そもそも国が「電源喪失は考慮不要」としていた!!

福島原発事故は、地震と津波で外部電源が失われ、それによって原子炉の冷却機能が失われたことが原因だが、国の原子力安全委員会の指針で、原発の設計にあたって「長期間にわたる全電源喪失を考慮する必要はない」とされていたことが明らかになった。

安全委、「電源喪失は考慮不要」 原発対策遅れの原因か:共同通信

安全委、「電源喪失は考慮不要」 原発対策遅れの原因か

[2011/04/06 09:56 共同通信]

 東京電力福島第1原発では、地震後に外部電源が切れ非常用電源も起動しない状態が続いて事故が拡大したが、国の原子力安全委員会の指針で原発の設計の際に「長期間にわたる全電源喪失を考慮する必要はない」と規定されていることが6日、分かった。
 電力会社は国の指針に基づいて原発を設計、建設しており、この規定が設備の不備や対策の遅れにつながった可能性もある。
 今回の事故を受け、経済産業省は3月末に、津波による長期の電源喪失に備えて非常用電源を確保するよう電力会社などに指示したが、電力関係者からは「そもそも国の指針に不備があるのではないか」との声も出ている。
 指針は1990年に定めた「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」。
 59項目のうち、27番目の「電源喪失に対する設計上の考慮」で、外部電源などの全交流電源が短時間喪失した場合に、原子炉を安全に停止し、その後の冷却を確保できる設計であることを要求。
 その解説で、長期間の電源喪失は「送電線の復旧または非常用交流電源設備の復旧が期待できるので考慮する必要はない」としている。
 第1原発は地震で外部電源を喪失。復旧に10日程度かかり、非常用電源も一部しか機能しなかったため原子炉が冷却できず、核燃料の損傷や原子炉建屋の爆発が起きた。
 経産省の関係者は「指針は必要に応じて見直すべきではないか」としている。

原子力安全委員会の「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」とはこれ↓。294KBのPDFファイルが開きます。

http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/1/si002.pdf

今回の事故に関連しては、同審査指針の指針24「残留熱を除去する系統」の第2項に次のように規定されている。

2. 残留熱を除去する系統は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できるように、多重性又は多様性及び独立性を適切に備え、かつ、試験可能性を備えた設計であること。

ところが、肝心の外部電源喪失については、指針27「電源喪失に対する設計上の考慮」で次のように、初めから「短時間の電源喪失」に対処できなければならないこととされていた。

原子炉施設は、短時間の全交流動力電源喪失に対して、原子炉を安全に停止し、かつ、停止後の冷却を確保できる設計であること。

さらに14ページからの「解説」を読むと、指針27「電源喪失に対する設計上の考慮」で、次のようにはっきりと「長期間にわたる全交流動力電源喪失は……考慮する必要はない」と書かれている。

 長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない。
 非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用(常に稼働状態にしておくことなど)により、十分高い場合においては、設計上全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい。

ここで言っている「長期間にわたる電源喪失」とは、送電線の復旧とか非常用電源設備に修復とかと書かれていることから想像されるように、数時間とか数日を想定しているものと思われる。しかし、今回の事故では、まさにここで言うような「長期間にわたる電源喪失」が起きたわけだ。その限りで言えば、まさに「想定外」の事態だが、それは、原子力安全委員会自身が想定から外した事態が起こったということであって、想定もできなかったような事態が起こったという意味ではない。

要するに、電源喪失は起こるかも知れないが、ごく短時間で電源は復旧するはずだと勝手に想定していたということになる。原子炉の停止は、確かに電源喪失のもとでもうまくいったかも知れない。しかし、炉心の冷却は、もともと「短期間」では終わらないことは分かっていたはず。それなのに、なぜ残留熱除去についても「短期間」の電源喪失しか考えなかったのか。国が定めた「設計指針」そのものが間違っていたということではないだろうか。

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