“大企業は「敵」ではない” 志位委員長、『リベラルタイム』で語る

『リベラルタイム』2010年7月号

ビジネス誌の『リベラルタイム』7月号(6月3日発売)が「企業の『社会的責任』」を特集していますが、そのなかで、共産党の志位和夫委員長がインタビューで登場しています。

志位さんは「大企業には『社会的責任』を果たす役割がある」というテーマで、「大企業は積み上げた内部留保を国民の暮らしに還元すべきだ」「大企業は健全な役割を社会で果たす必要がある」「そうした責任を大企業が果たすことでまともな社会になる」と語っています。

大企業には「社会的責任」を果たす役割がある

[リベラルタイム 2010年7月号]

大企業決算が好転した一方で、失業率は改善せず零細企業の経営は悪化。文化・スポーツを含めた日本社会の弱体化が進んでいる。日本共産党委員長として初めて訪米、「アメリカも、変わりつつある」と話す志位和夫委員長に、日本の大企業への注文を聞いた。

――今年3月期決算の大企業業績は、軒並み黒字を回復しました。その一方で、自殺者数は12年連続で3万人を超えた。こうした状況を、どう考えてますか。

志位 リーマンショック後の世界経済の中で、日本の落ち込みが、もっとも激しかった。たとえば2009年のGDP(国内総生産)は、6.1%のマイナスでした。こんなに落ち込んだ国は、G7の中にはありません。なぜか。私は、リーマンショックに先立つ10年間の、日本経済の歪みが原因だと思います。
 この10年間で大企業の経常利益は、倍以上になりました。ところが、雇用者報酬は279兆円から、直近では253兆円に減っている。つまり、大企業はどんどん儲けるけど、働く人の賃金に回されず、逆に賃金は減らされている。非正規雇用が増え、正社員も賃下げがどんどん進む。そうした形で、大企業が儲けながら、国民は貧しくなっていったのです。
 また、この10年間で、GDPはまったく増えていません。成長が止まっているのです。つまり、成長が止まり、国民が貧しくなっているところに、リーマンショックが襲った。だから、日本経済は最悪になってしまったのです。では、どこにお金があるのか。大企業の過剰な内部留保となって蓄積されています。大企業の内部留保は、229兆円に達している。リーマンショック後も、さんざん派遣切りをやって、下請け切りをやって、それで収益を回復して、また内部留保を積み上げ始めた。
 しかし、大企業が収益を上げても、失業率は改善せず、景気は悪い。大企業の過剰な内部留保や利益を、国民の暮らしに還元すべきです。働く人の給与水準を上げ、最低賃金を引き上げ、“雇用は正社員が当たり前”という社会をつくるべきです。下請けイジメも止めさせ、大企業と中小企業との公正な取引ルールをつくるべきです。大企業が社会的責任を果たさなければ、日本の経済はよくなりません。

社会の未来を危うくする「国際競争力至上主義」

――大企業には、激しい国際競争を勝ち抜くためには、内部留保や高収益が必要なのだ、との意見が強い。

志位 財界は口を開けば、すぐ国際競争力というけれども、では日本の大企業は世界並みの賃金を払っているのか。あるいは、税と社会保険料を払っているのか。
 国際金属労連が発表したデータによると、自動車産業で働く労働者の時間当たりの賃金は、日本はアメリカの2分の1、ドイツの3分の1。つまり、(適正な)給料を払っていないんですよ。
 もう一つ、大企業が払っている税と社会保険料についての政府のデータですが、税だけを見ると、それほど低くはない。しかし、社会保険料を見ると、大変に低い。税と社会保険料を合算して計算すると、ドイツの8割、フランスの7割くらいしか(日本の大企業は)負担していない。国際競争力をいう前に、まず、給料をちゃんと払いなさい、社会保険料を払いなさい、といいたいですね。

――経済産業省の産業構造審議会で、現行の法人税率約40%を、将来的には25〜30%に引き下げることが議論されていますが。

志位 反対です。先ほどもいったように、税と社会保険料を合わせて考えたら、少ないのです。それを、もつと下げるというのか。しかも、法人税率引き下げは、消費税率の引き上げとセットでしょ。庶民から吸い上げて、大企業を潤すというやり方を許したら、暮らしも景気も、滅茶苦茶になってしまいます。

――高い法人税率によって、国外脱出を企業は考える。外国企業の参入も少ないといわれます。

志位 海外に企業が出て行く最大の理由は何かというと、需要を求めて行く、ということです。つまり、国内に需要がないから、海外に出て行くのです。では、国内の需要を失くしたのは誰かというと、払うべき給料も払わない大企業が、国内需要を冷え込ませている。
 国際競争力をつけるためといって、正社員を減らして派遣に置き換える、下請けイジメをやる、国民の所得を減らす。このようなやり方では、日本経済は伸びていかないし、空洞化が進む、というのが実態です。ここを切り替える必要がある。国際競争力至上主義を続けたら、日本経済に先がないという認識を持つことが大事です。

大企業は「敵」ではない力相応の役割を果たしてもらう

――内部留保に課税せよ、という立場ですか。

志位 課税ということでは、ありません。そういう報道がされましたが、(鳩山由紀夫)首相との党首会談で、私は課税せよとはいっていません。内部留保に課税するのは現実的ではないし、税引後利益ですから、二重課税にもなってしまう。内部留保の還元が必要だ、といっているのです。
 そのための社会的規制のルールをつくる。たとえば非正規雇用を正規雇用にする、最低賃金を引き上げる、下請け単価を適正にする、そのためのルールをつくる。これを進めていけば、企業に貯まっている過剰な内部留保が国民に還元され、生活が潤い、日本経済が健全な成長の軌道に乗る、というのが私たちの考え方です。

――民主党政権は、NPOを中心にセーフティーネットをつくっていくこと等をうたった「新しい公共」という政策を打ち出しています。どう思われますか。

志位 「新しい公共」という言葉で、国の責任が曖昧になることに、大きな問題があります。たとえば、保育所の待機児童の問題がありますね。(民主党政権は)公設の保育所を増設するという方向ではなく、これを規制緩和し、地方まかせにして、子どもさんを詰め込む形で、待機児童の数を減らそうとしています。医療、介護、福祉等、本来国が果たすべき公共的責任を投げ捨て、民間まかせにしてしまう、という流れは、根本的誤りだと思います。
 財界、大企業に対して、社会的に責任を果たすよう、きちんとモノのいえる政治でなければなりません。もちろん、大企業は敵ではありません。大企業は健全な役割を、社会で果たす必要がある。雇用に対する責任、下請けに対する責任、環境に対する責任、消費者に対する責任、あるいはスポーツに対する責任、これらを負っていく必要があります。こうした責任を大企業が果たすことで、まともな社会になるわけで、それを正面からいえる政治でなければなりません。

「アメリカの反省」を参考にすべき

――しかし、黒字化するために、社会貢献事業から企業が手を引いている実態があります。

志位 スポーツの問題が典型ですね。いま企業スポーツチームの休廃部が続出していて、深刻な状況になっています。バレー、アイスホッケー、アメフト、こうした企業スポーツから、企業が次々と手を引いていく。企業がスポーツを通じて社会に貢献していくという活動は、先進国では当たり前です。企業チームが休廃部して、選手生活を断念するスポーツ選手が増加する、という深刻な事態は、ほかの国では起きていません。不況だからといって、切っていかないんですよ。
 目先の利益だけ追求して、株主に配当だけしておけばいい、という考え方が当たり前になって、企業が社会的責任を果たさない。こんな社会は長続きしません。オバマ米政権は、医療改革に一歩踏み出し、金融規制強化の方向に転換しようとしている。アメリカもいき過ぎた企業万能主義では、やっていけないという流れになっています。日本も、いき過ぎた資本自由化の見直しが必要です。また、社会的役割を果たしている企業が、もっと市場から評価されるようなルールをつくっていくべきですね。

インタビューの中身も面白いですが、志位さんの写真がなかなかきまっていて、いいんですよ。撮影は、立木義浩さん。やっぱりさすが、ちょっと違いますね。

『リベラルタイム』はキヨスクやコンビニ、書店でも売られています。(定価500円)

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