沖縄の米軍ヘリ墜落事件、とうとう米軍は日本側の現場検証を認めないまま、墜落機体を撤去してしまいました。
この事件、本土のメディアは本当に小さくしか報道しません。しかし、沖縄タイムズや琉球新報の記事を読むと、現地では本当に大問題になっていて、“報道格差”の大きさに唖然とします。その中で比較的詳しく報道しているのが東京新聞です。今日の東京新聞は、日本側には墜落ヘリの操縦士の名前さえ知らされず、現場の交通整理だけさせられた様子を詳しく伝えています。
米軍墜落ヘリ持ち去る 沖縄 現場検証ないまま
沖縄県宜野湾市の沖縄国際大に米軍のヘリコプターが墜落した事故で、米軍は16日午後、機体の一部を墜落現場の同大構内から、米軍普天間飛行場に搬入した。
沖縄県警は機体の残骸(ざんがい)が動かされない状態での現場検証を求めていたが、米軍側は同意の回答をしないまま、搬送に踏み切った。
米軍は同日午前から機体周辺の樹木を伐採するなどの準備を開始。比較的原形をとどめていた機体後部をクレーン車でつり上げ、午後4時ごろ、トレーラーに乗せて運び出した。トレーラーは県警の機動隊員が護衛し、大学から約500メートル離れた普天間飛行場第2ゲートから基地内に入った。
墜落現場からは燃料タンクなども撤去されたが、焼け焦げた部品が依然大量に残っている。
米軍は16日午前、現場から約330メートル離れた墓地近くに落下していた尾翼部分も回収。県警は同日午後、部品が持ち去られてしまった墓地で、現場検証を行った。県警によると、米軍の財産が現場になければ検証に米側の同意は必要ない、という。■悔しさ隠せぬ沖縄県警
「こんなばかなことは直さないといけない。操縦士の名前すら教えてもらえていない」――。米軍ヘリ墜落事故で米軍が16日、機体の一部を撤去し事故現場で機体を直接調べる現場検証ができなかった沖縄県警。基地外で起きた事故にもかかわらず捜査が自由にできない地位協定の壁に県警幹部は悔しさを隠さない。
13日の墜落事故直後、安全上の理由から米軍に実況見分の実施を断られた県警捜査本部。同日中に、航空危険行為処罰法違反の疑いで、現場検証の令状を取り、16日まで計7回にわたって米軍に要請したが、返事は「検討中」ばかり。県警の伊良波幸臣刑事部長は「(中身のある)返事もしないなど協力が得られず遺憾だ」と語る。
日米地位協定に伴う刑事特別法は、米軍の財産の差し押さえや検証などには米軍責任者の同意が必要と明記。今回の事故では、墜落したヘリや落下した部品が「財産」に相当するとされる。
米軍が独自にヘリの落下物を調べる中、県警の捜査は交通整理や目撃者の情報収集が中心。15日になってヘリが接触した大学校舎内の被害状況を確認できた程度だ。
捜査本部は、「財産」撤去後にようやく検証を開始したが、油の飛散状況などを調べるにすぎない。同法違反容疑で操縦士らの書類送検を目指すが、立件は「調査結果や供述調書など、米軍の協力なしではできない」(県警幹部)のが実態という。軍事機密にもつながる資料の提供だけに難航が予想される。[東京新聞2004/08/17朝刊]
それにしても、米軍が日本側の実況見分も認めずに墜落機体を持ち去ったことは、重大な問題です。日米地位協定は「合衆国軍隊の財産についての捜索、差押又は検証は合衆国軍隊の権限のある者の同意を得て」(日米地位協定に基く刑事特別法第3条)行なうことになっていますが、これはあくまで「機体」という財産管理についての規定。米軍の警察権は基地内、あるいは基地外の場合は米兵同士のトラブルに関してのみ認められているだけです。基地外に墜落した今回の事件では、日本側に第一義的な調査権限があることは明白です。その捜査の中で、もし機体そのものについて捜査・検証が必要だということになった場合にのみ、米軍の同意が必要だというのがルールなのです。