比例定数削減に異論続々

国会議員定数の削減問題。地方紙では、疑問を呈する社説が次々に登場している。

神戸新聞は、ずばり「減らせば質が高まるのか」のタイトルで、「一斉に減数競争に走るのは、あまりに短絡的」と批判。北海道新聞も「消費税増税に向け『議員自らが血を流す』というが、乱暴すぎる。筋違いではあるまいか」と指摘している。

比例定数をまず削減しようという動きに、「比例に込められた多様な民意を吸い上げる機能を弱める懸念がある」(河北新報)との指摘も共通している。

議員定数/減らせば質が高まるのか:神戸新聞
比例定数削減 少数意見を封殺せぬか:北海道新聞
議員定数削減 「1票の格差」是正が先:京都新聞
政治改革/定数削減も結構だけれど:河北新報
定数削減 1票の格差是正が先だ:信濃毎日新聞

社説:議員定数/減らせば質が高まるのか

[神戸新聞 2010/07/09 10:03]

 国会議員は多すぎるという共通認識でもあるのだろうか。多くの党が議員定数の削減を公約に掲げ、その数を競っている。
 現行では衆院480(小選挙区300、比例代表180)、参院242(選挙区146、比例代表96)の合計722だ。
 民主党は、衆院比例を80減、参院は40減を掲げる。たちあがれ日本も衆参ほぼ同じ削減幅で計600とする案を示す。
 自民党は、6年間で衆参全体を3割減らし計500に。みんなの党は衆参計400とし、将来的に一院制を目指す。新党改革は国会議員の半減を訴える。
 公明党は、衆院に「新しい中選挙区制」を導入するなどの選挙制度改革を定数削減の前提とした。その点では、小選挙区制度廃止をとなえる改革、衆院を中選挙区制に変えるたちあがれの主張とも共通する。
 削減論に対し、「少数会派の切り捨てにつながる」などと正面から反対するのは、共産、社民両党ぐらいだ。
 いまでも、日本の人口に対する国会議員数は主要国と比べてけっして多い方ではない。それでも、居眠り続出の本会議、議員特権の公私混同など、その無自覚さをたびたび見せられてきた国民からすれば、国会議員こそが「税金の無駄づかい」と映るのは仕方ないだろう。
 財政再建が争点化する中、有権者の厳しい視線を意識して、政治家が「自ら身を切る」姿勢をアピールするのは結構だ。だからといって、一斉に減数競争に走るのは、あまりに短絡的ではないか。
 国会議員の数は、選挙制度や二院制のあり方、国会の機能強化を議論する中で決まる。こうした議論が尽くされていない中で人数を減らしても、一人一人の質が高まる、という保証はどこにもない。
 いま各党が切磋琢磨(せっさたくま)すべきは、国会審議の活性化や議員の質を高める方策だ。国会が放置してきた「1票の格差」の早期是正も当然、視野に入れなければならない。
 衆院比例の削減は、特に慎重な議論を要する。当選者が1人の小選挙区制は、多くの「死に票」が出る。それを補うための比例代表が削減されれば、小政党が懸念するように「多様な民意」が削られるという結果になりかねない。
 国会議員が本気で「身を切る」つもりなら、議員特権の返上、歳費の大幅カット、政党交付金の縮減など、公約に掲げなくても、手だてはいくらでもあるはずだ。

社説:比例定数削減 少数意見を封殺せぬか

[北海道新聞 7月3日]

 有権者の声を国政に届ける。国会議員はその重要な役割を担っている。
 ところが民主、自民の二大政党は今回の政権公約で議員定数の削減を競っている。とりわけ見逃せないのは、民主党が衆院比例定数の80削減を主張していることだ。
 菅直人首相や枝野幸男幹事長は、秋の臨時国会に定数削減のための公職選挙法改正案を提出するとまで踏み込んだ。消費税増税に向け「議員自らが血を流す」というが、乱暴すぎる。筋違いではあるまいか。
 国会で民意を代表する議員の数や選挙制度のあり方は、各党の消長にも直結する。民主主義の土台にかかわる重大なテーマだ。
 自民党は、衆院480、参院242を合わせた議員定数を3年後に1割、6年後に3割削減するとした。公約には明記していないものの、民主党と同様に比例削減を念頭に置いているとみられる。
 仮に民主党案の80削減を実施した場合、衆院は民主、自民両党で9割以上を占めるという試算もある。
 これでは国会は大政党に独占されてしまう。共産、社民両党などが「少数政党の切り捨てにつながる」と反対するのは当然である。
 政治改革の原点を確認したい。
 そもそも衆院に導入された小選挙区比例代表並立制は小選挙区中心の制度で、現行は小選挙区300、比例代表180だ。当選者が1人の小選挙区制は政権交代を促す半面、死票が多くなる欠点がある。
 少数意見を反映させる比例代表にはその欠点を補う狙いがあった。
 いま政治の課題は、消費税をめぐる論議や、社会保障のあり方、雇用の創出など暮らしに直結するものばかりだ。
 そうした問題に政治が道筋をつけるには、できる限り国民の声を幅広く反映する国会の姿が求められる。
 日本が小選挙区制導入の手本とした英国では、5月の総選挙で第3党の自民党が躍進し、第1党の保守党と連立して政権交代を果たした。
 単純小選挙区制では多様化する国民意識を汲みきれないとして、新政権の下で比例代表制の併用を検討する動きも出ている。
 日本の国会議員数は人口比でみると、英、仏、独などより少なく、国際的にみて多い方ではない。定数を削減することが直ちに国民の期待に応える道だとは言い切れまい。
 先の通常国会は「政治とカネ」の問題などで重要法案が十分審議されず、国会の空洞化が目に余った。こうした現状を改め、充実した審議を実現していくことこそが、まず政治に課された仕事だろう。

議員定数削減  「1票の格差」是正が先

[京都新聞 2010年07月04日掲載]

 国会議員の定数論議が参院選の争点として浮上してきた。主要政党のうち国民新を除く各党が、定数削減に対する賛否をマニフェスト(政権公約)に盛り込む中で、菅直人首相が「参院定数を40程度削減、衆院は比例定数80削減」の早期実現に言及したからだ。
 首相はその理由について「より厳しいことを(国民に)お願いするときには定数削減をしっかり実現したい」と述べた。身を削る姿勢を示すことで消費増税への批判をかわす狙いのようだが、それではあまりにも荒っぽい。
 議員数や選挙制度のあり方は議会制民主主義の根幹をなす。国民の声を幅広く反映する国会をどう実現するか。その視点を忘れないでもらいたい。
 現在の定数は衆院480、参院242の計722。民主を含め、6党が定数削減を公約に盛り込んでいる。
 自民は「衆参定数を3年後に1割、6年後に3割削減」、みんなは「衆院180、参院142削減」を掲げる。たちあがれ日本が「衆院80、参院42削減」、新党改革も「衆参両院の半減」とする。公明は「衆院への新しい中選挙区制導入、参院の選挙制度改革」を条件に定数削減を認めるとの立場だ。
 競い合うように数字は並ぶが、その根拠は示していない。世論を意識しての「身を削る」ポーズとも映る。
 衆院は小選挙区比例代表並立制を採り、現行は小選挙区300、比例代表180だ。小選挙区中心の制度は民意を二大政党へと吸収する。その特質が発揮され、政権交代が実現したが、有効投票の46%は「死票」となった。
 仮に民主が主張する「比例80削減」を先の衆院選の結果にあてはめると、民主、自民の二大政党が衆院の90%以上を独占するという指摘もある。共産や社民は「身を削るのでなく、削られるのは民意」などと反対している。
 現行制度の導入時、細川護煕首相は「小選挙区で民意を集約し、比例代表で多様な民意を反映させる」とした。
 理念の違う仕組みを継ぎ足した選挙制度だけに、定数削減のさじ加減で民意の集約を図るのか反映させるのか、政治の将来像も左右することになる。各党には現行制度の長短を踏まえた上で、定数論議に臨んでほしい。
 日本が手本としてきた英国に目を向けると、先の総選挙でどの政党も過半数を取れず、第1党の保守党と第3党の自民党が連立政権を組んだ。二大政党制を支える小選挙区制への疑問から比例代表制導入の動きもある。
 急ぐべきは「1票の格差」の是正だろう。昨年10月、最高裁は最大4.86倍の格差があった2007年参院選をめぐり、「選挙制度の仕組み自体の見直し」を迫った。09年衆院選についても「違憲」判断が示されている。
 「法の下の平等」を掛け声に終わらせない責務を国会は負っている。

参院選 政治改革/定数削減も結構だけれど

[河北新報 2010年07月03日土曜日]

 議員定数削減を中心とした政治改革が参院選の“隠れた争点”に浮上している。国民新党を除く各党がマニフェスト(政権公約)に盛り込んだためだ。
 民主党は「衆院比例80、参院定数40程度削減」を、自民党は「衆参の定数を3年後に1割、6年後に3割削減」を掲げる。
 中小政党も、リストラにあえぎ、暮らし向きの改善が思うに任せない市民の目線が気になる。みんなの党は「衆院180、参院142削減」、たちあがれ日本は「衆院80、参院42削減」、新党改革は「衆参両院の半減」をうたう。
 比例が命綱の公明、共産、社民3党は選挙制度の見直しに言及。公明は「衆院は新しい中選挙区制、参院は民意を反映した制度導入」を条件に「削減」とし、社民も「比例代表中心の制度」を掲げる。「比例削減に反対」としつつ、新制度との絡みで定数全体には含みを残す。共産は「削減反対、1票の格差是正」「小選挙区制の廃止、比例代表制の導入」を主張する。
 民主、自民の二大政党、新党を中心に、有権者に「身を切る」覚悟を目いっぱい強調してみせた格好だが、コストに見合った働きをしていない無駄の多さを自ら認めたようなもの。国会の権威が揺らぐ。
 もっとも、民主党の衆院比例を除いて、削減の対象を示しておらず、公約は具体性を欠く。党内議論を尽くしたようにも、契約履行の確かな見通しを持っているようにも見えない。
 コスト削減は歳費の見直しや議員活動に付随する経費の「事業仕分け」でも生み出せる。そもそも、政治改革を訴えるのであれば、定数削減と同時に国会の質、すなわち議員の質を高め、審議の充実を図る方策こそが示されなければならない。
 もとより、定数は大いに議論したらいい。ただ、適正な規模は国会機能との見合いで定まるものだろうし、住民意思の反映という意味で、選挙制度との調整を図る必要も生じよう。
 削減方法も慎重を期したい。比較的実施しやすい比例代表に限ることは、比例に込められた多様な民意を吸い上げる機能を弱める懸念があるからだ。
 衆参両院が似通った選挙制度を採用し、ほぼ同等の権限が与えられている状況をどう評価するのか。二院制のあり方も問い直さないわけにはいくまい。
 衆参院選をめぐって「1票の格差」訴訟が続く。昨年8月の衆院選小選挙区選挙に関する訴訟では「違憲」「違憲状態」の判断が相次ぎ示された。広がる方向にある格差の是正とセットで定数を見直す方が理にかなっているようにも見える。
 民主党は衆院比例80削減について、参院選後の臨時国会で公職選挙法改正案を提出する方針を打ち出した。消費増税に有権者の理解を得たいための選挙対策と受け止められた。
 定数削減は各党の消長に直結し、政治課題に上れば激しい対立が表面化する。与野党が歩み寄れる、国会の機能充実につながる改革へ、腰を据えた議論を望みたい。本質論を置き去りに結論を急ぐべきではない。

社説:定数削減 1票の格差是正が先だ

[信濃毎日新聞 6月28日]

 それぞれに定数削減や選挙制度見直しを競っているものの、我田引水の面が目につき、国会のあるべき姿は見えてこない――。国会改革についての各党の公約を読み比べた印象だ。
 国会議員の数は少なければいいというものではない。定数を減らすと、声の小さな人たちの利害を国政に反映させるのがどうしても難しくなる。
 国民の支持を取り付けたいと各党が思うなら「1票の格差」を是正した上で議員の資質を高め、審議を充実させるのが先決だ。
 民主党は参院で「40程度」、衆院では比例の80削減を打ち出した。自民党は国会議員定数を3年後に1割、6年後には3割減らす、とする。公明党、国民新党、たちあがれ日本、みんなの党も定数削減を打ち出している。
 これに対し共産党、社民党、新党改革は、小選挙区制の廃止や比例代表を中心とする制度への見直しを主張する。小選挙区制の下で定数が減らされると、大政党にますます有利になることを警戒しているのだろう。
 国会が改革の必要に迫られているのは事実だ。例えば「政治とカネ」の問題が後を絶たない。
 とりわけ参院は「衆院のカーボンコピー」との不名誉な呼び方を返上できないでいる。5年前には、郵政法案の参院での否決を受け、当時の小泉純一郎首相が衆院を解散して法案を強引に成立させた。衆参のゆがんだ関係を見せつける一幕だった。
 だからといって、各党が定数削減に走るのは短絡的に過ぎる。衆院に小選挙区制が導入されてから、得票率の小さな差が獲得議席の大きな差となって現れるようになった。定数を減らせば、中小の政党が国会に議員を送り込むのはさらに難しくなるだろう。
 そもそも人口に比べた国会議員の数は、日本はほかの先進国に比べ、むしろ少ない方である。
 国会が信頼を取り戻す道はいろいろある。例えば参院は比例代表だけにして、審議する法案も決算に限定する、といったやり方だ。そうすれば、参院は「良識の府」「熟慮の府」の側面をいくらかは取り戻すだろう。
 その前に「1票の格差」の是正がある。今度の参院選でも最大で約5倍もの格差がある。1票の効力がこうも違うのでは「法の下の平等」の掛け声もむなしい。
 この問題に裁判所が向ける目は年々厳しくなっている。3年後の参院選、次回の総選挙までには必ず、格差を縮めておくべきだ。

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