「中流」が消えてしまっては、日本経済の底が抜けるのも当たり前

中流以上の世帯数が減っている(「日本経済新聞」2010年5月10日付)賃金カーブは緩やかに(「日本経済新聞」2010年5月10日付)

昨日(5月10日)付の「日本経済新聞」に載っていたグラフ。左は所得階層別の世帯数の変化(2000年=100とした指数)で、右は男性の年齢別賃金水準(いわゆる「賃金カーブ」)が1985年、2000年と比べてどう変化したかを表わしたものです。

まず1つめのグラフをみて驚くのは、次の点です。

  • 2000年との比較でいうと、増えているのは年収200〜300万円の世帯のみで、650万円以上の階層はすべて減少している。
  • そのなかでも、2005年を境に、1500万円以上の世帯が増加したのにたいして、それ以外の「中流」層、とくに800〜900万円の世帯が連続減少していること。

2つめのグラフでは、年俸制とか「成果主義」賃金とかの導入で、いわゆる「年功序列型賃金」が解体されて、結果として、賃金カーブはかなりフラットになってしまったこと。記事によると、1985年には、25〜29歳を100として50〜54歳で222と、2倍以上の伸びだったのにたいして、2009年は50〜54歳183にしか伸びなくなっています。

その分、25〜29歳の男性賃金水準が実額でアップしていればいいのですが、それほど伸びていないのではないでしょうか。結果としては、全体として賃金が落ち込んだだけ……、ということになります。

記事では、どうして「中流」が地盤沈下したのか、その理由を「デフレ」に求めていますが、実際には、これらは小泉「構造改革」の結果。「改革なくして成長なし」と言われたけれども、実際には、「構造改革」によって、日本経済を支えてきた「中流」が減少し、日本経済は泥沼にはまり込んでしまった、ということではないでしょうか。

【エコノフォーカス】

しぼむ「中流」消費に影 年収650万円以上の世帯が減少

[日本経済新聞 2010年5月10日付朝刊]

 「中流層」の地盤沈下が進んでいる。日本経済の長期低迷が響き、賃金の下落が続いているためだ。
総務省の家計調査をもとに試算したところ、2000年から09年までに年収650万円以上の世帯(家計調査ベースの全世帯の半分)が減っていることがわかった。05年以降は800万〜900万円の世帯の減少が目立つ。中流層の受難は個人消費の伸び悩みと無関係ではない。(渡辺康仁)

賃金削減響く

 西武有楽町店(東京・千代田)、四条河原町阪急(京都市)……。大手百貨店が有名な店舗を相次いで閉める。10年中に11店を閉鎖する予定で、そごうが破綻した00年の15店に迫る勢いだ。
 09年の百貨店売上高は13年連続で前年より減った。1984年と同じ水準に戻った格好だ。冬の時代が続く百貨店業界。その一因は日本の消費を支える中流層の減少にあるといわれる。

05年以降に加速

 09年の家計調査によると、2人以上の勤労世帯の平均年収は621万円。年収500万〜900万円の世帯は中流層と呼ばれ、全世帯の消費支出の4割を占める。第一生命経済研究所の熊野英生氏が00〜09年の世帯数の推移を試算したところ、中流層が多い650万円以上の世帯が減っているのを確認できた。
 平均年収800万〜900万円の世帯数は00年以降、18%減った。1500万円以上、1000万〜1500万円の上流層の世帯がそれぞれ、30%減、19%減となったのに続く、大幅な減少だ。
 一方、200万〜300万円、300万〜400万円の世帯はいずれも50%以上伸びた。熊野氏は「高齢化の影響もあるが、中流層が下に落ちてきている」と分析する。
 中流層の減少が際立つのは05年以降。200万〜300万円が19%増えたのに対し、800万〜900万円は17%減った。
 10年越しのデフレにあえぐ日本。企業は雇用削減よりも、賃金カットで不況を乗り切ろうとしてきた。09年の名目雇用者報酬はピーク時の97年より1割近く少ない。賃金デフレが中流層の低所得化を促したといえる。

家計支援に限界

 09年の家計調査では、被服および履物が00年に比べて26%減、交通費が19%減となった。消費支出全体の8%減を上回る落ち込みだ。この2つの費目をみると、年収800万円以上の世帯の支出がともに41%を占める。中流層の消費に頼ってきた業界が苦しむのも無理はない。
 問題は中流層の収入を復元できるかどうかだ。鳩山政権は家計を直接支援するため、高校授業料の実質無償化や子ども手当の支給などを決めた。だが経済全体のパイを拡大しなければ、問題の解決にはならない。大和総研の熊谷亮丸氏は「企業の活性化を含めた総合的な成長戦略を実行すべきだ」と指摘している。

年齢、収入増に直結せず

 中流層の受難はほかの指標からも見て取れる。厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに「賃金力ーブ」を描くと、年齢を重ねても収入が伸びにくくなっていることがわかる。
 25〜29歳の男性の賃金水準を100とする指数を計算してみた。1985年は45〜49歳が209、50〜54歳が222で、キャリアを積めば若いころの2倍を超える収入を得られていた。
 一方、2009年は45〜49歳が179、50〜54歳が183にとどまった。賃金カーブが緩やかになっているのだ。
 賃金構造の変化は日本経済に様々な影響を与える。右肩上がりの収入増に自信を持てない若年層は、ローンを活用した車や住宅の購入を敬遠しがちだ。老後の生活に不安を抱える中高年の節約志向も強まりかねない。
 09年の持ち家比率を年齢別にみると、30歳未満は19.1%で、前年より5.2ポイント低下した。20%を割るのは4年ぶり。賃金力ーブのフラット化も響いたとみられる。

1つめのグラフのもとになっている、第一生命経済研究所のレポートはこれ↓。

熊野英生「消費衰退の分析=年収デフレの効果」:第一生命経済研究所経済関連レポート(PDF:278KB)

同レポートでは、たとえばこんなグラフも載っています。

民間給与所得者の階層別人数の推移(第一生命経済研究所)

これをみると、民間給与所得者の階層別人数で、200万円以下、300万円以下の階層とともに大きく増えているのが1500万円超の階層(青太線)だというのが分かります。400万円超〜1500万円以下の階層は、全部減少しており、こちらからも、「中流」減少の様子が見て取れます。

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