小泉内閣の外交的ゆきづまり

小泉内閣の外交的なゆきづまりが各方面から指摘されています。

これは、「中国新聞」の社説。「首相が自信を見せ、自画自賛するほど、むなしい思いにとらわれているのではなかろうか 」「『国益』を追求する外交で、持論を貫くあまり相手を黙視しては展望も開けない」と、なかなか厳しい。

社説 小泉アジア外交 空疎にひびく自画自賛(中国新聞、5/18付)

社説 小泉アジア外交 空疎にひびく自画自賛

 小泉純一郎首相は「外交は順調」と明快だ。日ごろから繰り返し、一昨日の衆院予算委員会でも、そう答弁した。予算委では特に東アジア、なかでも中国、韓国という近隣外交が質疑の中心だったが、小泉首相の姿勢に変化はなかった。
 本当に順調なのか。多くの国民は日本と中国、韓国が「腹を割った話し合い」ができる関係にあるとは思っていない。首相が自信を見せ、自画自賛するほど、むなしい思いにとらわれているのではなかろうか。
 首相のこの強気はどこからきているのだろう。一国のリーダーとして苦しさを表に出せないための強気なのか、あるいは本気で順調だと思っているのか。後者なら、問題はかなり深刻と言わざるを得ない。
 例えば中国との首脳会談。相互訪問して話し合うという最も直接的で効果的、基本的な交流が失われている。むしろ「順調ではない」ことを象徴的に物語っている。
 予算委では、昨年五月まで官房長官だった福田康夫氏が「中国との首脳会談が(相互訪問の形式で)できないのは異常な状態」とまで言い切った。外交通で内閣の要、首相の右腕だった福田氏の苦言に共感する国民は多い。
 中国で吹き荒れた反日デモは、いつ再発するかわからない。韓国との関係も、首脳間のぎくしゃくぶりが目立つし、反日デモやさまざまな抗議運動も沈静化したとはいえない。一方で日本人には両国に対する嫌悪感情が増幅されている。
 首相は「一時的、部分的」な現象と楽観視しているようだ。中韓両国には日本の「歴史認識」などに対する内向きの政治的思惑があるのは間違いないにしても、首相には何か他に裏打ちがあるのだろうか。対米関係に大きく重心を置く首相にはアジア軽視の批判がつきまとうだけに、大いに気になるところだ。
 予算委と同じ日、町村信孝外相の肝いりで外務省が開いた大使会議。世界各地に赴任中の特命全権大使を一堂に集める異例の会議の目的は、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに対する町村外相の叱咤(しった)激励だった。外相は「小泉内閣の最重要課題」と力説している。
 常任理事国入りがいつから最重要課題になったのかは知らないが、この時期に全大使を招集してまで取り組む問題なのかどうか。むしろ行き詰まった対中韓関係をいかに打開し北朝鮮の核開発問題にどう対処するか、英知を集めることこそ本筋ではないか。自民党幹事長らが郵政民営化問題を理由に訪中を急きょ取りやめたことも含め、国民とのずれが感じられる。
 そうした中、首相は予算委で今年中の靖国神社参拝の有無について「いつ行くか、適切に判断する」と参拝継続の意向をにじませた。
 同時に、参拝の取りやめを望む中国や韓国の批判に「戦没者に対する追悼の仕方について他の国が干渉すべきではない」と強い不快感を示した。正論である。だが一議員や野党党首ならいざ知らず、首相の言となれば意味合いが大きく違ってくる。「国益」を追求する外交で、持論を貫くあまり相手を黙視しては展望も開けない。[中国新聞 2005/5/18]

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

1件のコメント

  1. ピンバック: ◆木偶の妄言◆

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください