守屋典郎『日本マルクス主義の歴史と反省』について

守屋典郎『日本マルクス主義の歴史と反省』

守屋典郎『日本マルクス主義の歴史と反省』

数日前から、守屋典郎氏の『日本マルクス主義の歴史と反省』を読んでいます。その前の『日本マルクス主義理論の形成と発展』は面白かったのですが、『歴史と反省』になると、ちょっと…。

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この間読んだもの 賃金論と富塚恐慌論

1つめは、60年代末に出た『講座 現代賃金論』(青木書店)の第1巻「賃金の理論」。いまさら、40年近く前の本をなぜと思われるかも知れませんが、前にも書いたように、賃金論そのものを勉強したことがないので、とりあえず昔の講座あたりをということで、選んでみました。

もう1つは、これも古い本ですが、富塚良三氏の『増補 恐慌論研究』(未来社、初版1962年、増補版1975年)。こっちも前に書いたことがありますが、富塚氏の均衡拡大再生産軌道を勉強し直すためです。

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読んでいます 大谷禎之介編著『21世紀とマルクス』

大谷禎之介編著『21世紀とマルクス』(桜井書店)

発売になったばかりの大谷禎之介編著『21世紀とマルクス―資本システム批判の方法と理論』(桜井書店)を、読み始めています。

本書は、大谷禎之介氏の法政大学退職(2005年3月)記念の論文集ですが、『資本論』の理解にもかかわるいくつかの論文もあって、なかなか面白く読み始めています。

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実質賃金率について 置塩信雄『蓄積論(第2版)』(1)

実質賃金率はいかに決定されるか。

  • マルクスも古典派も、労働力市場の需給の緩急によって実質賃金率は下落、上昇するという見解をとっている。しかし、これは承認しがたい。(p.57)
  • 実質賃金率は貨幣賃金率とは別の概念で、労働1単位当たり賃金(貨幣賃金率)で購入できる消費財の量で定義される。(p.59)
  • しかし、労働力市場での需給関係によって影響されるのは、さしずめ貨幣賃金率であって、実質賃金率ではない。(p.59)
  • 失業がかなり発生し、貨幣賃金率が下落をしている場合、消費財か価格がどのような運動をおこなうかを知ることなしには、実質賃金率の変化方向をいうことはできない。一般的過剰生産による生産の全般的収縮による場合、消費財部門において過剰生産=超過供給があり、消費財価格は下落する。この段階での実質賃金率の水準の運動は、貨幣賃金率と消費財価格の下落率の相対的関係によって決まる。この場合、貨幣賃金率の下落率より、消費財価格の下落率の方が大であり、したがって、実質賃金率が上昇する場合が十分あり得る。(p.60)

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置塩信雄『蓄積論』(第1版)

置塩信雄『蓄積論』(第一版)を読み終えました。感想を一言でいうなどと言うことはできませんが、マルクス経済学が、資本主義経済の体制的な特徴、基本的性格を明らかにするだけでなく、景気変動の局面を動態的に分析できるんだということが非常に新鮮な発見でした。

あと、重要なポイントとしては、貨幣賃金率と実質賃金率の区別。それから、平均利潤率というのが、スムースな資本移動といった平和的な運動で実現するものではなく、好況・恐慌という景気循環を通じて初めて実現されること。あと、恐慌における下方への累積過程のなかで、実質賃金率の上昇・利潤率の低下から、資本家に新しい生産技術の採用が強制されること。そして何よりも、資本の有機的構成を高めない技術革新というものがありうること、などなど。少しずつノートをつくって公開するつもりです。

置塩信雄『蓄積論』(5)

第3章 資本制的蓄積と恐慌

4、反転

a、暴力的均衡化

上方への不均衡累積過程においては、次のような不均衡が累積していった。(イ)生産能力と市場の不均衡、(ロ)労働力供給と労働需要の不均衡、(ハ)諸商品の価値(労働生産性)と価格の不均衡、(ニ)各部門の利潤率の不均衡。
これらが、恐慌によって暴力的に均衡化される。(260ページ)

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置塩信雄『蓄積論』(2)

第2章 資本制的拡大再生産

4、「均衡」蓄積軌道

d、均衡蓄積軌道――技術変化のある場合

  • 生産技術が毎期一定率で変化する場合、実質賃金率が一定だとすれば、生産財部門の比重 λ は毎期上昇してゆく。つまり、このばあいには消費財1単位を生産するために直接・間接に必要な労働量が減少しているのに、実質賃金率が一定であるから、搾取率が上昇し、それが生産財の追加生産に回されるということ。
  • これにたいし、実質賃金率が労働生産性の上昇と同じ率で上昇してゆくとすれば、搾取率は不変にとどまり、生産財部門の比重は変化しない。ただしこれは、両部門における a1、a2(それぞれ1単位生産するのに必要な生産財の量)が変化しないというタイプの技術変化を想定したから。マルクスが想定したような、生産の有機的構成の高度化を伴うような生産技術の変化があった場合は、実質賃金率と労働生産性の上昇率と同一率で上昇し、搾取率が不変であっても、a1、a2が増加するから、生産財部門の比重は毎期増大してゆく。
  • 実質賃金率が一定であれば、生産財部門の比重 λ 、生産財生産の増加率 g は毎期上昇してゆかなければならず、もし実質賃金率が労働生産性と同一率で上昇すれば、λ と g は毎期不変となる。
  • このとき、消費財生産の増加率はどうなるか。もし、λ 一定なら、消費財生産部門の増加率は生産財生産部門の増加率と等しくなければならない。
  • それにたいし、実質賃金率がすえおかれて生産財生産部門の比重が毎期増大していく場合には、消費財生産部門の増加率は、生産財生産部門の増加率より小にならざるをえない。労働生産性の上昇率が充分に大きい場合には、消費財部門の生産量の変化はゼロまたは負になることもありうる。

(180〜181ページ)

置塩信雄『蓄積論』

置塩信雄先生の『蓄積論』を読んでいますが、これはなかなか相当な本ですね。

これじゃあ意味不明(^^;)ですが、こんなすごい中身だったとは…、なんでいままでちゃんと読まなかったんだろうと後悔することしきりです。この本の中で置塩氏は次のようなことを明らかにしています。

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