米軍再編で、アメリカ政府がワシントン州の陸軍第1軍団司令部を日本へ移すなどの構想を進めていますが、そのねらいが「中東、中央アジアなどにも展開する統合部隊の指揮機能をもたせるための計画である」ことが明らかになったと、「朝日新聞」が報道しています。
日本拠点に極東超え部隊指揮 米軍再編で米政府が計画 – asahi.com : 政治
もとより、日米安保条約は、米軍の基地使用は「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持の寄与するため」(第6条)と定められており、中東や中央アジアへの展開のために日本の基地を使用することは明確に条約に違反しています。
日本拠点に極東超え部隊指揮 米軍再編で米政府が計画
米軍再編をめぐり米政府が、ワシントン州の陸軍第1軍団司令部を日本に移すなど陸海空軍と海兵隊の司令部を日本に集める構想について、中東、中央アジアなどにも展開する統合部隊の指揮機能をもたせるための計画であると、外務省などに説明していることが分かった。日米安保条約は、米軍の在日基地を使用した活動範囲を極東までと定めており、日本政府内では条約との整合性を説明するのが難しいとして、計画の受け入れに慎重論が出ている。小泉首相は21日(日本時間22日未明)の日米首脳会談で米軍再編問題に前向きに取り組む考えを表明するが、この問題をどう扱うかが大きな焦点となる。
ブッシュ大統領は昨年11月、米軍再編について同盟国との協議開始を表明。米政府は国務省、国防総省、日本外務省、防衛庁の審議官級協議や制服レベルの会議で再編についての考えや具体案を示してきた。
外務省や防衛庁の当局者によると、米政府は米軍再編について(1)アフリカやバルカン半島から中東を通って東南アジアに至る広範な「不安定の弧」が、テロや紛争など新たな脅威の多発地帯であるにもかかわらず、米軍配備の薄い地域と分析(2)冷戦時代の軍の編成を抜本的に見直し、テロなどの新しい「非対称の脅威」に柔軟に対応する(3)海外の米軍基地について「戦力展開拠点」(PPH)を筆頭に四つのレベルに格付けする――と説明している。日本をこの最も重要なPPHの一つに位置づけている。
具体的には、陸軍第1軍団、第7艦隊(母港=神奈川・横須賀)、第5空軍(司令部=東京・横田)、第3海兵遠征軍(同=沖縄)の司令部に対し、事態に即して編成される小規模な統合部隊を指揮する機能をもたせる。このため、陸軍第1軍団司令部を米国からキャンプ座間(神奈川県)に移す必要があるという。また、これまでの4軍それぞれの編成も機動的に展開できるように、小型化する。
安保条約の範囲にとらわれない統合部隊の指揮機能を主要な在日米軍司令部にもたせるという計画は、そうした任務が組織上でも正式に位置づけられることになり、日本防衛や極東の安全と平和のために日本の施設・区域の使用を認めた日米安保条約の枠組みを超えることがはっきりする。
外務省内では「米国案を実現させるには、安保条約の改定か、その解釈の変更をせざるを得ないが、国内政治を考えればそんなことは出来ない」(幹部)との受け止めが強く、対応に苦慮している。
米側はこのほか、在沖縄海兵隊の本土への一部移転や、海軍厚木基地(神奈川県)を米海兵隊岩国航空基地(山口県)に移転する構想などを日本側にこれまで示してきた。しかし、関係する自治体からの反発や今夏の参院選への影響を考慮して、日本側は本格的な協議を先延ばしにしてきた。
一方、米側はこうした消極的な姿勢に不満を募らせており、8月下旬にはライス大統領補佐官が細田官房長官に電話し、「トップの決断」を求めた。日本側が日米首脳会談の前に、空自航空総隊司令部(東京都府中市)の横田基地移転を米側に提示する案の一つとしてまとめたのには、米側の不満をかわす狙いもある。 (09/22 06:06)