米軍の世界的な再編計画にともなって、在日米軍基地の再編問題が浮上していましたが、産経新聞は、それについて米政府が「仕切り直し」を提案したと報じています。
いちおう、日本国内の「混乱」に配慮した形になっていますが、世界的な米軍再編の計画自体は着実に実行される訳で、在韓米地上部隊の大幅削減などがすでに決まっている以上、「仕切り直し」といっても、問題をいったん先送りして「沈静化」しよう、あるいは日本政府に暗々裏の根回しを押しつけて、解決を図ろうというものであることは疑いありません。
在日米軍再編 米、仕切り直し提案 日本側反発など配慮(産経新聞)
在日米軍再編 米、仕切り直し提案 日本側反発など配慮
在日米軍の再編問題で、米政府が日本政府に「在日米軍の配置については、仕切り直して協議したい」と、今後白紙の立場で協議に臨む方針を伝えてきたことが26日、分かった。米政府高官が日本政府高官へ伝えた。米政府が、在日米軍の移転先とされた地元自治体の反発など日本の国内事情に配慮したものだ。米国防総省は世界規模での米軍再編(トランスフォーメーション)の一環として、在日米軍基地の再編を検討しているが、日米協議は長期化する見通しが強まった。
米サンフランシスコで7月15日から17日に開かれた日米外務・防衛審議官級協議では、米国防総省側が非公式に(1)米本土ワシントン州にある米陸軍第一軍団司令部の座間基地への移転(2)グアムの米第一三空軍司令部を横田基地の米第五軍司令部への廃止・統合?を伝えた。
しかし、このほかにも、国防総省の一部が(1)座間移転後の米陸軍第一軍団司令部のトップを陸軍大将に昇格(2)航空自衛隊の航空総隊司令部(府中)の横田移設(3)沖縄駐留海兵隊の一部削減と一部演習の豪州などへの移転(4)米空母艦載機の夜間離着陸訓練(NLP)の厚木基地から岩国基地への移転?など再編構想を外務省や防衛庁関係者に打診。これらはいずれも「雑談(フリートーキング)レベル」(外務省幹部)であり、外務省、防衛庁とも「米政府内で意見集約されたうえでの打診ではない」(防衛庁幹部)と分析。政府上層部への積極的な報告を避けてきた。
ところが、これらの情報が「あたかも決定事項のように一部で取りざたされ、関連する自治体が反対に乗り出し、与党内からも反発の声が出るなど日本側は大混乱」(同)しているのが現状。さらに、厳しい財政事情の日本が移転とその後の駐留に伴って増加する費用を追加負担できるかも不透明だ。
日本政府側がこれらの事情を米側に詳細に説明したことが、米政府高官の「仕切り直し」発言につながった。今秋に大統領選を控える米側の国内事情も背景にあるとみられる。
米軍の総兵力は陸海空と海兵隊の4軍計約143万人で、このうち約37万人(昨年7月時点)が海外に展開中。ブッシュ大統領は昨年11月、「全地球規模での軍事態勢の見直し」に関する声明を発表、新たな脅威に対応するため海外展開中の米軍の再編を課題に挙げている。
すでにドイツと韓国では駐留米軍の大幅削減計画をまとめ、在日米軍については、朝鮮半島から中東までの「不安定の弧」と呼ばれる地域への展開拠点として、基地の司令機能や即応態勢を強化することを検討している。(産経新聞)[7月27日4時2分更新]