置塩信雄『蓄積論』(5)

第3章 資本制的蓄積と恐慌

4、反転

a、暴力的均衡化

上方への不均衡累積過程においては、次のような不均衡が累積していった。(イ)生産能力と市場の不均衡、(ロ)労働力供給と労働需要の不均衡、(ハ)諸商品の価値(労働生産性)と価格の不均衡、(ニ)各部門の利潤率の不均衡。
これらが、恐慌によって暴力的に均衡化される。(260ページ)

(イ)生産能力と市場の不均衡

この不均衡は上向過程では、諸商品にたいする超過需要という形態であらわれ、累積的に増大する。しかし、実はその内容は、社会の生産能力が人々の消費を上回り、そのギャップが累積的に拡大してゆく過程なのである。この生産能力と消費とのギャップの拡大にもかかわらず、諸商品市場では過剰生産ではなく超過需要が生じ、それによって一層このギャップを拡大してゆくことができたのは、資本家階級の蓄積需要によって、このギャップが吸収されていったからである。労働者の消費を制限しながら、拡大してゆく生産能力のより多くの部分を毎期、生産能力の増加にふりあててゆく。そこには明白に生産と消費の矛盾がある。資本家の蓄積需要が累積してゆくうちは、にもかかわらず、この矛盾は過剰生産として顕在化せず、激しくなってゆく。しかし、前節でのべた、いずれかの諸契機によって、資本家の蓄積需要が減退せざるをえなくなったとき、この矛盾は明白にあらわれる。拡大した生産能力と制限された消費のギャップが暴力的に縮められねばならない。(260ページ)

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