米軍が身柄引き渡しを申し出ているのに…

沖縄で起きたひき逃げ事件。米軍側が、事故を起こした乗用車を所有する米兵の身柄を拘束。

ところが、官房長官が、「起訴前身柄引き渡しの事案には当たらず」と発言。米軍側が「要請があれば身柄を引き渡す用意がある」と表明しているのに、いったいなぜ?

沖縄のひき逃げ事件、2等軍曹の身柄を米軍拘束 : 読売新聞
トリイ司令官、所属軍人の車両運転認める 読谷村のひき逃げ : 琉球新報
起訴前引き渡しの対象に入らず=沖縄ひき逃げ事件で官房長官 : 時事通信

沖縄のひき逃げ事件、2等軍曹の身柄を米軍拘束

[2009年11月10日 読売新聞]

 沖縄県読谷村楚辺でのひき逃げ死亡事件で、在沖縄米軍は10日、県警が押収した乗用車を所有する在沖縄米陸軍の2等軍曹(20歳代)が関与した疑いが強まったとして身柄を拘束した。
 これを受け、県警は同日、基地外の同村長浜にある2等軍曹のマンションを、道交法違反(ひき逃げ)と自動車運転過失致死容疑で家宅捜索した。県警は米軍側に捜査協力を求め、2等軍曹から直接、任意で事情を聞く方針。
 2等軍曹の乗用車は7日、事件現場から約5キロの同県嘉手納町の自動車修理工場にフロントガラスが割れ、毛髪が付着した状態で修理に出され、県警が押収。在沖縄米軍は9日から基地内で2等軍曹に任意で事情を聞いていた。米軍は10日朝から、2等軍曹が勤める米陸軍トリイ通信施設(読谷村)を捜索している。
 県警によると、ひき逃げされたのは同村の外間政和さん(66)。7日夕、道路沿いの雑木林で頭から血を流して倒れているのを通行人が見つけた。死因は頸椎骨折で、ほかにも数か所を骨折していた。
 また、在沖縄米陸軍のジェームス・ウッダード司令官が10日午前、読谷村役場に安田慶造村長を訪ね、「運転していた陸軍兵を拘束した。日本側から(起訴前の)身柄引き渡しの正式な要請があれば、最大限努力したい」と説明した。安田村長は「早期の引き渡しを強く求める」と述べた。

トリイ司令官、所属軍人の車両運転認める 読谷村のひき逃げ

[琉球新報 2009年11月10日]

 【読谷】読谷村で7日に発生したYナンバー車によるとみられるひき逃げ事件について、米陸軍トリイ通信施設司令官のジェームス・ウッダード大佐は10日午前、読谷村役場を訪れ、同基地所属の軍人が事故車を運転し、修理工場に車両を持ち込んだことを認めた。同基地は軍人の身柄を容疑者として拘束している。ただ、実際にひき逃げした事実については捜査中として、氏名を公表しなかった。
 ウッダード大佐は安田慶造村長に対し、「今回の事件について大変遺憾思う。村民、遺族に対して、残念に思う」と謝罪。その上で、県警が容疑者の身柄を要求した際には前向きに対応したいと説明した。さらに、ウッダード大佐は車の所有者は現在、県外にいることも明らかにした。【琉球新報電子版】

起訴前引き渡しの対象に入らず=沖縄ひき逃げ事件で官房長官

[時事通信 2009/11/10-12:57]

 平野博文官房長官は10日午前の記者会見で、沖縄県読谷村で発生した米軍関係者によるとみられるひき逃げ事件について、「(容疑者の身柄)引き渡しの概念には入ってこない気はしている」と述べ、殺人などの凶悪犯罪に限り米兵容疑者の起訴前引き渡しを可能とした日米両政府の合意は適用されないとの認識を示した。

この手の米兵関与の交通事故。実は沖縄では日常茶飯事で、沖縄の人たちは何度も悔しい思いをしてきています。だから、まっとうな政府なら、かりに地位協定の取り決めの対象になっていなくても、身柄引き渡しを求めて当然。それが、米軍側が「身柄を引き渡しても言い」と言っているのに、「身柄引き渡しの事案には入らない」と表明するのだから、平野官房長官の認識には呆れてしまいます。

さすがに、その後は政府も、身柄引き渡しを求める方向で対応しているようですが。

沖縄ひき逃げ:鳩山首相、米側に起訴前引き渡し要求へ : 毎日新聞

沖縄ひき逃げ:鳩山首相、米側に起訴前引き渡し要求へ

[毎日新聞 2009年11月10日 22時19分]

 鳩山由紀夫首相は10日夕、首相官邸で記者団に、沖縄県読谷村で男性がひき逃げされ死亡した事件で米軍が身柄を拘束した米兵について「起訴前であっても早く引き渡してもらい、問題解決に努力してもらいたい」と述べ、日米地位協定に明記されていない起訴前の身柄引き渡しを米側に求める考えを示した。
 これに関連し岡田克也外相は10日、官邸でルース駐日米大使と会い、捜査への協力を要請、ルース氏は「全面的に協力する」と応じた。在沖縄米陸軍のジェームズ・ウッダード司令官は同日、安田慶造・読谷村長に「日本側の要請があれば身柄引き渡しに最大限努力する」と伝えた。
 日米地位協定は、容疑者となった米兵の日本側への身柄引き渡し時期を原則「起訴後」と規定しているが、95年の沖縄少女暴行事件を機に、殺人、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪に限って起訴前の身柄引き渡し要請に米側が「好意的配慮」を払うとの運用改善で合意した。

と思ったら、実は、午後の国会で、鳩山首相自身が、起訴前の身柄引き渡しは求めない、と答弁していました。この記事は、時事通信のホームページではすでに削除されていますが、gooのビジネスEXに残っていました。

起訴前引き渡し求めず=沖縄ひき逃げ「地位協定で対応」−鳩山首相 : gooビジネスEX

起訴前引き渡し求めず=沖縄ひき逃げ「地位協定で対応」−鳩山首相

[時事通信 11月10日(火) 16:03:33]

 鳩山由紀夫首相は10日午後の参院予算委員会で、沖縄県読谷村で発生した死亡ひき逃げ事件で米側が陸軍兵を拘束したことに関し、「今の日米地位協定の下で事が順調に進むように努力したい」と述べ、殺人などの凶悪犯罪に限るとした日米両政府の合意を踏まえ、陸軍兵の起訴前の身柄引き渡しは求めない考えを示した。社民党の山内徳信氏への答弁。 

だから、先ほどの官房長官の答弁は、決して平野官房長官個人の認識ではなく、その時点では明らかに政府の共通認識、方針だったということ、そして、首相の午後の国会答弁以後、夜の記者会見までのあいだのどこかで、政府が方針を変更した、ということになります。

ちなみに、岡田外相が駐日大使と官邸で会って協力を要請したというのですが、問題は要請の中味。方針変更前の政府の態度は、起訴されれば身柄を引き渡すという地位協定に沿って対処するというもので、岡田外相が駐日大使に要請したというのは、この起訴後の身柄引き渡しへの協力要請だった可能性が大です。

【追記】
今日の新聞の首相動静欄によれば、10日午後0時37分から、鳩山首相が岡田外相とルース駐日米大使と会っているので、駐日大使への要請はこのとき行なわれたものだと考えられます。したがって、この段階では、「逮捕前の身柄引き渡しは求めない」というのが政府の方針。その前提の下で、起訴、起訴後の身柄引き渡しにむけて協力を要請した、ということになります。

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