中国経済の実情を、「人民元」という通貨を通して紹介しています。著者は、日経新聞の経済部出身のジャーナリストで、中国「脅威論」や「崩壊論」をまくし立てるのではなくて、経済成長を可能にした仕組みを、それが生み出したさまざまな矛盾と一緒に、いろんなエピソードを交えながら紹介しています。気楽に読めて、中国の「改革開放」経済のしたたかさや奥深さが分かったような気がします。
面白いと思ったのは、人民元が事実上ドル・ペッグだったということ。そして、それが中国経済の驚異的な発展を可能にしている最大の条件になっているという指摘です。
中国政府も、その点はよく分かっていて、「人民元切り上げ」圧力にも簡単に屈しないで、アメリカに対してもしたたかな対応を見せながら、その間に、国有銀行の不良債権処理などをすすめる経済的・時間的な余裕を稼ぎ出しています。
最後の第7章では、97年の「通貨危機」から、東アジア地域の通貨安定の可能性を探り、韓国ウォンとタイ・バーツが事実上の円“ペッグ”であることに着目して、その可能性を展望しています。
■岩波新書、新赤版899、本体700円+税、2004年7月刊