ベルリングェルが死んで奇跡は起こった

映画「人生、ここにあり!」

東京は、今日は午前中から雨が降り出し、一時はかなりの土砂降りになりましたが、夕方には一段落したので、昨日に続いて、またまた映画を見に出かけました。

今夜はイタリア映画「人生、ここにあり!」です。(今年9本目)

舞台は1983年のイタリア・ミラノ。市場に対応すべきだと唱え、「市場主義者!」と罵られて、労働組合をクビになったネッロが紹介されたのは、精神病院の患者たちの協同組合[1]のマネージャーの仕事だった。しかし、彼らの仕事と言えば、封筒に書類を入れたり切手を貼ったりという退屈な補助作業ばかり…。ネッロは、組合員に、補助作業を続けるのか、それとも本格的な仕事で市場に挑戦するのかと提案する。すったもんだの議論のあげく、仕事は寄せ木の床張り作業に決定。しかし、障害を抱えた組合員たちの仕事はなかなかうまくいかない。そんなある日、ネッロが不在中に、床に貼る木が足らなくなり、廃材を使って勝手に作業を進めてしまう。それがデザイナーにうけたことから、協同組合の仕事はうまく滑り出すのだが……。

実はネッロがなぜでかけてしまうかというと、当時の共産党の書記長エンリコ・ベルリングェルが死んだから。字幕では「書記長が死んだ」となっていましたが、台詞でははっきりと「ベルリングェル」って言ってました。彼が亡くなったのは1984年6月、政治的立場の違いを超えてその葬儀には10万人が参列したとか。ネッロが共産党員だったかどうかは分かりません[2]が、他にもそういう左翼的な背景がちょろちょろと描かれていて、それが解体した共産党を茶化しているのか、それとも左翼が社会のなかに根付いているイタリアの文化なのかはよく分かりませんでしたが、オイラ一人で笑っておりました。(^_^;)

さて、映画の方ですが、ともかく協同組合の組合員たちが実に魅力的。封筒にまともに切手も貼れないといわれるルカとジージョは、実は切手を螺旋状に貼ってパラパラ・アニメをつくっていた芸術家?! 何事にも否定的でスローモーなオッシやお調子者のゴッフレード、何かあるたびに父親を引き合いに出すファビオなどなど、個性豊かな面々です。

それにしても、こういう協同組合だって、立派にやっていけてしまうところが、イタリアという国のすごいところ。日本の共同作業所の多くが雀の涙のような工賃でしか仕事が見つからないというのとは大違いです。イタリアという国は、世界的な大企業がある一方で、いまでも先祖代々の職人や個人企業がいっぱい残っているし、協同組合もいたるところにあって、それが経済的にちゃんと成り立っています。映画のなかでは、ルカが、何度も自分は「職人specialista」だと名乗っていましたが、そういうスペシャリストには社会的にも敬意が払われるし、経済的にもきちんとやっていけるだけの対価が支払われるようになっているというのがすばらしいですね。何でも安けりゃいいといって、結局最後は労働者の賃金をたたいて、ひたすら貧困化の道をすすんでいる日本とはまったく違いますね。

ストーリーは、実在するノンチェッロ協同組合をモデルにしたもの。もちろん娯楽作品として楽しめるように作品化されていてますが、それでも、こういう話が実際にあったというのが非常にイタリアらしい。ちなみに、イタリアは、1978年に成立したバザリア法で、精神病院を順次廃止することを決定。1998年には全廃されたそうです。

映画『人生、ここにあり!』公式サイト

【映画情報】 人生、ここにあり!
原題:Si puó fare(私たちにはできる!)/監督・脚本:ジュリオ・マンフレドニア/原案・脚本:ファヴィオ・ボニファッチ/製作:アンジェロ・リッツォーリ/出演:クラウディオ・ビジオ(ネッロ)、アニータ・カプリオーリ(サラ)、アンドレア・ボスカ、ジョヴァンニ・カルカーニョ、ミケーレ・デ・ヴィルジリオ、カルロ・ジュセッペ・ガバルディーニ/2008年 イタリア映画

  1. 日本でおなじみの生協も協同組合ですが、生協は消費協同組合。ここに登場するのは協同組合企業、生産協同組合です。 []
  2. 冒頭シーンでは、彼はゲバラの写真の前で演説していました。 []

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