フィナンシャルタイムズ紙が安倍発言を批判

2014年1月25日 (土) at 18:39:19 Posted in 外交

安倍首相の、ダボス会議での日中関係は「1914年の英独関係に似ている」発言が国際社会で大きな反響を呼んでいることを、今朝の日本経済新聞は詳しく紹介している。そのなかで取り上げられた英フィナンシャルタイムズ紙の記事はこちら↓。

End drift to war in the East China Sea : FT.com

見出しは「東シナ海における戦争への漂流を終わらせよ」。サブ見出しは「東京と北京は手遅れになる前に言葉を和らげなければならない」というもの。

End drift to war in the East China Sea

January 23, 2014 6:42 pm

Tokyo and Beijing must defuse rhetoric before it is too late

The possibility of war between China and Japan in the East China Sea is rapidly emerging as one of the biggest security risks facing the world. Unfortunately, the actions of the Chinese and Japanese governments are doing nothing to make conflict less likely.

The focus of the stand-off is a chain of disputed islands called Senkaku by Japan and Diaoyu by China. Although the islands are administered by the Japanese, China is making increasingly insistent claims to ownership. Last November Beijing wrongfooted Tokyo when it declared an “air defence identification zone” covering the airspace over the islands. In the subsequent war of words between both sides, Shinzo Abe, Japan’s prime minister, poured more fuel on the flames by visiting a controversial shrine hated by the Chinese because it honours 14 convicted war criminals.

A new reason for concern has now emerged with Mr Abe’s appearance at the World Economic Forum in Davos this week. In a meeting with journalists, the prime minister not only defended his visit to the Yasukuni shrine. He also drew an explicit comparison between his nation’s rivalry with China and that which existed between Britain and Germany before the first world war. The extensive trade between the two European powers had not prevented them coming to blows, he said, adding that China and Japan were now in a “similar situation”.

Mr Abe may have intended simply to stress the seriousness of the current dispute. He said that war would be a tragedy and called for confidence-building measures, such as the establishment of a hotline between Beijing and Tokyo. But for Japan’s prime minister to allow any comparison with 1914 in Europe is chilling and inflammatory. It can only boost the frantic efforts to find some way to pull both sides back from the brink.

Mr Abe cannot escape blame for this impasse. For nearly a year now he has allowed nationalist sentiment to get the better of him. He should have resisted the temptation to visit Yasukuni. His recent calls for changes to Japan’s pacifist constitution are ill-timed and add nothing to the security of the disputed islands. It was also counter-productive while in Davos for the prime minister to point the finger at China’s military spending as the main source of regional instability. While China has certainly been spending heavily, Japan’s self-defence forces ? particularly on the high seas ? retain a technological edge Beijing cannot match.

None of this, however, absolves China either. Its decision to set up the “air defence” zone over the islands was a dangerous provocation, increasing the risk of an incident involving foreign aircraft. There are reports that at Davos, one influential Chinese figure even suggested to a private gathering that China could pull off a successful “surgical” invasion of the disputed islands. Such talk is lunacy.

Both sides should stop rattling sabres and start trying to talk to one another. Mr Abe’s hotline idea is a good one and should be followed up. There are no military-to-military contacts between Beijing and Tokyo. A hotline could defuse tension in the event of accidents or emergencies. But this cannot substitute for the urgent need for negotiations over the islands to begin at the highest level. For now Mr Abe and President Xi Jinping of China are putting obstacles in the way of any such meeting.
As a result, the US must make this gathering storm the focal point of its diplomacy. Washington has assured Japan that its security umbrella covers the disputed islands. The US must certainly warn China that it will stand by its ally in the event of any incursion by Beijing. But the US must also make clear to Mr Abe that he needs to refrain from nationalist posturing. Both he and Mr Xi should look for a route away from Armageddon before it is too late.

さて、翻訳しなければと思っていたら、すでに訳してくださっている方がいらっしゃいました。

東シナ海で戦争へと向かう流れを止めるべきだ FT社説(フィナンシャル・タイムズ(翻訳gooニュース)) – goo ニュース

東シナ海で戦争へと向かう流れを止めるべきだ FT社説

[フィナンシャル・タイムズ(翻訳gooニュース)2014年1月24日(金)14:40]
(フィナンシャル・タイムズ 2014年1月23日初出 翻訳gooニュース)

日本政府と中国政府は、手遅れになる前に挑発的な発言を鎮めなくてはならない。

中国と日本が東シナ海で戦争に突入する可能性が、世界がいま直面する最大の安全保障上の危機として急浮上しつつある。残念ながら、中国と日本の両政府による言動は、紛争の可能性をやわらげることに何ら貢献していない。

衝突の焦点となるのは、日本が尖閣諸島と呼び中国が釣魚島と呼び、そして両国が領有権を争っている島々だ。諸島を実効支配しているのは日本だが、中国も領有権を日に日に強硬に主張し続けている。昨年11月には中国政府が、諸島上空をも含む「防空識別圏」の設定を宣言し、日本政府の怒りを買った。両国間ではそれから批判合戦が続き、日本の安倍晋三首相が靖国神社を参拝して火に油を注いだ。靖国神社には戦争犯罪で有罪となった14人も合祀されており、中国人の憎悪の対象となっている。

新たな懸念の原因となったのは、今週の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)における安倍氏の発言だ。ジャーナリストたちとの会合で首相は、靖国参拝の正当性を主張しただけでなく、今の日本と中国の対立関係を、第1次世界大戦前の英独関係とはっきりと比較してみせたのだ。当時の欧州の二大列強は幅広い貿易関係をもつ間柄だったが、それでも武力衝突は避けられなかったのだと首相は述べ、今の中国と日本も「similar situation(似たような状況)」にあると付け足した。

安倍氏はただ単に今の対立関係がいかに深刻か、強調したかっただけかもしれない。もしそんな戦争が起きれば悲劇だし、たとえば中国政府と日本政府の間のホットライン設置など信頼醸成の方策が必要だとも首相は話した。しかし、1914年の欧州と現在の比較そのものを日本の総理大臣が容認したというのは、ぞっとするほど恐ろしいし、扇動的だ。両国をなんとかして瀬戸際からひきずり戻そうと、周りは必死にならざるを得ない。

今の日中関係のこう着状態について、安倍氏は批判を免れない。首相はもう1年近く、ナショナリスト的感情をつい優先させて行動してきた。靖国を参拝したいという誘惑は我慢するべきだった。日本の平和主義憲法を改憲しようと最近また呼びかけているのも、タイミングが悪いし、領有権を争う諸島の安全に何ら寄与しない。ダボスにおいて中国の軍事支出を取り上げ、それが地域不安定の主要因だと名指ししたのも、非生産的だった。確かに中国は軍備に大金をつぎこんできたが、日本の自衛隊は(特に公海上では)技術面で中国を上回っている。

とは言うものの、だからといって中国もなんら批判を免れない。諸島上空に「防空識別圏」を設定したのは危険な挑発行為で、外国の航空機による異変発生のリスクを高めた。ダボスでは影響力のある中国要人が、諸島を「外科手術的」に制圧することも可能だと私的な会合で示唆したという報道もある。このような発言は狂気の沙汰だ。

両国も軍刀を鳴らすのは止めて、互いに話し合う努力を始めるべきだ。安倍氏の提案するホットライン設置は良案なので、検討するべきだ。今現在、防衛面で日中が接触できるルートがない。なにか事故や緊急事態が起きたときにホットラインがあれば、事態を鎮静化させることができる。とはいえホットラインだけでは不十分で、諸島について最高レベルでの協議がただちに必要だ。今のところ安倍首相と中国の習近平国家主席は、そうした首脳級会談の実施を妨げるようなことばかりしている。その結果、米政府はこの嵐の予兆を自分たちの外交政策の焦点にせざるを得ない。

米政府は日本に対して、防衛協力の傘は諸島にも及ぶから安心するように伝えている。米政府は確かに、もしも中国が侵攻するようなことがあればアメリカは同盟国の側に立つと、中国に警告しなくてはならない。けれどもアメリカは安倍氏に対しても、ナショナリスト的な虚勢は控えるようにと、はっきり告げなくてはならない。安倍氏も習氏も、アルマゲドンから遠ざかる方法を、手遅れになる前に探し始めるべきだ。

これが24日の「日本経済新聞」の記事。

「日中関係、第1次大戦前の英独」 首相発言と英で報道

ダボス会議 誤解招き政府釈明

[日本経済新聞 2014/01/24朝刊]

 安倍晋三首相は22日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、外国メディア関係者と懇談した際、日中関係を第1次世界大戦で戦う前の英独関係に例えて説明した。経済的に深く結び付く日中両国の衝突があってはならないとの真意は伝わらず、英紙など外国メディアは「1914年の英独に似ていると発言した」と報じた。
 首相はダボス会議でメディア関係者だけでなく、世界の経営者らと意見交換し、経済政策を力説した。ただ、各国の出席者は中国や韓国が反発した昨年12月の靖国神社への参拝に関心を寄せた。
 首相と対談したフォーラムのシュワブ会長は「靖国参拝で近隣諸国との関係が悪化しているように思える」と質問した。首相は「戦死者が祭られている場所で、不戦の誓いをした。中国や韓国の人々を傷つけるつもりは毛頭ない」と説明した。
 外国メディア関係者との懇談では、記者から「日中が武力衝突に発展する可能性はないのか」と問われた。首相は「今年は第1次世界大戦100年を迎える年だ。当時英独は多くの経済的関係があったにもかかわらず第1次世界大戦に至った」と指摘。そのうえで「質問のようなことが起きると、日中双方に大きな損失であるのみならず、世界にとって大きな損失になる」と強調した。
 だが、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「首相が武力衝突は論外だと明言しなかった」と報道。「何度もダボス会議に参加してきたが、最も不安にさせられた経験だった」との記者の感想も伝えた。英国放送協会(BBC)は「首相は経済的に相互依存する日中は1914年の英独に似ていると認識している」と報じ、「日本の指導者が現在の日中関係について100年前の英独を思わせた。衝撃的だ」とした。
 誤解されて報じられたことを受け、菅義偉官房長官は記者会見で、首相発言を正確に紹介。「(英独が戦った)第1次大戦のようなことにしてはならないという意味で言った」と釈明した。
 一方、首相は23日、日本国内の中国語新聞「中文導報」「東方新報」などにメッセージを送り「戦後68年間、ひたすら平和の道を歩んだ」と訴えた。「日中両国は今後さらに手を携え、地域と国際社会全体の発展のために責任を果たしていかないといけない」と呼びかけた。

首相の発言

 日中は互いに最大の貿易相手国で、日本企業の進出で中国の雇用を創出してきた。切っても切れない関係。1つの課題で門戸を閉ざしてはならず、戦略的互恵関係の原点に戻るべきだ。条件をつけずに首脳会談を行うべきで、首脳会談を重ねることで両国関係の発展の知恵が生み出される。
 (記者「日中が武力衝突に発展する可能性はないのか」)今年は第1次世界大戦100年を迎える年だ。当時英独は多くの経済的関係があったにもかかわらず第1次世界大戦に至った歴史的経緯があったことは付言したい。質問のようなことが起きると、日中双方に大きな損失であるのみならず、世界にとって大きな損失になる。このようなことにならないようにしなくてはいけない。

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