたたかいに励まされながら、次々に非正規労働者が相談に訪れ、たたかいに立ち上がっている様子を紹介しています。

「神は細部に宿る」ではありませんが、「派遣切り」や雇用・失業の問題というのは、失業率が何%だとか、「派遣切り」の総数が何万人になる、という統計数字では表わし尽くせない、一人ひとりの労働者の身の上に起こった、具体的で生々しく、彼らの人間的尊厳にかかわる事態なのだ、ということをあらためて痛感しました。

特集の論文は以下のとおり。

  • 水戸正男「雇用破壊打破の新たな到達と日本共産党の役割」
  • 生熊茂実「たたかってこそ“使い捨て雇用”を打破できる」
  • 村田浩治「違法派遣・偽装請負とのたたかいの先にある派遣法抜本改正」
  • 筒井晴彦「派遣労働の国際ルールは労働者保護」
  • 平井浩一「規制緩和を熱望、推進した財界の身勝手」
  • 新田直哉「高まる雇用保険制度改善の重要性」
  • 牧野富男「搾って捨てる雇用破壊すすめた財界戦略」

筒井論文は、ILO(国際労働機関)を中心とした国際的なルールを紹介したもの。とくに、ILO181号条約の核心部分は労働者保護にあることを詳しく明らかにしていますが、これは、日本政府が、同条約の批准を1999年に派遣労働を原則自由化した理由にしているだけに重要な問題です。181号条約には、特定の労働者と特定の部門への派遣労働を禁止(2条4項a)したり、条約の適用除外(2条4項b)することも認めています。製造業への派遣を禁止することは、なんら同条約には違反しないのです。

さらに、筒井氏は、日本政府がILOの場で労働者保護規定にことごとく反対、不支持の態度をくり返してきたことを紹介していますが、ILOの場では労働者保護に反対しながら、国内ではILO条約を口実にして労働者保護の撤廃・規制緩和をやるなんてほんとに許せない!!

新田論文は、現在の雇用保険制度にどういう問題があるのかをわかりやすく解説しています。

これまた僕の不勉強ですが、むかしは確か「失業保険」と言っていたはずだけれど、いつから「雇用保険」と呼ぶようになったのか、ということも、この論文を読んで初めて知りました。1974年の法改正で、「失業中の生活保障」という目的に「再就職の促進」が加えられ、それがその後の給付削減の口実とされてきたこと、その根底には「失業手当を充実させれば労働者はまともに働かなくなる」という「怠惰」論があること、などなど。

しかし世界の趨勢は、雇用保険の受給終了後も再就職できない長期失業者や、そもそも加入期間ゼロの新卒未就職者などを対象として、無拠出の失業扶助制度が当たり前になっています。日本では、完全失業者のうち失業手当を受けとっているのは4分の1程度しかありません。3月末でクビを切られた非正規労働者の失業手当は、この6月で打ち切りになります。日本でも失業扶助制度の実現は急務です。

ということで、興味のある方はぜひご一読を。『前衛』は一般書店でも注文して取り寄せてもらうことが可能です。定価710円(税込み)

同誌のホームページはこちら↓。
「前衛」2009年7月号

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