口開けない日本の空気はとても危うい

2014年1月1日 (水) at 14:22:49 Posted in スポーツ, 外交, 中国

「朝日新聞」で、元サッカー日本代表の岡田武史氏が、中国での監督生活についてインタビューを受けている。

そのなかで岡田氏は、いまの日本には「口を開けなくなる空気」があって「草の根で多くの人が感じていても、世の中のムードと違うことを言えない」雰囲気がある、それは「とても危うい」と語っている。日中関係や現在の国内政治の動きについて、的確で興味深い話だ。

異才面談:2)元サッカー日本代表監督・岡田武史さん リアルな中国知って考えた(有料会員限定)

(異才面談:2)元サッカー日本代表監督・岡田武史さん リアルな中国知って考えた

[朝日新聞デジタル 2014年1月1日05時00分]

 ――中国での監督生活は尖閣諸島をめぐる日中の対立と重なり、反日デモもありました。

 「身の危険なんて感じたことはない。アウェーの試合で『ばかやろう』と一度、言われたぐらいだね。街では、サインや写真の撮影を求められたり、『頑張れ!』と声をかけられたりした。デモで日本車を壊し、日系スーパーを襲ったのは、一部の中国人だよ」
 「ぼくは、どんな問題があっても自分の子どもを戦場に送りたくない。中国の親だって、同じだよ。答えは簡単だ。話し合いしかない。国と国、文化と文化がぶつかれば、接点をさぐるしかない。政治家は分かっているはずだけど、引くに引けない。日本だったら支持率が下がる、中国なら政変がおきる、と。結局、国民自身が大事なものは何かを考えるしかない。サッカーの選手が監督の指示を待たず、自分で考えなければならないのと同じだ」
 「だけどね、こんな風に話すと、あいつ、どうしちゃったんだ、国を売ったのか、と言われかねない危険な空気があるよね、いまの日本には」

 ■互いの誇りを尊重

 ――空気、ですか。

 「口を開けなくなる空気だよ。草の根で多くの人が感じていても、世の中のムードと違うことを言えない。とても危うい」
 「ぼくは日本代表の監督もやった。日の丸をつけて、ものすごい誇りを持って戦いましたよ。でもね、相手もすべてをかけて戦っていることは尊重している。ナショナリズムは自分たちだけのものじゃない。どちらも国を愛する気持ちを持っていることを理解しないと、ね」

 ――1年目は16チーム中の11位、2年目は12位。率直に言って、成績はイマイチ。でも、引退会見の雰囲気も、日本の悪口が渦巻くインターネットでも、岡田さんへの温かい言葉が目立ちました。意外です。

 「日本で批判されるのには慣れているから、中国でもそうだろうと思っていたら違った。やろうとしたことは認めてくれたんだな、とうれしかった」

 ■自立と規律を強調

 ――杭州から日本へ発つ日、空港に見送りにきたサポーターたちは、日本式におじぎをして別れとお礼を告げていました。

 「中国でも特別なことはしていない。自立と規律を強調した。中国人はルーズだから厳しく管理しなきゃだめだ、と言われたが、むしろ選手の宿舎の門限をなくした。個々の判断を尊重したうえで、それでも規律を二度破った選手はクビにした」

 「思い出深いのは、2年目の夏。経営陣と関係が深く、中心選手なのにチームの和を乱すような発言をしたり、成長しようとする若手を抑え込んだりしていたベテラン選手を外したときだ。残りの選手の表情が変わった。内心すごく喜んだのが分かった。その試合は自分たちより強いはずの相手に勝ち、選手たちはロッカールームで大喜びで抱き合っていた。いつもは勝っても負けても試合後はさっさと帰っていたのに。チームとしてようやくここまできたか、とうれしかった」
 「日本から来たコーチが『だめだなあ、こいつら』と言うことがある。ぼくもぐちが出ることはある。でも、そのひとことを発するな、と。日本の選手と違うかもしれないけれど、自分が指導者としてだめだと言っているようなものだ」

 ――でも、歴史も習慣も違って、苦労したのでは。

 「もちろん、変えられないものもある。たとえば、中国のサッカーにはオープンな移籍の市場がない。贈り物をしたりお酒を飲んだりして有力者と関係を築いて、チームをクビになっても次のチームに移れるように備える。所属チームへの忠誠心が低い。こんなことを言われたこともある。監督の言うことはわかる。でも、その通りにやって少しぐらい上手になっても、クビになったとき、監督は次のチームをみつけてくれないでしょう。そしたら、月給数千元(数万円)の建設作業員をやるしかないかもしれないんだ、と」
 「だめだったら戻る場所がある日本人とは違う。中国社会で生きる人はそう思うよね。理解は得られても、変えられないこともある。中国でやるなら、折り合いをつけるしかない」

 ■日本の若者も健闘

 ――日中関係が最悪といわれているのに、サッカーの交流はさかんです。

 「中国は日本のサッカーに対する憧れ、尊敬の気持ちをもってくれている。中国の人は、日本は嫌いだけど、あなたは好きとか日本人は嫌いじゃないとか言うよね。日本人も、漠然とした中国を好きか嫌いかよりも、リアルな中国を知って好きなものや人がいれば、考え方に幅ができると思うよ」
 「中国からはいま、若手の育成に力を貸してほしいと言われている。Jリーグと提携したり、指導者を日本で研修したりすることを手伝うつもりだ」

 ――大国化を急ぐ中国とこれから向き合う日本の若者は大丈夫でしょうか。「内向き」が心配されています。

 「ほんとうにそうかな。サッカーでいえば違う。中国はもちろん、タイ、ルーマニア、ブルガリア、ウクライナ、インドなどのチームでがんばっている若者に出会うよ。Jリーグに入れず、裸一貫で飛び出した選手たちだ。たくましいよ。われわれの世代とは違う感性がある。若いヤツを内向きだなんて言ってる年寄りは、じゃまをしないように早く退いた方がいいね」

   *

 おかだ・たけし 1956年生まれ。早稲田大、古河電工でプレー。24試合の日本代表歴。監督としてW杯に98年初出場、2010年16強入り。12、13年と中国・杭州緑城(浙江省)の監督を務めた。

異才面談(「朝日新聞」2014年1月1日付)

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