いま読んでいる本

村岡俊三『グローバリゼーションをマルクスの目で読み解く』(新日本出版社)小林賢齊『マルクス「信用論」の解明』(八朔社)安西徹雄『英文翻訳術』(ちくま学芸文庫)

左から、村岡俊三『グローバリゼーションをマルクスの目で読み解く』(新日本出版社、2010年9月)、小林賢齊『マルクス「信用論」の解明』(八朔社、2010年7月)、安西徹雄『英文翻訳術』(ちくま学芸文庫、1995年)

村岡俊三氏の著作については、ここでも2冊(『マルクス世界市場論』『資本輸出入と国際金融』)紹介しましたが、本書は、今月刊行されたばかりの新刊書。「グローバリゼーション」(あるいはグローバリズム)の実態や現状分析にかんする本は数あれど、この本はそうした実態を分析した本ではありません。

そうではなくて、「そうした現状分析に先立つ、現代グローバリゼーションに関わるいくつかの理論的問題……をマルクス経済学の立場から考えようとしたもの」(本書、14ページ)。これもすでに紹介したことですが、そうした理論的問題を、村岡氏は、マルクス「プラン」の「後半体系」を手がかりに、『資本論』から理論的に順を追って考え、組み立てていこうとしています。そして、これも前に指摘したことですが、「プラン」論にかんしていえば、村岡氏の理解は一言でいって「古い」と言わざるをえませんし、その点のアップデートが本書ではかられているわけでもありません。しかし、それはあくまで「手がかり」であって、大事なことは、その先に村岡氏が展開している理論そのものが、マルクスの考え方にあっているかどうか。さらに大事なことは、そこで明らかにされた理論的問題が、現実の、こんにちの世界資本主義、グローバリゼーションの実態に合致し、その分析に役立つのかどうか、です。

とくに、村岡氏が問題にされている外国為替論についていえば、僕もこれまでいろいろな本を読んできましたが、今ひとつ納得しきれないものばかり。とりわけ金・ドル交換停止後の「基軸通貨」としてのドルの裏づけや外国為替をどう考えるかは、マルクス経済学が現代的な生命力を発揮できるかどうかの試金石だと思ってきたのですが、なかなか納得する議論にであえませんでした。

外国貿易や対外投資、外国為替など、村岡氏の所説は、マルクス経済学の「通説」とは異なっていますが、そういう論争に挑戦してこそ、マルクスの理解も深まるわけで、いろいろ勉強になりました。

ところで、本書の割り付けはちょっと読みづらかったですね。僕は古い世代なので、理論書は縦書きでないと頭に入ってこない方なので、本書が縦書きなのは大歓迎なのですが、本文活字の級数が大きく、見出しのバランスが悪い、注が本文と識別しにくい、等々。割り付けが読みやすいかどうかは編集の腕の見せどころ。いくら「中身で勝負」といっても、もう少しどんな割り付けにしたら読みやすいのか、研究してほしいと思います。

2冊目は、武蔵大学名誉教授の小林賢齊氏の新著。全体は、序章と第1部「『エコノミスト』誌とJ・ウィルソン」(第1章〜第4章)、第2部「下院『銀行法特別委員会(1857年)』の証言から」(第5章〜第8章)、第3部「『信用。架空資本』論の考察」(第9章〜第13章)からなっています。

もともと対象となっているマルクスの「信用論」が難解であり、さらに草稿研究の進展からエンゲルスの編集についてもさまざまな問題が提起されるようになって、ますます議論は詳細を究めている分野です。しかし、それにしても、小林氏の文章や論旨は非常に読みとりにくいです[1]。僕の頭では、本書第1部、第2部の意味まではとても理解がついていかないだろうと思い、序章を読んだ後、とりあえず第3部に取りかかっています。

最後は満員電車の中でパラパラと読むための本として買ったもの。『資本論』をドイツ語と首っ引きで読み返してみると、どうしてこんなに持って回ったわかりにくい翻訳になっているのだろうかと思うところが多々あります。とりわけ、新日本出版社版『資本論』の訳文は、daherはつねに「それゆえ」と訳すなど、機械的に訳語を当てはめている部分もあって、日本語として生堅い部分が多いです。他方で、関係代名詞についていえば、限定的用法のところまで開いた訳し方になっているところがあって、文意がとりにくくなっています。

ということで、そこらあたりの翻訳術をと思って探してみたのですが、そもそも「マルクス翻訳術」といった本は存在しません。さらに、ちまたには「翻訳術」なる本はたくさんあっても、ほとんどすべてが英語を対象にしたもの。はたして英語とドイツ語と、どこまで同じ手が通用するか分からないうえ、文学と経済学という違いもあります。しかし、翻訳業をめざす人たちの間では評価の高い本のようなので、とりあえず読んでみることにしました。

呼んでみると、参考になるところも多く、あらためて翻訳とは日本語の問題だということを痛感しました。

【書誌情報】

  1. 著者:村岡俊三(むらおか・しゅんぞう)/書名:グローバリゼーションをマルクスの目で読み解く/出版社:新日本出版社/発行:2010年9月/定価:本体2,500円+税/ISBN978-4-406-05385-3
  2. 著者:小林賢齊(こばやし・まさなり)/書名:マルクス「信用論」の研究――その成立史的視座から/出版社:八朔社/発行:2010年7月/定価:本体8,000円+税/ISBN978-4-86014-049-6
  3. 著者:安西徹雄(あんざい・てつお)/書名:英文翻訳術/出版社:筑摩書房(ちくま学芸文庫)/発行:1995年/定価:本体880円+税/ISBN4-480-08197-6/親本:『翻訳英文法』(バベル・プレス、1982年)
  1. しかも、序章には、あちこち妙なところに二重カギ括弧(』)がはさまっていたり、324ページ18行目の後半、「それが注『ba)の『続き』」(「に」は明らかに余計)など、誤植が散見されます。また、317ページに掲げられた「現行版と手稿ページ」の表には「手稿ページ」とありますが、掲げられているページ付は新MEGA版のページ数であって、手稿のページ付けではない(新MEGA版のページによって、手稿との対応を示すという趣旨だろうが)とか、注とは別に本文中に補注があり、章末の注にはさらに*で注がつくなど、構成的にも読みやすいとは言えません。 []

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