腰痛4日目…吉田孝『歴史のなかの天皇』

今日は、職場の机の並び替え作業をおこないました。といっても、僕は腰痛なので、机を運んだり動かしたりするのは他の人に任せ、パソコンとLANの配線を担当。机を動かすために、いったん外したパソコンのケーブルやらLANやらをつなぎ直して回るだけなのですが、各種ケーブルが束になってごちゃごちゃからまってしまっていて、結構手間がかかってしまいました。

そのせいか、午後になって再び腰が痛み始めてしまいました。う〜む、これは困った…。

吉田孝著『歴史のなかの天皇』(岩波新書)

ところで、出勤途中の電車の中で、1月の岩波新書、吉田孝著『歴史のなかの天皇』を読み終えました。古代史が専門の吉田先生ですが、中世、近世から近代、現代の天皇制まで話が及んでいます。古代については、いろいろ勉強になることがいっぱいありました。

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男系論の時代錯誤

女系も認めるという皇室典範の改正をめぐって、「日本会議国会議員懇談会」が反対を決議。

「男系による皇位継承の伝統を根本的に改変する」というけれど、現在の憲法になって、天皇の地位は根本的に変わったことをお忘れのようです。現行憲法の成立によって、男系男子による「万世一系」の皇統という「伝統」は否定され、天皇の地位は、あくまで「国民の総意」によるものとなったのです。「国民の総意」以外のもの――男系男子による「血統」などを持ちだして、天皇の地位を正当化しようという人たちは、まず日本国憲法を勉強し直してください。

皇室典範改正案の成立不透明 超党派議連が反対決議(北海道新聞)

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通常国会で皇室典範改正へ

有識者会議が女性・女系天皇を認めることを全会一致で決めたことを受けて、小泉首相が、来年の通常国会への皇室典範の改正案提出にむけて準備を進めていることを表明。

女性・女系天皇容認の結論になることは予想していましたが、来年の通常国会で皇室典範の改正をやってしまうつもりだったとは…。

女性・女系天皇を容認・政府が法案提出へ(日経新聞)
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奥平康弘『「萬世一系」の研究』

奥平康弘『「萬世一系」の研究』

 最近、女性の皇位継承を認めるかどうかの議論がクローズアップされ、政府も有識者会議を設けて議論を始めています。しかし、憲法学の泰斗である著者は、単純に「女帝」の是非を論じる訳ではありません。

 歴史的にみれば、女性の天皇もいましたが、女性天皇の子どもが皇位を継いだことはなく、天皇の地位が男系によって受け継がれてきたことは事実。明治の皇室典範では、それを「男系男子」に限るとした訳ですが、著者は、明治皇室典範制定過程の詳細な検討から、「男系男子」への限定が「庶出」(つまり正妻=皇后以外の女性を母親とする天皇)の容認と一体のものであったことを明らかにします。ところが、戦後、国会が審議・制定することになった現在の皇室典範では、嫡出(正妻の子ども)の男系男子に限られています。現在の「お世継ぎ」問題は、そこに端を発しているのですが、制定当時の国会審議の検討から、当時、支配層は、そういう事態が起こりうることは認めつつも、「当分、そんな事態は起こらないから大丈夫」と事実上先送りしたことが分かります。

 もちろん著者の主張は、庶出を容認せよということではありません。もはや時代は庶出の「象徴」を容認するような状況にはありません。しかし、だからといって「女帝」を認めよ、「男子に限るのは女性差別だ」というだけでは、憲法論議として不足であると著者は指摘します。象徴天皇という制度そのもののもつ不平等さを問題にすべきだというのです。
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皇室典範有識者会議 2回目の「学識経験者」ヒヤリング

高森明勅氏と所功氏が女系を容認したのは意外。「保守派」と「開明派」とでバランスをとったというだけでなく、「保守派」の中でも、神懸かり的な復古派と、女系容認派でバランスをとったという感じがします。

で、その分類でいくと、山折氏は「開明派」に入らなければならないはずなのですが、天皇のカリスマ性は大嘗祭だというのは唖然…。鈴木正幸氏は、女系・男系は態度を表明しなかったということですが、「天皇に積極的な国民統合の役割を求めない立場からすれば、どちらでもいい問題」ときっぱり言い切った横田耕一先生に比べると、やっぱり見劣りしてしまいますねぇ…。(産経の報道なので、バイアスがかかっている可能性はありますが)

ところで、先日の会議での横田耕一先生の発言要旨が、内閣府のホームページにアップされました。一読も二読もする価値あり、の堂々としたご発言です。

皇室典範有識者会議 「女帝」専門家見解割れる 次回から委員本格討議(産経新聞)
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この際だから、勤労奉仕団も廃止しては?

宮内庁が、恩賜煙草の廃止を決定。

記事中に、皇居の清掃をボランティアでおこなっている「勤労奉仕団」という記述が出てきます。勤労奉仕団といえば、江口渙だったか、「落ち葉を掃く庭」という小説があったような…。(←記憶曖昧モード)
勤労奉仕団を描いたのは、手塚英孝の「落葉をまく庭」という小説でした(N久さんよりご指摘いただきました。ありがとうございます)。勤労奉仕団が皇居の庭を掃除して、いったんは落葉を全部掃き集めるのですが、そのあと、天皇の好みに合うように、集めた落葉のなかから比較的きれいなものを選んで、もう一度「自然」な感じに落葉を庭にまき直すという話です。

恩賜たばこ 来年度までに廃止へ 禁煙の高まりを考慮(毎日新聞)

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戦後も統治者のつもりだった人…

朝日新聞が、一面トップで、米公文書の公開で、1953?72年の昭和天皇の発言が確認されたと報道しています。

たとえば、1953年4月20日には、離日するロバート・マーフィー大使に、昼食会の席で次のように発言したそうです。

 朝鮮戦争の休戦や国際的な緊張緩和が、日本の世論に与える影響を懸念している。米軍撤退を求める日本国内の圧力が高まるだろうが、私は米軍の駐留が引き続き必要だと確信しているので、それを遺憾に思う。

天皇の政治的発言というと、進藤栄一氏が発掘した1947年9月の発言が有名です。すなわち、宮内庁御用係の寺崎英成氏を通じてアメリ側に、「天皇は、アメリカが沖縄を初め琉球の他の諸島を軍事占領し続けることを希望している」「天皇が更に思うに、アメリカによる沖縄(と要請があり次第他の諸島嶼)の軍事占領は、日本に主権を残存させた形で、長期の――25年から50年ないしそれ以上の――貸与をするという擬制の上になされるべきである」と伝達させました(進藤栄一「分割された領土」、岩波書店『世界』1979年4月号、岩波現代文庫『分割された領土』2002年、所収)。

これらを読むと、戦後、新しい憲法によって、たんなる「象徴」となって、「国政に関する権能を有しない」とされたにもかかわらず、このおじさん、戦前と何も変わらず、相変わらず自分が日本の統治者であるようなつもりだったことがよく分かります。
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横田耕一先生、よくぞ言ってくれました!

昨日開かれた「皇室典範に関する有識者会議」での横田耕一先生の発言要旨が、読売新聞に紹介されています。朝日新聞も、それなりに詳しく紹介していますが、横田先生の言わんとすることがいちばんよく分かるのは、これでしょう。

横田耕一・流通経済大教授(憲法学)
 本来考えるべきは、何のために皇位を継承するのか、天皇に何を期待するのか、という点だ。積極的な国民統合の役割を天皇に期待しない立場からすれば、男系、女系どちらでもよい。そもそも養子や皇籍復帰という無理をしたり、伝統を変え女性天皇を認めたりしてまで天皇制に固執する必要があるのか疑問だ。既に「権威ある天皇」は世論の支持を失っており、女性天皇が実現すれば「親しみのある天皇」になるかも知れないが、そこまでして天皇を置く必要があるのかが将来問われるだろう。いずれの方策をとっても、天皇制の存在意義が問われる。[読売新聞 2005/06/01付13面]

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それは近代天皇制か?

昨日付の「東京新聞」夕刊の文化欄「土曜訪問」に、明治学院大学教授の原武史氏のインタビューが掲載されています(「近代天皇制を考える 国民が『知る』ことから議論を」)。

原氏は、明治憲法下の近代天皇制は、現在の日本国憲法の下で「象徴」に変わったことによって「終わったはず」だったにもかかわらず、実は「いまも本質的には変わっていない」という。で、その本質とは何か? 原氏の指摘によれば、「天皇の最大の公務」は、宮中祭祀であり、それは「国民の平安のために祈ること」だという。
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現在の憲法第1章をどう読むか

現在の憲法第1章は、章題は「天皇」になっていますが、中身はといえば、第1条で天皇は「象徴」であって元首でないこと、しかもその地位は「主権者である国民の総意にもとづく」ことを宣言しています(つまり、「国民の総意」でその廃止も可能ということ)。また、第4条では「国政に関する権能を有しない」ことを規定。その他、国事行為にかんする条項でも、制限列挙により、憲法に書かれた国事行為以外の行為は行い得ないこと、しかもその国事行為は内閣の助言と承認にもとづいてしかできない、あるいは内閣総理大臣の任命についても、国会の指名を拒否できないようになっています。

つまり、形式的には天皇について定めた条項ですが、内容的には、国民主権の原則から、天皇に制限を加える条項になっています。もちろん、そもそも天皇なんていう制度はいらないという立場からすれば不要な章でしょうが、とりあえず現在の憲法を前提に考えるとしたら、第1章は、象徴天皇制が存続するという状況のもとでの国民主権を規定したものと読めるのではないでしょうか?

なぜこんなことを言うかというと、中曽根元首相の改憲案が、なかなか手の込んだことをやってるからです。

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やっぱり男系主義でいくつもり?

産経新聞によれば、政府は、皇室典範に関する諮問会議で、旧宮家からの養子を認めるかどうか検討することを決めたそうです。

「女性天皇」容認かと大きくアドバルーンを上げておいて、結局、このあたりに落ち着かせるつもりなんでしょうか? はたまた、「復古派」向けのポーズ? まあ、産経らしいニュースといえますが…。

旧皇族から養子検討 皇室典範有識者会議 「男系継承」探る(産経新聞)
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う〜む、本気か…?

政府が、皇位継承を女性にも広げるなど、懇談会を開き議論する方針を固めたそうです。

女性が天皇になってもいいのでは?と考えるのは簡単だけれども、男系女子に限るのか、女系女子も認めるのか、男子がいないときにのみ女子の皇位継承を認めるのか、性別に関係なく長子からにするのか、傍系男子と直系女子とどちらを優先するのか、結婚した女性はどうするのか、など議論が始まれば論点は意外に広い。また、皇族が増えたり新宮家を立てたりすることになれば、財政問題も議論になるでしょう。

それより、本気で制度変更をやろうというのか、それとも小泉首相一流の“人気取り”か、はたまた、棚上げされた自民党の憲法改正大綱素案よろしく憲法「改正」論議への“呼び水”にするつもりなのか。そっちの方が気になります。

女性皇位継承で懇談会設置へ(NHKニュース)
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「君が代・日の丸」は強制でないことが望ましい 園遊会で異例の発言

28日の園遊会で、天皇が、東京の学校現場での「君が代・日の丸」問題について、「強制になるということがないのが望ましい」と発言。

これは、棋士の米長邦雄氏が東京都の教育委員であることを十分に承知した上で、天皇が声をかけ、それにたいし米長氏が「日本中の学校に国旗を揚げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と答えたのにたいする発言です。
これを天皇の政治への介入ととるか、はたまた、あまりにも目に余る強行ぶりに「宸襟を悩ませておられる」と受け取るのか…。米長氏の発言をそのまま受けて「がんばってください」などと言ったら、それこそ「日本中の学校に国旗を揚げ、国歌を斉唱させることが私の仕事」などという“過激”発言に「お墨付き」を与えたことになりかねないので、それを避けたということだけは確実に言えるでしょう。

いずれにしても、東京都のやり方が“誰がみたって”目に余るものであることだけは、いっそう明らかになった訳です。

強制でないことが望ましい 陛下、園遊会で異例の発言(共同通信)
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