置塩信雄『蓄積論』(10)

第2章 資本制的拡大再生産

4、「均衡」蓄積軌道

d、蓄積均衡軌道――技術変化のある場合

生産技術が変化してゆく場合の均衡蓄積経路について(184?185ページ)

  1. ここの均衡蓄積経路も一定率の失業率をもつ。この失業は、生産技術の変化によってつくり出される。
  2. 生産技術の変化をともなう均衡蓄積経路においては、労働供給が一定であっても拡大再生産が可能である。
  3. 均衡蓄積経路に対応する「均衡」搾取率が決定される。これは、生産技術の変化なき均衡蓄積経路に対応して、実質賃金率が決まったことに対応している。労働供給増加率が大なる場合は、この長期的・平均的「均衡」搾取率は上昇する。また、労働生産性の上昇率 α が大になった場合も、搾取率は上昇するが、その場合実質賃金率の上昇率も大になる。
  4. 均衡蓄積経路では、実質賃金率が労働生産性の上昇率と同一の率で上昇するということは、けっして、現実の資本制における実質賃金率が、毎期、労働生産性の上昇率と同一の増加率で上昇していくということを意味しない。均衡蓄積過程は、上方、下方両方向への累積的乖離とその逆転を通じて、長期的・平均的に実現されるしかない。上方への乖離過程では、搾取率は上昇し、下方への乖離過程では搾取率は下落する。このような循環を通じて、搾取率は一定の水準をとる。
  5. ここでは、均衡蓄積過程において順調に新技術の導入がおこなわれるとしてきた。しかし、現実の新技術の導入、普及と旧技術の駆逐は、均衡蓄積軌道よりの上方・下方への乖離とその逆転を通じておこなわれる。新技術の導入と下方乖離過程の反転、旧技術駆逐と上方乖離過程の逆転=恐慌とは密接な関連をもっている。

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