いまさら核種も重要だと言われても…

放医研(独立行政法人・放射線医学総合研究所)が、放射線量だけでなく、放射性物質の種類(核種)をその場で分析できる高性能の放射線測定器を開発したというニュース。

それはよいのですが、そのなかで、こんなことが言われています――「放射性物質の種類がわからないと適切な被曝対策はとれない」(放医研の専門家のコメント)。

実を言うと、そんなことは事故直後から分かっていたことです。にもかかわらず、文部科学省その他は、空間放射線量(いわゆる毎時何マイクロシーベルトというやつ)ばかりを測定・発表して、現在にいたるまで、どこに、どんな放射性物質が、どれだけ蓄積されているのかを詳細に調べて、分かりやすい形での公表もされていません(個々には、土壌でどういう各種が検出されたかの報道はありますが)。

放射線測定器、持ち運び可能に 放医研が東電向け開発:日本経済新聞

「日本経済新聞」も、いまごろになって、「放射性物質の種類が分からないと適切な被曝対策はとれない」などと識者のコメントを載せてすませるのでなく、報道機関として、どこに、どんな放射性物質が、どれだけ蓄積されているのか、政府はそれを調べているのかいないのか、調べているとしたらデータはどこにあるのか、それは住民にきちんと伝えられているのか、等々、きちんと調査・取材して報道する――それが、ジャーナリズムとしての最低限の義務だと思います。

放射線測定器、持ち運び可能に 放医研が東電向け開発/物質の種類も現場で分析

[日本経済新聞 2011/6/21 19:27]

 放射線医学総合研究所は21日、小型で持ち運び可能な放射線測定器を開発し、東京電力福島第1原子力発電所で試験的に使い始めたと発表した。放射線量だけでなく、がれきなどに付いた放射性物質の種類をその場で分析できる高性能タイプ。作業員の被曝(ひばく)対策に生かせる。今後ロボットなどに測定器を取り付け、原子炉建屋を調査する。
 測定器は東電の要請を受けて開発した。直径11センチ、長さ15センチの円筒形。内蔵した化合物半導体センサーで放射線のガンマ線を測り、ヨウ素やセシウムなどの放射性物質を特定する。東電の作業員が福島第1原発に持ち込み、がれきから数メートル離れた場所で測定、セシウム134、セシウム137を検出できた。
 「放射性物質の種類がわからないと適切な被曝対策はとれない」(放医研の鈴木敏和室長)とされる。従来は試料を採取して研究所などの大型装置で分析していたため、時間がかかっていた。新測定器は原子炉建屋やがれき周辺など放射線量が高い場所で直接測定し、結果がすぐにわかる。10月にも製品化する。

通常の放射線測定器は、放射線の量(強さ)しか測定しません(安い物は、放射線の中でもγ線しか測っていません)。しかし、事故直後に緊急に避難するという場合ならともかく、事故から何ヶ月もたって、広範囲に放射性物質がまき散らされてしまったあとでは、日々、時々刻々の放射線の強さ(空間放射線量)だけでなく、どういう放射性物質がどれくらいあって、どの程度の放射線を出しているのかを調べて公表することが重要になっていると思います。放射性物質の種類(核種)によって半減期が異なるので、放射線を出しているのがたとえばヨウ素(半減期約8日)なのかセシウム(同約30年)なのかによって、その後の放射線量の減り方が違ってくるのですから。

さらに、化学的にも毒性の強いプルトニウムや、体内に吸収されるとカルシウムと置き換わって骨に蓄積されるストロンチウム(β線を出して、骨の癌や白血病の原因になるとされる)などの場合は、ごく微量であっても事態は深刻です。

しかし、これまで核種を調べるためには、土などサンプルを採取して、それを分析するために時間がかかっていました。新開発の装置では、それがその場で分析できる、というのですから、福島県など周辺地域を中心に、どこがどういう核種によってどの程度汚染されているのか、詳細に調べることが可能になります。

その結果は、こんご住民がどう行動するか、汚染除去の作業をどうすすめたらよいのかを判断する基礎となるデータです。ぜひとも、政府の責任で詳細な調査をおこない、結果を公表して、住民に知らせることを望みたいと思います。

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