参議院選挙の結果が確定しました。
自民党が、選挙区でも比例区でも民主党に及ばなかったということは、“小泉人気”の終焉を表わすものといえるでしょう。しかし、民主党が躍進したと言っても、与党・野党で比べてみると、与党は、自民党マイナス1、公明党プラス1で与党全体としては改選前と変わらず。野党は、民主党がプラス12、共産党がマイナス11で、結局、民主党が共産党の議席を奪って「躍進した」ということです。選挙区で言えば、民主党と共産党がいれかわったところのほかに、民主党が自民党から議席を奪ったところや、自民党が候補者を1人に絞った結果、共産党が落選したというところもありますが、比例では、自民党がマイナス1、公明党がプラス2、民主党がプラス5、共産党がマイナス4、ということで、やっぱり大局では、野党の中で民主党が伸びた分、共産党が減ったという関係になっています。
同じことは論戦でもいえると思います。
年金問題でも、「保険料は上がっても上限がある」「給付は下がっても現役世代の50%は保障する」という“100年安心”理論がまったくのウソだったことは、共産党が主導して暴露したことでした。国会議員未納問題でも、各党が進んで所属議員の年金納入状況を公表するという流れをつくって、小泉・自民党(最後まで党として納入状況を調査もせず公表もせず)、公明党(法案を強行した後、神崎代表をはじめ党幹部がうちそろって未納だったことを公表せざるをえなかった)を追いつめていったのも共産党です。民主党は、菅直人前代表の未納が分かって、一旦は腰砕けになり、「三党合意」で年金改悪法案強行に手を貸したのでした。
しかし、年金問題での国民の不満がわき上がるにつれて、民主党の「年金改革」案が実際にはどういう案なのか知られないままに、小泉首相・自民党への怒り=民主党へという流れができあがってしまったと思います。実際、民主党の「年金改革」案というのは、保険料を上げない代わりに、2007年度から消費税を3%引き上げるというもの。消費税1%で約2.5兆円の負担増なので、これだけで約7.5兆円の負担増、国民1人あたり(赤ん坊から高齢者まで全部平均して)年間6万円の負担増になる計算です。これって、実際には、自民党・公明党の年金保険料引き上げの額よりも大きいのです。しかし、この点は選挙戦で争点となることはありませんでした。
そして、小泉首相・自民党への怒り=民主党へという流れは、7月4日前後に新聞各紙が世論調査の結果から「自民苦戦、民主善戦」と打ち出してから、一気に強まったといえます。
自衛隊・イラク問題でも、同じ構図が存在します。
民主党は、もともと「国連決議にもとづくなら自衛隊の海外派兵もありうる」という立場でした。ところが、小泉首相が国内議論ぬきに、自衛隊の多国籍軍参加をブッシュ大統領に表明したことで、国民の批判が強まり、民主党は「自衛隊を撤退させる」という主張を前面にかかげてゆきました。そこをとらえて、小泉首相が「民主党はいうことが矛盾している」と攻撃したのは、けっして根拠のない非難ではありませんでした。しかし、結果として、この小泉首相の民主党攻撃は功を奏せず、民主党のもともとの主張はやっぱり争点とならず、イラク自衛隊問題でも小泉批判票は民主党へ向かいました。
結局、自民・公明vs共産という対決軸で争われるべき争点は、自民vs民主の対決にすりかわり、そうした流れを、マスコミの“二大政党制”論が後押ししました。あるいは、“二大政党制”論の流れの中で、本来の対決軸がすりかえられたというべきかも知れません。その結果、共産党の議席を奪って民主党が「躍進」するという結果となったのではないでしょうか。
したがって、今回の民主党「躍進」の結果について、国民の期待と民主党の実態の間には、少なからぬギャップが存在する、そのギャップは、今後の政治状況の進展の中で自ずから明らかにならざるをえないと思います。それが、いつ現実の問題として浮かび上がるかは分かりませんが、そういう矛盾は、国民的な運動ぬきに表面化することはありえません。また、本当に国民の立場でこの日本の改革をすすめていこうという立場にたつ人たちが、今回の選挙結果に茫然自失して、いざそうした矛盾が現実化したときに、“激動”の情勢に立ち遅れるということがないように、自分たちが求めた改革の方向に確信を深めつつ、明日から、ふたたび元気よく“草の根”からの運動を広げていくことが求められていると思います。