今日は新書・文庫の類ばかり。
- 竹信三恵子著『ルポ賃金差別』(ちくま新書)
- 工藤重矩著『源氏物語の結婚』(中公新書)
- 和田春樹著『北朝鮮現代史』(岩波新書)
- 高橋和之編『新版 世界憲法集第2版』(岩波文庫)
- 松岡和子訳『ウィンザーの陽気な女房たち』(ちくま文庫)
岩波新書の日本古代史シリーズ最終巻の古瀬奈津子『摂関政治』。オビにあるとおり、藤原道長を中心に、9世紀から11世紀ぐらいまでを対象にしています。
以前に、講談社の『天皇の歴史』シリーズでも書いたことですが、摂関期ぐらいになってくると、描かれている時代のスケールがうんと小さくなってしまいます。古代律令国家で権力の頂点にあった天皇が、この時代になると、ほとんど内裏から外へはでなくなり、政治もほんの近親の公卿たちによって担われてゆきます。
そのことを、本書でも著者は、天皇との私的関係によって政治がおこなわれるようになると表現するのですが、国のまつりごとが私的な関係によって処理されてゆくというのは、いったいどういうことなのでしょうか?
先日読んだ坂上康俊『平城京の時代』でしばしば言及されていたので、続けて鈴木拓也『蝦夷と東北戦争』(吉川弘文館、2008年)を読んでみました。
坂上田村麻呂の名前ぐらいは日本史の授業で習いましたが、それ以上はよくわかないという人は多いでしょう。古代蝦夷というと、むしろ高橋克彦氏の『火怨』のような小説の題材というイメージが強いかも知れません。本書は、和銅2年(709年)から弘仁2年(811年)までの「征夷」(律令国家のおこなった「東北戦争」)を取り上げ、限られた史料から「征夷」戦争の具体的なプロセスや、蝦夷(えみし)の実態、そしてそもそも律令国家はなぜ征夷をおこなったか(おこなうことを必要としたか)という問題を丁寧に明らかにしています。
シェイクスピア4大悲劇の最高峰といわれる『リア王』、読み終わりました。
いやあ、何がすごいって、リア王次々とつきまくる悪態、すごいですねぇ〜 あんなひどい悪態、落語にだって出てきません。リア王は悲劇のヒーロー? ということになるのかも知れませんが、末娘コーデリアを口べただというだけでいきなり勘当してしまうあたりは、我が儘すぎます。そして、ゴルネリとリーガンがいきなり手のひらを返したように父王に冷淡になったり、いろいろご都合主義的なストーリー展開。
それでも、諌言のために追放されながらリア王を守るケント伯爵、エドマンドの計略で乞食に身をやつすエドガーと失明させられたグロスター伯爵、などなど、魅力的なキャラクターがいっぱい登場して、飽きさせないところはさすがシェイクスピアです。狂気におちいったリア王と道化の掛け合いはほんとにおもしろかったです。
笑わせるところは笑わせて、泣かせるところは泣かせる――。さしずめ、藤山寛美の松竹新喜劇といったところ。←年取った関西人にしかわからない (^_^;)


左=松岡和子訳、シェイクスピア『テンペスト』(ちくま文庫)、右=池上永一『テンペスト』第1巻<春雷>(角川文庫)
松岡和子さん訳の『オセロー』のあとは、『テンペスト』を読み終えました。
ミラノ公国の大公位を奪われ、孤島に追いやられたプロスペローのもとに、嵐で遭難して流れ着いた簒奪者である弟のアントニオ、ナポリ王のアロンゾとその弟セバスチャンら一行。いまこそ12年前の復讐の時が来たる…。
ご存じシェイクスピアの(単独著作としては)最後の戯曲。みずから魔法を修め、嵐を起こし復讐を遂げんとする老いたるミラノ公は、精霊たちをあやつり、アントニオにナポリ王弟を唆せて、かつての自分のように兄を裏切らせようとしたり、一人娘ミランダとナポリ王の息子フェルディナンドとが恋するようにしむけたり、さらには間狂言のようにナポリ王の賄い方と道化のドタバタ騒ぎがあったりと、にくいほどの筋立てと演出です。
いま話題の、京都大学工学部原子工学科卒、日本共産党衆議院議員の吉井英勝さんの最新著『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』(新日本出版社)です。
昨年10月に発行された本ですが、実は、吉井さんがこれまであちこちの雑誌などに書かれた論文集かと思って、こんどの原発事故が起こるまで手にとってみることもしていませんでした。しかし、読んでみたら、全然違っていて、吉井さんが長年暖めていた構想にしたがって全編書き下ろされたもの。原発の危険性だけでなく、地球温暖化対策のエネルギー政策を地域経済の再生と結びつけて、どう具体化していくかが、一つ一つ分かりやすく解き明かされていて、一気に読んでしまいました。
くり返しますが、本書は昨年10月に書かれたもの(上の写真の帯は最新のですが)。ところが、本書を読んでいると、原発事故が起きたあとの現在にそのまま重なる話ばかりでした。たとえば、「はじめに」ではすでに原発トラブルによる電力不足のことが書かれています。東京電力がたびたびくり返してきた事故隠しの問題や、電力会社、原発メーカー、官僚などの「利益共同体」の話も出てきます。核廃棄物の最終処理の問題、廃炉の難しさなども明らかにされていて、つくづく今度の事故が「想定外の津波」でたまたま起こったなんていうものでないことを思い知らされました。
岩波新書「シリーズ日本古代史」の4冊目。坂上康俊氏(九州大学教授)の『平城京の時代』です。
対象は、697年の文武天皇の即位からほぼ8世紀いっぱいぐらいまで。ということで、以前に紹介した講談社『天皇の歴史』第2巻『聖武天皇と仏都平城京』とほぼ同じ時期が対象になっています。
それでも、天皇中心の前書にくらべ、本書では、第2章「国家と社会の仕組み」や、第4章第3節「荘園と『富豪の輩』」などで、この時代の国家と社会を支えた庶民の姿が取り上げられていて、おもしろい。
松岡和子さんの翻訳によるシェイクスピアの『オセロー』。
去年、二期会のオペラで見たときは、オセローがなんであんなにあっさりとイアゴーの嘘を信じてしまうのか、とあきれてしまいましたが、あらためてシェイクスピアの原作を読んでみると、オセローがまんまとだまされてしまうという筋書きはその通りだけれど、「ムーア人」にたいする差別の問題や、女性の描き方、それに松岡さんが解説で指摘されているような、デズデモーナとオセローの「年の差」の問題などなど、いろいろ奥が深いなぁ〜と感心させられました。
正式なタイトルは『原子爆弾から原子力発電まで 原子力のことが分かる本』(舘野淳著、数研出版)。
子ども向けの学習書で、ほとんどすべての漢字にルビが振ってありますが、中身は大人でも十分なほど。「原子のしくみ」「原子力の歴史」「原爆の恐るべき威力」「原子力発電という技術」の4章立てで、核分裂のしくみから放射能とはなにか、原子爆弾と原子力発電の違い、原子力発電のしくみ、原子炉の種類、原子力発電所の安全対策、核燃料ができるまで、核燃料サイクル、高速増殖炉とプルサーマル、原子力発電所事故、原子炉の寿命、原子力発電の良いところ悪いところ、などなど、一つ一つ順番に分かりやすく解説しています。
福島原発事故で、初めて原子力発電って何? と思った方におすすめの一冊です。


左=吉川真司『飛鳥の都』(岩波新書)、右=同『聖武天皇と仏都平城京』(講談社)
日本古代史のシリーズを読んでいます。1つは、岩波新書ではじまった「シリーズ日本古代史」。「農耕社会の成立」から「摂関政治」までを対象とした全6冊のシリーズで、先月、3冊目の『飛鳥の都』がでました。著者は京都大学の吉川真司氏。「七世紀史」というくくりで、推古朝の成立から遣唐使の派遣、「大化改新」、白村江の戦い、近江大津宮への遷都、壬申の乱、飛鳥浄御原令の制定・施行、藤原宮遷都あたりまでを取り上げています。こうやって概略を書き並べただけでも、激動の時代だったことが分かります。
もう1冊は、講談社が刊行中の『天皇の歴史』第2巻、『聖武天皇と仏都平城京』です。著者は同じ吉川氏で、こちらは天智朝、壬申の乱(672年)あたりから書き起こして、承和の変(842年)あたりまで。こちらは「天皇の歴史」ということなので、天智系と天武系の系譜問題や、近江令、飛鳥浄御原令から律令制の成立、さらに天皇と仏教の関係などが取り上げられています。
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