知り合いから“何かパレスチナ問題について適当な本を知らないか?”と聞かれ、本屋でパラパラ立ち読みして、「とりあえず…」と横田勇人著『パレスチナ紛争史』(集英社新書、5月刊)を紹介したのですが、紹介した責任上(?)、この本を読みました。著者は、日本経済新聞の記者で、カイロ支局長を務めたこともある中東担当の国際部記者です。で、結論からいうと、かなりしっかりしたお薦めの本です。
サイクス・ピコ条約やバルフォア宣言から書き始めていますが、中心は80年代のインティファーダ以降の話で、オスロ合意にいたる過程や、シャロン政権誕生前後からごく最近までの動きまで、イスラエル、パレスチナ双方の政治的背景などを含め詳しく紹介しています。イスラエルが正しいのかパレスチナが正しいのかという“形而上学的”な議論をめぐらせるのではなく、現実的に、どうやってパレスチナ問題の“解決”を実現させるのか、そのためにイスラエル、パレスチナ、それにアメリカ、その他の国際社会はどうしようとしてきたのか、またどうしたらよいのかという態度で書かれています。僕自身、80年代にはいってからの動きはあんまりきちんと追っかけていなかったので、勉強になりました。