誰と「了解」したのか?

自衛隊の多国籍軍参加にあたって、自衛隊は多国籍軍の指揮はうけないという日本と米英政府との「了解」なるものが、ようやく公表されました。しかし、発表された文章は、日本の公使と相手国政府高官との「了解」というだけで、相変わらず、「了解」に達した相手が誰なのか不明です。

外務省「自衛隊が多国籍軍の中で活動する場合の活動のあり方に関する米国、英国との了解について」(「毎日」6月21日付夕刊による)

1、(1)自衛隊が多国籍軍の中で活動する場合の活動のあり方については、6月8日、わが方在英国大使館公使と英国外務省高官との間で、また、6月9日、わが方在米国大使館公使と米国国務省高官との間で、下記の内容について公表することを含めて了解に達している。
 (2)この了解の内容は、事前にそれぞれの政府部内で正式な検討を経たものであり、この了解は、外交慣例にのっとり、政府間で確認された公式な了解である。
2、了解に達した内容
 (1)人道復興支援が多国籍軍の任務に含まれることは、新たに採択された安保理決議1546及び同決議に添付されているパウエル米国務長官発安保理議長あて書簡において確認されている。
 (2)イラクの完全な主権の回復後、イラクで活動する自衛隊は、多国籍軍の統合された司令部の下、これまでと同様に人道復興支援を中心に活動する。
 (3)イラクにおける自衛隊は、あくまでも、イラク特措法に基づきわが国の指揮の下において活動を継続し、多国籍軍の指揮下で活動することはない。
 (4)すなわち、自衛隊はイラク特措法に基づき活動し、さらにイラク特措法や基本計画に定める自衛隊の活動に係る要件が満たされなくなった場合や、わが国が政策的に適切と判断する場合には、イラクにおける自衛隊の活動をわが国の判断により中断あるいは自衛隊をイラクより撤収させることができる。
 (5)自衛隊のイラクでの活動に対するイラク政府よりの同意及びその活動に関するしかるべき法的地位は、多国籍軍の一員として確保される。

2の(5)項は、自衛隊はイラク政府との間で直接駐留にかんする取り決めを結ばないということを意味しています。イラク政府から見れば、自衛隊は多国籍軍の一員として多国籍軍のコントロールを受けるからこそ直接の協定を結ばないで駐留を認めるということです。多国籍軍の指揮も受けず、イラク政府と協定も結ばない軍隊が、勝手にイラク国内に駐留する…こんなことはあり得ません。だから、この条項こそは、実は自衛隊が多国籍軍の指揮下に置かれているということを言外に証明しているのです。

さらに1(1)を読んでいると、この文書は、日本と米英政府との間で、自衛隊の地位について「了解」に達したと言うことではなく、日本政府が「こんなふうな了解が存在すると公表」するけれども、それは日本国内向けのことだから気にしないでくれ、という「了解」ではないかと思えてきます。

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