日本歯科医師会の政治団体である日歯連(日本歯科医師連盟)から自民党橋本派に1億円の資金がわたっていたことが明らかになり、橋本派もそれを認めました。
問題の1億円は、小切手で、2001年7月3日に料亭で橋本元首相に手渡され、橋本元首相から事務方に渡されたのを、事務方が政治資金収支報告書に「記載し忘れた」ということだそうです。しかし、小切手の換金はちゃんとやっておきながら、収支報告書への記載は「ついうっかり忘れました」というのは、あまりに身勝手な話です。
しかも、こういう巨額なヤミ献金が発覚しても、「記載漏れでした」と遡って訂正すれば罪に問われないというのは、いまの政治資金規正法が実は全然「規正」になっていないという証拠です。
さらに、日歯連側が領収書を求めたのにたいし、橋本派側は領収書を渡さなかったということですが、橋本派のなかからは、このことをもって、「どういう趣旨のお金か分からなかったので、とりあえず保留しておいたのではないか」などと言い逃れ発言が出ています。しかし、“領収書も渡さず、政治資金収支報告書にも記載しない”というのは、ヤミ献金として処理しようとしていたということではないでしょうか? この点を含め、二重に“献金隠し”を謀った悪質な事件だと思います。
ちなみに、橋本元総理は、マスコミの質問に「何か責任がありますか?」と答えたそうですが、政治団体の代表者である以上、責任があるのは当然です。「平成研究会」の政治資金収支報告書の表紙には、代表者の氏名として「橋本龍太郎」と明記されています。ちなみに、政治資金収支報告書の提出責任は会計責任者にありますが、「平成研究会」の会計責任者は瀧川俊行、平成14年度の場合、実際の事務担当者は天野優子となっています。
さらにもう1つ。平成14年度の平成研究会の政治資金収支報告書をみて気がついたのですが、「平成研究会」の1年間の寄付は全部で9000万円ほど。一番多いものでも1000万円で、大部分は100万円単位の寄付です。これで1億円の寄付を記載し忘れるなどというのは、まったくありえない話です。
また、繰越金を除くと、年間の収入と支出は4億円から5億円程度です。だから、収支報告書に記載し忘れた収入1億円があったら、収支の帳尻はかなり合わないことになるはず。政治資金収支報告書は、監査をへなければいけないのだから、なおさら、これほどの誤差がみすみす見逃されるというのはありえないことです。橋本派側は、この1億円は派閥の経費で使ってしまったと言っていますが、だとしたら、2001年度の収支報告書の支出報告がまったくのでたらめだったということです。そうでなく、支出は報告どおりだったとしたら、繰り越し資産が実はさらに1億円ありましたということになります。だとしたら、2001年度の収支報告書だけでなく、それ以後の収支報告書全部でたらめということでしょう。いずれにしても、「担当者が記載を忘れた。けしからん話だ」ではすまない話です。
1億円入金、橋本派認める…収支報告を訂正
日本歯科医師会(日歯)の前会長・臼田貞夫被告(73)らが2001年に自民党橋本派(平成研究会)に1億円の小切手を提供した問題で、橋本派幹部は15日午前、日歯側から受け取った1億円について、橋本派の口座に入金されていたことを認めた。
橋本派の政治団体の政治資金収支報告書にはこの1億円の収入は記載されておらず、同派は14日付で収支報告書を訂正した。政治資金規正法違反(虚偽記入)の疑いがあるため、東京地検特捜部は献金の経緯などを調べている。 橋本派の政治団体「平成研究会」の収支報告書の訂正は、日歯の政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)から2001年7月3日付で1億円の寄付を受けたというもの。
橋本派幹部によると、橋本元首相は14日に行われた同派拡大幹部会で、日歯側からの1億円受け取りについて経緯を説明した。元首相は「日歯と何人かで食事をした時に、封筒のようなものをもらい、後で開けてみたら小切手が入っていた。これは献金だなと思って、事務所長に渡した。事務所長が後で換金した」と話した。
橋本派幹部によると、事務所長は小切手を銀行で換金したが、時期については「よく覚えていない」と語っているという。事務所長は政治団体「平成研究会」の会計責任者を務めている。
1億円を支出した日歯連側は、橋本派側に再三、領収書を出してくれるよう求めたが、応じてもらえなかった。この点について、別の橋本派幹部は「自民党の顧問弁護士や経理局と相談したうえで、趣旨がはっきりするまで、対応を留保した形になっていたようだ」と説明している。
橋本元首相は15日午前、都内の事務所で記者団に対し、「私がもらったものではない」と述べた。
政治資金規正法は、政治団体の会計責任者にすべての収入、支出を記載した収支報告書の提出を義務づけており、虚偽の記入をした場合、5年以下の禁固または100万円以下の罰金が科せられる。政治団体の代表者が、会計責任者の選任・監督について相当の注意を怠った場合にも、50万円以下の罰金となる。(読売新聞)