チャルマーズ・ジョンソン『帝国アメリカと武力依存の構造』(集英社新書、2004年7月刊、693円)を読み終えました。2002年と2004年に発表された3つの論文(もちろん英文で発表されたもの)が邦訳されています。
収録論文は以下の3つ。最初のものが2002年の論文で、後の2つは2004年に書かれたものです。
- アメリカ軍国主義とブローバック――ペンタゴンに外交政策を委ねる代償
- 3つの冷戦
- 武力は過ちを犯す――東アジアにおけるアメリカ軍の影響
「ブローバック」というのは、外国にたいする秘密作戦によって生じる、意図しなかった副産物のこと。かつてアメリカは、イラン革命に対抗するためにイラク・フセイン政権にてこ入れしたし、ビン・ラーディンはアフガニスタンで反ソ内戦を戦わせるためにCIAが支援した人物だった、などなど。それが、気がつくと手に負えない反米勢力となってしまった…。これがブローバックです。
ところで、アフガニスタンについては、アメリカはソ連のアフガニスタン侵攻(1979年12月)以降、関与するようになったということになっていますが、実は、ソ連介入の半年前から関与していたということが暴露されています。
2つ目の論文では、ヨーロッパ、東アジア、中南米という3つの冷戦を取り上げ、ソ連との対抗に勝ったことからアメリカの「勝ち誇り」が表面化し、それが世界の反発をまねいていることを指摘しています。中南米の冷戦では、「オペレーション・コンドル」――アメリカの息のかかった独裁政権に反対する労働組合や政党幹部などを現地政権に逮捕・拷問・虐殺させるというもの――へのアメリカの関与が、生々しく紹介され、糺弾されています。
第3論文では、東アジア、とくに沖縄の米軍基地をめぐる問題が詳しく論じられています。そして、米軍基地の存在が、アジア諸国の反発を招いていると指摘しています。
日米同盟は当たり前のものだと思っている人にも、ぜひ薦めたい一冊です。ここでとりあげられた問題――もちろんそれは、アメリカの側から見た問題として書かれていますが、それを直ちに認めるかどうかは別にして、はたしてジョンソン氏の指摘するとおりなのか、アメリカの外交戦略がどんな問題を生み出しているか、ぜひ自分なりに検証してほしいです。