『平家物語』の世界に歴史学者が迫る!!

高橋昌明『平家の群像』(岩波新書、2009年)

高橋昌明著『平家の群像――物語から史実へ』(岩波新書、2009年10月刊)

『平家物語』の世界に、ずばり歴史学者が迫る!! といった感じの本です。

平家の起こりから取り上げられていますが、話の大部分は、清盛が内大臣、太政大臣となり、さらに太政大臣をやめて出家したあとあたりから。いわば、栄華を極めた平家が少しずつ没落していくところが、清盛の孫・維盛(これもり)と、清盛五男・重衡(しげひら)を中心に描かれています。

しかも、歴史学者である著者が、『平家物語』を、伝来を含め、丁寧に読み込んで、文学の、虚構の世界を切り分けて、史実に迫っているところが、本書の一番の読みどころです。歴史学の分野では、石母田正氏の名著『平家物語』(岩波新書、1957年)があって、僕も強烈な印象を持ちましたが、本書は、それに負けず劣らず、大変魅力的な「平家物語」の世界が明かされていると思います。

はたして著者の提起するような、「六波羅幕府」ということが言いうるのかどうかは、私には分かりませんが、しかし、平家を時代遅れの貴族政治のもとでの成り上がり、源氏を武家政権という新時代を切り開いた英雄という、旧来型のイメージが崩れることだけは間違いありません。

それは、やはり、あの時代の大きな社会経済的な変化が、武士が台頭してくる歴史的な背景として、しっかり押さえられているからだろうと思います。その上に、同時代的な史料を読み込んで、『平家物語』で慣れ親しんできた「虚構」の部分をえぐり出すやり方は、本当に見事。石母田氏が明らかにした知盛(とももり)の姿が、『平家物語』の造形であったというのは、ちょっとショックでしたが。(^_^;)

高橋昌明氏の研究は、これまであまり追いかけていませんでしたが、あらためて、勉強してみたいと思います。

【書誌情報】
著者:高橋昌明(たかはし・まさあき、神戸大学名誉教授)/書名:平家の群像――物語から史実へ/出版社:岩波書店(岩波新書・新赤版1212)/発行:2009年10月/定価:本体740円+税/ISBN 978-4-00-431212-3

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