ベネズエラのチャベス大統領に反対する勢力の要求によって行なわれた大統領罷免の是非を問う国民投票は、選管の発表によれば、開票率約95%の段階で罷免反対票が約499万票(58%強)で賛成票の約358万票(42%弱)を大きく引き離し、否決されることになりました。
問題は反大統領派がこの投票結果を受け入れるかどうかです。すでに、「選挙に不正があり、結果を受け入れられない」と語っており、背景にアメリカがあるだけになお混乱が続く可能性があります。しかし、大統領選挙、憲法改正投票、そしてこんどの国民投票と、チャベス政権が選挙によって政権の正当性を勝ち取ってきたことは非常に重要な意味をもっています。
<ベネズエラ>大統領罷免、国民投票で否決
【カラカス藤原章生】ベネズエラの全国選挙評議会(選管)は16日未明、15日に行われた国民投票の結果、チャベス大統領の罷免に反対する票が賛成票を大きく上回ったと発表した。大統領罷免は否決され、中南米随一の反米左派であるチャベス氏は06年までの任期を全うすることになった。
反チャベス派は「選挙に不正があった」と結果を受け入れない姿勢を示しているが、チャベス氏がラテンアメリカ史上初の「罷免国民投票」を乗り切ったことで、2年半にわたる内紛が一応の決着をみたことになる。チャベス氏は富裕層批判であおってきた国民間の対立をどう解消するかなどに手腕を問われることになる。
選管の集計によると、開票率約95%の段階で、罷免反対票が約499万票(58%強)で賛成票の約358万票(42%弱)を大きく引き離した。投票者は同国史上最高の約867万人(有権者約1390万人)に達し、投票率は約62%だった。
チャベス氏は15日未明、大統領府で今回の結果について「ホワイトハウスに対する、ラテンアメリカ、カリブ人民の自由の勝利だ」「先住民、農民、子供たちのために今後も闘い続ける」と演説した。
一方、昨年からの署名集めで国民投票を実現させた反チャベス派の市民組織「民主的調整グループ」のラモス幹部は会見で「選挙に不正があり、結果を受け入れられない」と語り、敵対姿勢を緩めていない。
チャベス氏の罷免回避は、「米国による搾取」「貧民の解放」「不平等解消」という従来型のスローガンで大衆の心をつかむポピュリズムが同国で依然、大きな力を持っている証左とも言える。
98年に始まったチャベス政権は、その反米姿勢から外資導入が伸びなかった上、ゼネストなど政情不安を呼んだ。政権汚職もひどく、政府会計の不明朗さも指摘されている。旧特権階層が握る国内メディアは露骨なチャベス批判を続けてきた。
それでも投票者の6割近くがチャベス続投を求めた背景には、世界第5位の原油輸出国に発展しながら、その恩恵を一向に受けていないという大衆の不満がある。「少数の富裕層が米企業と共に石油資金を盗んできた」「貧者による真の革命を大陸に広げる」というチャベス演説には多くの人々が魅せられている。
中南米では90年代に米国寄りの政権樹立が相次いだが、貧富の格差はより目立ち始めた。「経済は親米、信条は反米」という層が増えているのが現状だ。産油国の強みがチャベス氏に「自由な発言」を許している面もあるが、今後、米大陸の貿易自由化などをめぐる議論で、チャベス氏に近い反米左派的な声が影響を持つ可能性もある。(毎日新聞)[8月16日20時11分更新]