「古典教室」第1回 『賃金、価格および利潤』(その1) 受講しました

昨日、日本共産党の「綱領・古典の連続教室」の古典教室第1回がひらかれ、私も受講してきました。講師は不破哲三さん、古典教室の第1回と来月(第2回)のテキストは、マルクスの『賃金、価格および利潤』です。

講義は約90分。前半は、「古典」とは何か、「マルクス、エンゲルスはどんな時代の人か?」、あるいは『賃金、価格および利潤』の書かれた背景などの解説。そのうえで、『賃金、価格および利潤』の第1章から第5章は、経済学の理論が分からなくてもすぐに分かるウェストン君のたわごとへの批判で、いろいろおもしろいところあるが今回は割愛しますと断って、講義は第6章に進みました。

まずなにより、不破さんの講義は分かりやすくて、おもしろい。古典というと、難しい、読みにくいと敬遠する向きもありますが、そうしたイメージを一新してくれたのではないでしょうか。それでいて、理論的には、なるほどと唸らされるところがいっぱいあり、私自身、古典の講義、解説というのはこうでなくちゃいけないとつくづく反省させられました。

まず呆気にとられたのが、「マルクス、エンゲルスはどんな時代の人か?」という話で、2人の同時代人として清水次郎長が登場したこと。実際、次郎長は文政3年生まれ、明治26年没というから西暦に直すと1820年〜1893年で、エンゲルスと同じ年に生まれ、エンゲルスより2年早く亡くなった計算になります。

これだけだと「へえ〜」話で終わりですが、不破さんは、そういうエピソードを交えつつ、マルクスたちが活躍した時代(19世紀後半)は、ヨーロッパではすでに資本主義が起こり、発達し、さらにそれに反対する運動が始まった時代。日本は、幕末から明治維新、自由民権運動、日清戦争へ、封建制度から資本主義へと大きく社会が移っていった時代。そういう時期にマルクスたちは、資本主義を研究して革命運動の先頭に立ったんだと指摘されたのですが、なるほどマルクスたちの時代背景がよく分かりました。

「古典とは何か?」という話も、非常に分かりやすかったですね。科学的社会主義の古典といえば、マルクス、エンゲルスの書いた論文、著作などを指しますが、不破さんは、そもそも古典というのは、ルネサンスのときにヨーロッパの人たちが古代のギリシャ、ローマを理想として、そこに自分たちの源流を求めたことに始まると説明。科学的社会主義の源流はマルクス、エンゲルスですから、彼らの著作が古典と呼ばれるわけです。同時に、マルクス自身は、「古典」という言葉を2つの意味で使っていたことも紹介がありました。1つは、古代のギリシャ、ローマをさして「古典古代」という場合。同じ古代社会でも、アジアの古代は「古典古代」とは様子が違うので、それらを区別してギリシャ、ローマ型の古代を「古典古代」と呼んだということです。もう1つは、古典派経済学という場合。これはマルクスだけがそう呼んだ訳ではありませんが、マルクスが経済学を勉強するときに、やっぱりその源流となったアダム・スミスやリカードウの経済学を「古典派」と呼んだということですね。

こういうふうに考えると、科学的社会主義を勉強するときに、古典(マルクス、エンゲルスの著作)を学ぶことが大事だということが非常によく分かりますね。

また、不破さんは、この時期のマルクスたちの重要な活動の1つとして、インタナショナル(国際労働者協会)の活動があったことを紹介。このインタナショナルがヨーロッパで活動したのは1864年から1872年までのわずか8年。しかし、インタナショナルができたときは、ヨーロッパには労働者政党はなかったし、労働組合もイギリスを除けばまだ存在せず、社会主義運動はあっても労働組合には反対していた、それが1872年には労働者政党や労働組合は当たり前になっていた、という説明に、私自身、あらためてインタナショナルが果たした歴史的な役割の大きさを実感しました。いま、不破さんの編集で『インタナショナル』『多数者革命』という2冊の古典選書(新日本出版社)が発売されていますが、こうやって考えると、科学的社会主義の理論を学ぶとき、インタナショナルの時期は外せないということがよく分かります。

さて、『賃金、価格および利潤』の中身にはいると、第6章は資本主義経済を商品交換、市場経済の社会として分析し、第7章は労働者と資本家の関係として分析したものという指摘がまずありました。自分で読んでいると、ついつい章の見出し(第6章「価値と労働」、第7章「労働力」)に引きずられて、ここは価値の説明、ここは労働力の価値の説明というふうに読んでしまいますが、不破さんの読み方はもっとスケールがでかい!! 『資本論』でもマルクスは、第1篇「商品と貨幣」で、資本主義社会をまず商品経済社会としてとらえ、商品交換の法則(価値法則)を明らかにし、第2編以降で、商品経済の基礎の上に資本・労働関係、資本家による労働者の搾取の仕組み(剰余価値法則)を明らかにしていますが、『賃金、価格および利潤』でも、同じように、資本主義社会を、価値法則と剰余価値法則の二段重ねでとらえているんですね。そういうふうに、大きくつかまないといけない、と思いました。

それから、単純な価値形態から、2つの商品に共通な社会的実体として労働を導き出すところの説明で、不破さんは、「私たちは物々交換はあまりなじみがないから、3000円のお米と3000円の包丁とが同じ値段がつくのはなぜか?と読み替えたらいい」と説明。さらに、価格の話では、価値に比べて価格は千変万化する(近所の店よりスーパーの方が安いとか、デパ地下では6時をすぎると値下げするとか〕から、現実の社会では同じ価値でもいろいろな価格になる、という説明。このあたりは、初めてマルクスの経済学を勉強するという人を相手に説明するさいに苦労するところなのですが、あまりに見事に分かりやすく、明快に片づけられていくのを聞いて、驚いてしまいました。

古典選書版の129ページまでは経済学の本論、129ページからは注の部分が始まるという指摘は、非常に新鮮でした。なるほど、講義の原稿なのだから、論文のように注をつけることはできない訳で、だから、同じ本文のように見えても、本論の部分と注解の部分とがあるというのは、言われてみれば当たり前ですが、いままでまったく気づきませんでした。

不破さんは、そのほかにも、クォーターとかオンスとかの単位はあまり気にせず、「これは容積の単位」「これは重さの単位」という程度を知ってればいいとか、「ロシアの戦争」とは何か、ローマのアグリッパというのがどういう人物かということが分かってもあまり古典の理解は深まらない、など、実に大胆な(!)指摘もありました。

私自身、古典の講義や説明というと、とかくそういう細部に流れがち。先ほどの価値と価格の問題でも、あれこれ説明しようと考えれば考えるほど、難しいところへはまり込んでしまいます。それに比べると、不破さんは実におおらか。本当に理論を深いところまでつかんでいる不破さんならではの話に、つくづく我が身の勉強不足を痛感しました。

次回は12月21日(火)、綱領教室の第1回です。講師は志位和夫・委員長。次回以降の連続教室にも期待大です。(^_^)v

ちなみに、今朝(8日付)の読売新聞「時代の証言者」では、さっそく、この「連続教室」のことが取り上げられていました。また不破さんは、これからの研究テーマとして、「スターリンの大国主義の歴史」と、「マルクスの『資本論』の形成史」を予告しています。いったいどんな研究になるのか、楽しみですねぇ〜。(^_^)

【追記】
「綱領・古典の連続教室」のうち、「古典教室」の講義は、次の予定で進められることになっています。私も講義を受けたら、できるだけがんばって感想を書き込むつもりです。

第1回、第2回(2010年12月、2011年1月)
テーマ:マルクス「賃金、価格および利潤」
テキスト:古典選書『賃労働と資本/賃金、価格および利潤』に収録。同書にはマルクスの『賃労働と資本』と『賃金、価格および利潤』の2つの著作がいっしょに収められていますが、テキストで使用するのは『賃金、価格および利潤』の方のみ。どうして『賃労働と資本』をテキストにしなかったのかは、第1回の講義の中で説明がありました。
第3回、第4回(2011年2月、5月)
テーマ:マルクス「『経済学批判』序説」
テキスト:古典選書『「経済学批判」への序言・序説』に収録。同書には、1857年に刊行されたマルクス『経済学批判』に付された、邦訳で10ページ程度の短い前書き(「序言」と呼ばれる)と、マルクスの生前には発表されなかった長い長い「序説」とが収められています。連続教室でテキストにするのは、そのうち短い「序言」の方だけ。
※3月、4月はいっせい地方選挙のためお休み
第5回〜第8回(2011年6月、7月、8月、9月)
テーマ:エンゲルス「空想から科学へ」
テキスト:古典選書『空想から科学へ』
第9回、第10回(2011年10月、11月)
テーマ:エンゲルス「多数者革命」
テキスト:古典選書『多数者革命』
第11回(2011年12月)
テーマ:古典と現代(仮)
テキスト:とくに使用しない

受講料は、最初に「しんぶん赤旗」に発表された要項では「年間で1人、1000〜2000円」となっていましたが、これはその後、1人2000円に決まりました(民青同盟員は割引で1000円)。私も2000円納めました。これで、綱領と古典、それぞれ1年間、あわせて22回分の講義料なのですから、1回当たりは91円、お安いもんです。(^_^;)

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