イスラエルが建設を進めている分離壁の撤去を求める国連総会決議が、150カ国の賛成で採択されました(加盟国総数は191カ国)。分離壁は、国際司法裁判所の勧告的意見によって「国際法に違反する」と指摘されていたもの。アメリカ、イスラエル、オーストラリアなど6カ国が反対、カナダなど10カ国が棄権、日本は賛成しました。
国連特別総会:イスラエルによる分離壁撤去決議案を採択(毎日新聞)
国連特別総会:イスラエルによる分離壁撤去決議案を採択(毎日新聞)
【ニューヨーク高橋弘司】パレスチナ過激派の侵入阻止を狙い、イスラエルがヨルダン川西岸に建設を続けている分離壁について、国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)が「違法」との勧告的意見を出したことに関連し、国連緊急特別総会は20日、アラブ諸国などが提案していた分離壁の撤去などを求める決議案を圧倒的多数で採択した。総会決議に拘束力はないものの、イスラエルに対する厳しい国際世論を反映したものといえる。
採決の結果、日本を含む150カ国が賛成、米、イスラエル、オーストラリアなど6カ国が反対。カナダなど10カ国が棄権に回った。
採択された決議は、建設済みの分離壁の撤去や今後の建設中止を求めるとともに、国際司法裁判所が勧告的意見で、分離壁について「国際法に違反する」と指摘し、イスラエルが建設に伴うすべての被害補償の義務を負うとしたことなどを「特に留意する」とした。イスラエルに対し、勧告的意見で指摘された法的義務を履行するよう求めた。
また、パレスチナ過激派による自爆テロを踏まえ、「すべての暴力やテロ、破壊行為を非難する」とした。さらにイスラエル、パレスチナ双方が、その共存を目指し、国連、米、露、欧州連合の4者がまとめた新中東和平案「ロードマップ」で定めた義務を履行するよう改めて呼びかけた。
アラブ諸国が当初提出していた決議案の文言が一方的だったことなどから、欧州連合が中心になって粘り強く修正を求め、テロ非難などの文言を盛り込んだ上で採決にこぎつけた。
パレスチナ自治政府のアルキドワ国連代表は、イスラエルが決議に従わない場合、国連安保理での制裁決議を求めているが、米国が拒否権を行使するのは必至。このため、追加決議に向け、緊急特別総会が再招集される可能性がとりざたされている。[毎日新聞 2004年7月21日 11時06分]